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クイック解説
大塚ローテックから、9号に続いてスクエアケースを採用した新作「8号」が登場しました。本作は、他の大塚ローテックのモデルと同様に一般的な針で時刻を表示するのではなく、ジャンピングアワーとレトログラード式の分表示を組み合わせた独創的な表示機構を採用したモデルです。
時間表示は3つの要素で構成されています。まずはジャンピングアワー。本作ではアワーチャンネルと名付けられ、1時間ごとに瞬時にジャンプして切り替わります。次に、ミニッツフェーダーと呼ばれる分表示はフライホイールと連動したレトログラード式で、60分から0分へ戻る際に視認できる速度でゆっくりと帰零。さらに文字盤上部には秒ディスクが配置されており、90秒で1回転します。
大塚ローテックの時計は、デザインの着想源として昔のアナログ機械や計器がしばしば参照されます。創業者の片山次朗氏は、これまでも電力メーターなどの機械式メーターからインスピレーションを得てきました。そして今回のデザインの着想となったのは、レコーディングスタジオのミキシングコンソールです。
なかでもモチーフとなったのは、ロンドンのアビイ・ロード・スタジオで使用されていた真空管コンソールREDD.37。ザ・ビートルズのレコーディングにも使われたことで知られる機材であり、その工業的で機能美に満ちたデザインを片山氏は以前から特に気に入っていたといいます。
Photo Courtesy: Vintage King Audio
Photo Courtesy: Vintage King Audio
Photo Courtesy: Vintage King Audio
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文字盤を見ると、各要素がオーディオ機材の操作系を思わせるデザインになっていることが分かります。ジャンピングアワーによる時表示は片山氏が「アワーチャンネル」と呼んでいる表示で、ミキシングコンソールのチャンネルノブのような形状がモチーフで、思わず指でつまんで回してみたくなるようなデザインです。
分表示はミキサーのフェーダーを真横から見たようなデザインとなっています。このフェーダーはレトログラード式の表示となっており、60分から0分へ戻る際にはフライホイールによって制御されながらゆっくりと帰零します。その動きは、レコーディング機器のテープリールが回転する様子をどこか想起させるものです。また文字盤は2層構造となっており、そのあいだをフェーダーが通過する立体的な構造が採用されています。
ケースデザインも特徴的です。上下のラグに角度が付けられたフォルムとなっており、真横から見ると台形のシルエットを描きます。ケース全体にはサテン仕上げが施されており、工業製品のようなインダストリアルな雰囲気を強く感じさせます。また、ストラップに取り付けられる尾錠も本作に合わせて新たにデザインされたものが採用されています。大塚ローテックのモデルとしては初めてラバーストラップが採用されている点も特徴です。
風防はケースの側面まで回り込むように設計されており、横方向からも内部機構を見ることができます。2層構造の文字盤のあいだを通過する分表示のフェーダーの動きが、サイドからも観察できる点もこのモデルの見どころです。こうした要素によって、本作にはレコーディングスタジオの機材から着想を得た世界観が、表示機構のデザインとその動きの両面に落とし込まれています。
スペック面にも触れておきましょう。ケースサイズは直径31mm、全長47.8mm、厚さ10.8mm。現行ラインナップの中では最も薄いケースが採用されており、日常生活防水の性能を持ちます。
ムーブメントはMIYOTA 90S5をベースに自社製モジュールを組み合わせた構造です。モジュールはこれまでのモデルと比べておよそ2倍となる62個のパーツで構成されており、ミネベアミツミ製の超小型ボールベアリングが本作でも採用されています。
本作の特徴でもあるレトログラード式の分表示。ゆっくりと帰零する動きを実現するために、テンションを制御する部品としてヒゲゼンマイが用いられています。これは時計用ではなく、スピードメーターなどに使われるばねを応用したものだといいます。片山氏によれば、この構造は6号や9号といったこれまでの開発で得られた経験が活かされて実現したものだそうです。
価格は税込99万円。限定モデルではなく、今後も継続して製造されるモデルですが、当初は少量生産でのスタートとなるようです。
ファースト・インプレッション
実際にこの8号を手に取ってみてまず感じたのは、その立体的な機構の面白さです。写真で見ても十分にユニークな時計ですが、実物はそれ以上に動きの魅力が強く伝わってきます。
特に印象的なのは、やはり分表示のフェーダーです。60分から0分へ戻る際、フライホイールによって制御されたレトログラードがゆっくりと帰零していきます。わずかに振動するような感覚を伴いながら戻っていくその動きは、眺めているだけでも楽しいものです。
さらにその動きと同時に、アワーチャンネルがカチッと次の時間を表示する瞬間も見どころです。フェーダーがゆっくりと動く一方で、時表示が瞬時に切り替わるという対照的な動きが同時に起こる様子は、この時計ならではの面白さだと感じました。
僕自身、大塚ローテックの時計は7.5号と5号改を所有しています。7.5号はジャンピングアワーが瞬時に切り替わる“瞬転式”の表示で、5号改はワンダリングアワー機構によってディスクがゆっくりと回転しながら時間を示します。どちらも魅力的な表示ですが、時間の表示が瞬時に切り替わる7.5号や、ゆっくりと回転する5号改と比べても、フェーダーの動きとアワーチャンネルの切り替えが組み合わさる8号の表示は特にユニークに感じました。
手首に着けてみると、ケース幅は31mmとコンパクトながら、ラグ・トゥ・ラグ(全長)は47.8mmあるため、手元では思った以上に存在感があります。ただし厚さは10.8mmに抑えられており、着用感は意外なほど良好でした。
ではこの時計が欲しいかと聞かれれば、もちろん欲しいです。正直なところ、大塚ローテックの時計で欲しくないと思ったモデルはこれまでになく、この8号も例外ではありません。片山氏が「格好いい」と感じたものを詰め込んだ独創的なデザインが大塚ローテックの魅力ですが、本作はそこに機構の動きを眺めて楽しめる面白さが加わった一本だと思います。
大塚ローテック 8号の詳細は公式サイトへ。
基本情報
ブランド: 大塚ローテック(Otsuka Lotec)
型番: 8号(No.8)
直径: 31mm
ラグ・トゥ・ラグ: 47.8mm
厚さ: 10.8mm
ラグ幅: 24mm
ケース素材: ステンレススティール(316L)
夜光: なし
防水性能: 日常生活防水
ストラップ/ブレスレット: ラバーストラップ、8号のケースデザインに合わせて作られた新デザインの尾錠付き
ムーブメント情報
キャリバー: MIYOTA90S5 + 自社製モジュール
機構: 時(アワーチャンネル)、分(ミニッツフェーダー)、秒(ディスク)
パワーリザーブ: 約32時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 33石 +3つのボールベアリング(ミネベアミツミ製)
クロノメーター認定: なし
追加情報: 時間調整の際は必ずリューズは時間を進める方向で調整する必要がある
価格 & 発売時期
価格: 99万円(税込)
発売時期: 抽選販売
限定: なし
詳細は、大塚ローテック公式サイトへ。
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