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Hands-On モーメンタム UTD エクリプス シンクソーラーを実機レビュー

ニッチでマニア心くすぐるクラシックが生まれ変わり、出番を待っている。


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アナデジウォッチの世界は、スポーツウォッチのなかでもひときわユニークで楽しさにあふれたニッチなジャンルだ。ある意味では、アナデジウォッチこそが元祖スマートウォッチといえる。伝統的なアナログの時刻表示と、追加情報を映し出すためのひとつまたは複数の画面を組み合わせているのだ。

 70年代半ばのクォーツ危機のあとに誕生したアナデジウォッチは、一時期人気を博したが、このフォーマットが真のメインストリームで成功を収めることはなかった。80年代のカシオ、シチズン、クロノスポーツから90年代のオメガ、ブライトリングに至るまで、多くのブランドがアナデジウォッチを発表してきた。これらのブランドのなかには、シチズンのスカイホークシリーズやブライトリングのエアロスペースシリーズなど、長期にわたって大きな成功を収めたものもあるが、アナデジウォッチはニッチプレーヤーであり、ブランドをリードする製品ではない。

momentum udt

 今年7月、カナダのブランド、モーメンタムがアナデジウォッチの歴史に残るカルト的な名作、クロノシュポルト UDTの新作を発表した。モーメンタムの現オーナーは、今はなきクロノシュポルトを所有していた人物である。バンクーバーを拠点とするこのブランドが、マグナムP.I.にふさわしい2023年のシークォーツ30など、クロノシュポルトの過去のモデルのいくつかを取り戻し始めたのち、モーメンタムファンは非常に特殊なものを求めるようになった。それはつまり、新しいUDTだ。

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 オリジナルのリリースについては以前こちらで取り上げたので、細部の説明は控えるが、最終的に完成したのは、ブラックIP仕上げのスティール製ソーラークォーツウォッチで、サファイアクリスタル風防、セラミック製ベゼル、6時位置のダイヤルにはめ込まれた画面が特徴だ。サイズは幅43mm×厚さ11.7mm×全長48.2mmだ。

 モーメンタムは42mm×11.7mm×47mmと表記しているが、この数値の違いは計測位置によるものだと思われる。ベゼルの幅は42mmで、実際のラグ穴間(ラグホーンの端ではなく)の距離はおよそ47mmだ。防水性能は200m(プッシュボタンをねじ込んだ状態)で、インデックスと針にはC3スーパールミノバが使用されている。

UDTとは?

読者の皆さんは、おそらく僕ほどこの分野に深くハマっていない方もいるかもしれないので、簡単にクロノシュポルトの歴史を説明しておこう。クロノシュポルトの歴史の多くはまだひとつのストーリーにまとめられていないが、UDTの名前の由来は第2次世界大戦中に創設され、現在のアメリカ海軍ネイビーシールズの前身となる水中爆破チーム(Underwater Demolition Teams)にちなんでいる。もっともUDTウォッチは第2次世界大戦中ではなく、むしろ80年代初頭に、シールズのチームメンバーの要望やチームの任務の厳しさに耐えることができる先進的なダイバーズウォッチとして誕生した。

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 おそらく『ランボー/怒りの脱出(原題:Rambo II)』(1985年)でシルヴェスター・スタローンが腕につけていた時計として最もよく知られるクロノシュポルト UDTには、いくつかの異なるバージョンが存在した。この時計の基本的なフォーマットやムーブメント、ダイヤルの6時位置のアナデジ表示は、同時代のブライトリング プルトンなど、ほかの時計の基礎にもなっている。

 前述のとおりアナデジはニッチであり、そのなかにクロノスポーツ UDTがある。もしスポーツウォッチや軍用由来、そして80年代のマキシマリズム(過剰主義)が好みなら、その魅力は理解しやすいだろう。確かに、現代ではブライトリングやシチズンがアナデジの火を受け継いでいるが、このフォーマットのルーツと、その冒険的でワイルドな雰囲気はクロノスポーツ UDTやその仲間たちによって築かれたものだ。

モーメンタム UTD エクリプス シンクソーラーを着用

 “NewDT”(このニックネームはトム・プレイス氏によるもの)はシンプルな箱に収められ、ラバーまたはナイロン製のさまざまなストラップから選択可能だ。僕は“ブラック・ハイパー・ラバー”ストラップを選んだが、これは標準的なウェーブスタイルのダイビングストラップに近い。価格帯を考えれば十分満足できるが、私はもともとNATOストラップに付け替えるつもりだった。

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 ケースのシェイプは非常にフラットで、短いラグ、幅広で平らなベゼル、そしてベゼルの縁に沿ったフラットなサファイアクリスタル風防を備えている。操作系はすべて3時側に配置されており、3つのリューズとプッシュボタンはすべてねじ込み式だが、リューズを開けた状態でも50mの防水性が確保できる(念のため)。ねじ込み式のリューズ・プッシュボタンは扱いが少し面倒だと感じるから僕は開けたままで問題ないと思っている。

 画面のユーザーインターフェース(UI)はとてもシンプルだ。時刻表示があり、設定すると自動的にアナログ針が更新される。この機能のおかげで、ふたつの時刻を自分で同期する必要がない(よくある手間のかかる作業だ)。もっとも、アナログ表示には秒針がないため、同期する対象がひとつ減ることになる。

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 中央のリューズは3時位置の横にあり、時刻、第2時間帯、アラーム、クロノグラフの各モードを切り替えることができる。1時間ごとのチャイム設定も可能で、第2時間帯を自由に設定できる(つまり、ニューファンドランドやスリランカなど、フルアワー以外のGMTオフセットにも対応できる)。ただしモーメンタム UDTにはデジタル画面用のバックライトが搭載されていない。

 複数の“ページ”があるモードでは、上部のプッシュボタン(2時位置)でオプションを切り替えられる。これは主に標準時刻モードで時刻と日付を切り替える際に使用するものだ。画面は明るく視認性が高く、シンプルな設計で余計な機能はない。しっかりとした操作感のあるプッシュボタンだが、フィードバックがやや曖昧で、全体の体験は80年代をほうふつとさせる。それでも装着時には十分に機能している。

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 画面は別として、文字盤はムーブメントのソーラー充電に対応するなめらかな黒色だ。針にはやや場違いに感じるポリッシュ仕上げの金属が使われており(ほかのデザインがマットブラックであるため)、やや不釣り合いな印象も受ける。しかし視認性は非常に優れている。針には夜光が施され、日常使いに十分な量が針と文字盤に塗布されている点は評価したい(特に画面にバックライトがないことを考慮すると)。

 内部には、この用途のためにカスタマイズされたセイコーエプソン製AB12Aクォーツムーブメントを搭載しており、ソーラー充電や画面との手動同期が可能。光を浴びなくとも3カ月間バッテリーが持続する。

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 手首に装着してみると、モーメンタム UDTはプロポーションから想像していたよりも大きめに感じるが、不快さはまったくなく、そのサイジングにはしっかりとした意図を感じる。つけ心地は多くの点でSKX007に似ている。僕の手首には大きいが決して大きすぎるわけではない。

 要するに370ドル(日本円で約5万6000円)の時計としてはとても気に入っている。

競合

 どんな時計も、アナログかデジタルか判断できない奇妙なウォッチでさえも、真空のなかで存在しているわけではない。そしてUDTもほかのアナデジと競合をしているのだ。以下のモデルも検討してみてはどうか。

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 まずアナデジを初めて試すなら、カシオやG-SHOCKの無数のオプションがこの分野での“お得の王者”といえる。これにはカシオの八角形のモデルやプロトレック、そして過去40年間に製造された変わり種のカシオも含まれるが、それに限った話ではない。誤解しないで欲しい。アナデジに興味があるなら、特にeBayの“デジタルの引き出し”を漁るのが好きな人にとっては100ドル(日本円で約1万5000円)以下で始められる。

 具体的に言うと、カシオの“ウェーブセプター ソーラー”がある。100ドル(日本円で約1万5000円)前後でさまざまなバージョンがあり、40mmの幅に加え、画面のバックライトとムーブメントの原子電波同期を搭載している。モーメンタムほどの洗練されたスタイルやクールさには欠けるが、しっかりした品質だ。

citizen aqualand

僕のシチズン アクアランド JP2007-17W。

 次に、アナデジの豊富なラインナップを展開するシチズン製を選ぶことになるだろう。特にモーメンタム UDTよりも予算があるなら、シチズンのモデルに価値が出てくる。440ドル(日本円で約6万7000円)で購入できる、僕のお気に入りのひとつであるアクアランド P2007-17Wは、ダイブコンピューターが登場する以前に作られたシチズンのダイブコンピューターの現代版で、夜光文字盤、抜群のつけ心地、そして水深センサーも備えている。ただしUDTよりもかなり大きい。それでもつけ心地のよさは同等だ。

 またシチズンは最近、より現代的なアナデジであるプロマスター ランド U822を発売した。高解像度のMIPディスプレイ、バックライト、追加機能が搭載されており、価格は12万6500円(税込)、44mmの幅を持つ大きめのモデルだ。私はレビュー用に2本所有しているが、デザインもかわいらしく、操作性も高く、非常に実用的だ。

seiko arnie

セイコー  “アーニー” SNJ025。

 セイコーもUDTよりもかなり大きめだが、バックライト付きでおよそ525ドルのアーニーでこの市場に参入している。アーニーはとても気に入っており、ここでSNJ025のハンズオンレビューも行ったが、やはりUDTのほうが好みだ。理想を言えば、どちらも手に入れて"アクションスター"のようなペアにしてみるのもありかも…(冗談だよ、多分)。

 それ以上の価格帯になると、ブライトリングのようなモデルにもっと多くの出費が必要だ(中古で40mmのエアロスペースがまだ注目されていないようだ)。この価格設定ではモーメンタム UDTも競合がないわけではない。今日ではよい選択肢が多く揃っているが、正確に1対1で競争できる相手はいない。

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おわりに

 これ以上書くことはないだろう。モーメンタムは、クロノシュポルトの系譜を感じさせながらも、旧モデルの直接的な再現を避け、手ごろな価格でUDTを作り上げた。クロノシュポルトのファンには、オリジナルにより近いクローンを望む人もいるかもしれないが、モーメンタムが新しいムーブメントの範囲で独自のアプローチを取ったのは賢明だったと思う。

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 確かに、バックライトや秒針を備えた将来のバージョン(むき出しのスティールやほかの文字盤カラーも加わるといい)も見てみたい気はするが、モーメンタムの最初の試みとして、この価格帯と完成度では文句のつけようがないだろう。

 機械式時計を愛する人にとっても、379ドル(日本円で約5万7000円)のこのモデルはとても楽しめる素晴らしいクォーツの選択肢だ。スポーティで、特化されていて、少し奇妙で、完全にマニア向けである。

 おかえり、UDT。