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Hands-On H.モーザー×マッセナLAB エンデバー・クロノグラフ コンパックスをハンズオン

H.モーザーとマッセナが、ヴィンテージモーザーのクロノグラフに敬意を表したモデルを発表した。

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Photos by TanTan Wang

モーザーのクロノグラフと聞くと、私はストリームライナーを思い浮かべる。これはフライバック機能を備えたアジェノー社製クロノグラフムーブメントを搭載した、インダイヤルのない独特なレイアウトが特徴だ。クロノグラフ秒針と分積算計がセンター針に配置されており、このコンプリケーションを現代のカタログに取り入れるためのモーザーらしいコンテンポラリーなアプローチとなっている。驚くべきことに、今日までモーザーの現行ラインナップには、複数のバリエーションがあるストリームライナークロノグラフのみがクロノグラフモデルとして存在していた。

Streamliner Chronograph

ストリームライナー クロノグラフは、堂々とした現代的なデザインが特徴である。

Albishorn x Massena LAB

Geneva Watch Daysで発表された、アルビスホルン×マッセナLABが手がけたマキシグラフ。

Moser x Studio Underd0g

モーザーとスタジオ・アンダードッグがコラボレーションしたモデルもGeneva Watch Daysで公開された。

 今回の新たなコラボレーションとして、マッセナLABがH.モーザーとチームを組み、限定版のエンデバー・クロノグラフ コンパックスを発表した。モーザーとマッセナLABはどちらもコラボレーションの経験が豊富で、特にヴィンテージデザインや複雑機構に関するものには定評がある。8月のGeneva Watch DaysでマッセナLABは、アルビスホルンと協力して1930年代風の現代的なレガッタクロノグラフであるマキシグラフを発表し、大成功を収めた。一方モーザーもスタジオ・アンダードッグとコラボし、パッションフルーツをイメージした2種類のダイヤルを製作した。

Endeavour Chrono Lay Flat

 エンデバー・クロノグラフ コンパックスでは、両ブランドが1940年代のモーザーのクロノグラフからインスピレーションを得たとしつつ、モーザーの現代的なカタログにあるミニマルなデザイン言語と対比させることを試みている。インターネットでこれらの参考モデルを探した結果、有力な情報は得られなかったが、私が確認したいくつかの例は1940年代から50年代のほかのヴィンテージクロノグラフとスタイルが一致しているように見えた。このコラボではヴィンテージ風のダイヤルに、3時位置にスモールセコンド、9時位置に45分積算計を配置した伝統的なふたつのインダイヤルレイアウトを採用している。文字盤の大部分はタキメータースケールが占めており、通常の“タキメーター”ラベルの代わりに“Kilomètres À L'Heure”という表記に置き換えられている。私が調べた限りではヴィンテージウォッチでこの表記が使われた例は見つからなかったが、これはフランス語で“Gradué Pour 15 Pulsations”などのパルススケールを示す例が多いことから、その発想を巧みにアレンジしたものだと推測している。

moser logo up close
Vintage Pulsation Scale

フランス語のパルススケールが記載されたパテックの130。

Vintage Moser

1950年代のH.モーザーで、類似したロゴが見られる(Shuck The Oyster提供

 このコラボレーションダイヤルで私が最も気に入っているポイントは、1947年のモーザーロゴを採用したヴィンテージロゴが印刷されている点だ。このロゴは1947年のモーザーロゴのバージョンから採用されたもので、現行のモーザーウォッチでは見られない(ヘリテージコレクションでさえ採用されていない)。こうした細やかな追加要素が、このコラボレーションに魅力を与えている。

 モーザーのファンキーブルーカラーは、モダンなモーザーを感じさせる要素のひとつだ。今回はグレーがかったブルーフュメ仕上げのサンバースト効果が施されている。これはいくつかのモデルで見られるものだが、今回はほかのモデルに比べて実物のほうがやや暗めに見える。これはダイヤルの暗いグラデーション部分が中央に近いところから始まっており、タキメーターの両リングが文字盤の最も暗い部分でシャープなコントラストを描いているためだろう。鮮やかすぎず、控えめで、モーザーのカラーのなかでも特に落ち着いたトーンのひとつだ。ヴィンテージにインスパイアされたこのモデルにぴったりでありながら、現代的なモーザーらしさをしっかりと感じさせる。明るい光の下だと文字盤の色彩は強くならないが、サンバースト効果が非常にドラマチックで、暗い部分に対して明るい白やグレーがかったブルーの光線が大きく広がっている。

Endeavour Chronograph Wristshot

 私は以前から、モーザーのサンバーストダイヤルはその仕上げにおいて最高クラスだと思っている。通常のサンバーストダイヤルは明るい日差しの下だと、ブラッシングの強さや色の鮮やかさが原因で安っぽく見えてしまうことがある。だがモーザーはそのバランスを見事に保ち、屋内の照明ではダークな雰囲気を、屋外ではダイナミックな表情を見せてくれる時計に仕上げている。

 最近の多くのコラボレーションで見られる動きとして、この文字盤にも夜光がたっぷり使われている。リーフ針にはスーパールミノバが塗布されており、さらに文字盤の印字部分もすべてスーパールミノバで仕上げられている。数字、タキメータースケール、インダイヤルの目盛りなどもすべて同様だ。文字盤に使用されたスーパールミノバはわずかにグリーンがかったトーンで、ファンキーブルーの冷たい印象のダイヤルと組み合わせることで、時計全体にクールな配色をもたらしている。マッセナLABとモーザーが、より暖色系のヴィンテージスタイルのスーパールミノバを選んでも驚きではなかったが、このグリーンとブルーの組み合わせはより一体感があり、まとまりのあるデザインに感じられる。

Moser Up Close
moser case side
moser crown side

 現代のモーザーの流れを汲む要素として、このクロノグラフはスティール製のエンデバーケースを採用している。彫刻のようなケースサイドと、シグネチャーであるコンケーブベゼルが特徴的なデザインだ。ムーブメントの上にはデュボア・デプラ社製のクロノグラフモジュールが搭載されており、そのため標準的な時刻表示のみのエンデバーよりもケースが大きくなっている。ケースの直径は41mm、高さは13.3mmだが、実際につけてみるととても快適だった。これにはいくつか理由があると思う。まず、彫刻的なケースサイドが時計側面の横顔をすっきりと見せていること。さらにコンケーブベゼルは、より伝統的なベゼルと比較した場合、上から見た外観をコンパクトに見せる効果がある。なによりダイヤルが非常に賑やかで、ヴィンテージクロノグラフに見られるような(より小さな文字盤に多くのスケールや印字が詰め込まれた)デザインを思い起こさせる。今回のモデルではタキメータースケールがかなりのスペースを占めているため、文字盤中央の印字がダイヤルを小さく見せている。文字盤が賑やかで大きめな時計は、腕につけると意外と小さく感じることが多いのだが、このモデルも例外ではない。

Moser LE caseback
Moser movement

 時計の内部でデュボア・デプラ・モジュールを動かしているのは、モーザーの自社製Cal.HMC220だ。このモジュールのクロノグラフ操作は簡潔かつ明瞭だが、特に際立った特徴はない。双方向巻き上げシステムのローターにはH.モーザーの刻印が施され、ムーブメントプレートに施されたモーザーストライプと対照的に目立つよう、ダークグレーで仕上げられている。シュトラウマン®ヒゲゼンマイ(ダブルではなくシングル)が2万1600振動/時で動作し、パワーリザーブは約3日間。ムーブメントとサファイアクリスタルのシースルーバックの周囲には、コラボレーションを表す刻印と、100本限定であることが示されている。

 エンデバー・クロノグラフ コンパックスは、クーズーレザーのストラップとサイン入りのピンバックルが付属しており、100本限定で販売され、価格は447万7000円(税込予価)となっている。本作はモーザーにとって初の現代的な2インダイヤルクロノグラフとして注目されているが、デュボア・デプラ製モジュールを採用したクロノグラフとしては価格がかなり高い。同じ自社製HMC200ムーブメントを搭載した標準的なパイオニア センターセコンドは231万円(税込)で販売されている。もちろん100本限定という少数生産により、カスタムダイヤルやクロノグラフモジュールのような高価な部品が価格に反映されているが、それでも約2倍の価格差が100人の顧客にとって価値があるのかは疑問が残る。

Endeavour Chronograph Wrist Shot with Coffee Cup

 マッセナLABとモーザーが、ヴィンテージ感覚を現代のモーザーと巧みに組み合わせた点は評価に値する。だが1本あたり約450万円という価格で、100本の販売がどれだけ早く進むかが鍵となるだろう。マッセナLABとモーザーの強みは、どちらも顧客層をよく理解し、満足させている点にある。おそらくこの価格設定は、両ブランドが私よりも顧客をよく知っていることの証だろう。ともあれこの時計はよくできており、ウィリアム・マッセナ(William Massena)氏がモーザーの慣れない領域の美学に挑戦したことが、このプロジェクトにぴったりと合っている。現代のモーザーのラインナップにはほかに見当たらないモデルのため、欲しいならクレジットカードの準備をしておくといいだろう。

H.モーザー×マッセナLAB エンデバー・クロノグラフ コンパックス。直径41mm、厚さ13.3mm。ステンレススティールケース、サファイアクリスタル、シースルーケースバック、“M”のサイン入りリューズ。ファンキーブルーのフュメダイヤルにサンバーストパターン、1947年当時のH. Moser & Cie.ロゴを採用。スーパールミノバを施したリーフ型時・分針、スーパールミノバによる文字盤の印字。自社製Cal.HMC220にデュボア・デプラ製クロノグラフモジュールを搭載、2万1600振動/時、51石、約3日間パワーリザーブ。クーズーレザーストラップ、モーザーのサイン入りスティール製ピンバックル付き。世界限定100本。価格は447万7000円(税込予価)。

詳しくはH.モーザーまたはマッセナLABのウェブサイトをご覧ください。