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Photos by Masaharu Wada and Yuki Matsumoto
回転ベゼルのないロレックスのシンプルな3針モデルは、初めて手に入れるロレックスとして非常に最適だ。3針のなかでも日付、または日付と曜日がついているものをデイトジャストとデイデイト、そうでないものをオイスター パーペチュアルと区別する(2023年に新コレクションとなるパーペチュアル 1908が登場したが、こちらはオイスターケースを採用していないため割愛。オイスターケースについては後述)。デイトジャストにはステンレススティールをはじめ、色とりどりの金無垢素材も用意され、ベゼルの装飾、ブレスレットの種類に至るまで豊富なバリエーションを備えている一方、オイスター パーペチュアルはSS素材、ベゼル、ブレスレットがすべて1種類のみと、大変明快なラインナップとなっている。今回は後者のオイスター パーペチュアルをレビューしていく。
滅多に取り上げない、レディス向けロレックスのHands-On記事ということで、女性にも理解いただけるよう、まずはブランドのプレーンな3針コレクションの簡易的な説明をしてみた。これを読んでいる、ロレックスについて何でもわかっているよという男性は、ぜひ時計初心者の女性(彼女や奥さんとか)にこの記事のリンクを送って欲しい。女性から理解を得られれば、あなたの趣味についてもっと寛容になるかもしれない。
しかも今回レビューをお届けするモデルは、ロレックスの中でも大変ポップなデザインでかわいらしく、ひと目見ただけでビビッと来て、このモデルが気になる! と感じる女性もいるはず。またロレックスは男性の嗜好品だと感じている人の見方も変わるかもしれない。そう思うほどに、これまでのロレックスとは一味違うモデルなのだ。
お借りしたオイスター パーペチュアル 31のセレブレーションモチーフダイヤルは、今年発表された最新作で、31mm、36mm、41mmの3サイズのケースで展開している。ターコイズブルーをベースにしたダイヤルの下半分に、大小異なるキャンディピンク、イエロー、コーラルレッド、グリーンのカラフルなドットが、雪のように降り積もっているようなデザインが特徴だ。実はこれらのカラフルな色は、2020年にロレックスがそれぞれ単色のダイヤルで出したカラーである。これらの色で感じるデジャブはそれだ。ただロレックスはその2年後に、特定のサイズのカラーダイヤルを廃盤にした(コーラルレッドとイエローに関しては全サイズでディスコンされた)。たった2年の生産というはかないモデルだと思った翌年、このセレブレーションモチーフダイヤルが登場したのである。
この時計は5色すべて取り入れた、いわゆるいいとこどりなモデルなのだ。ただでさえ2020年にカラフルなオイスター パーペチュアルが登場した際、業界がザワついた(このコレクションをきっかけに、各ブランドがカラーダイヤルの製造に注力したのだ。詳しくはニックの記事を読んで欲しい)のに、他社が真似しはじめたと思ったら、ザ・クラウンはまたも異なるデザインをリリースした。本当に、ロレックスの新作発表は毎度驚かされる。2024年も、セレブレーションモチーフに似た時計を他の各社が発表するかもしれない?
セレブレーションモチーフダイヤルのベースとなるターコイズブルーはラッカーで、ドットはパッドプリントで表現。風防は反射防止コーティングを施しているため、どの角度から見てもラッカーの放つ美しいツヤが確認できた。
ケースは既存のオイスター パーペチュアルコレクションと同様...で、説明を終わらせてもいいのだが、時計ビギナーの女性の方のために軽く紹介を。ロレックスでオイスターの名を冠するモデルには、すべてオイスターケースが採用されている。オイスターケースとは、ねじ込み式の裏蓋とリューズを備えた世界初の腕時計用防水ケースのことだ。1926年に登場したこのケースは、二枚貝の牡蠣(オイスター)の名前がつけられるほど堅牢かつ防水性に優れており、当時は同様の機能を持つ時計は存在しなかった。それほどまでにロレックスの技術は当時から優れており、現代にもその血脈が受け継がれているというわけだ。
余談だが、ドレスウォッチのチェリーニ(現行ではないが、この名称は1920年代から使われており、ロレックスを長年支えてきたコレクションだ)と、前述したパーペチュアル 1908にはオイスターという名称がついていないため、同ケースは使用されていないということになる。
搭載されているCal.2232は、2日以上ゼンマイが巻かれていなくても針が動き続ける約55時間パワーリザーブに、特許形状のシリコン製シロキシ・ヘアスプリングと高性能パラフレックス ショック・アブソーバを搭載。超簡単に言ってしまうと、磁気からの影響を受けづらく(スマートフォン、電化製品、パソコンなど、磁気を発するものは身の回りにいっぱいあるのだ)、また温度変化と外部からの衝撃に強いというムーブメントである。精度は日差-2秒、+2秒以内(ケーシング後)と時刻のズレも少なく、非常に扱いやすい。
シンプルな3針に華やかなドットを合わせた構想はさすが
このモデルを見たとき、自身の目を疑った人もいるはず。堅牢かつ実用性に優れた時計を手掛け、また3針時計やダイバーズウォッチの基本となるデザインを作り上げた、いわばあの“真面目”なブランドの新作なのだろうかと。でもその事実を噛みしめて理解出来たら、この時計が欲しい、そういう考えにたどり着く。
私はモノトーンな服装が好きで、財布や時計などの小物は対照的に、カラフルで多彩なものが好きだ。そんなスタイルを貫く私に、このセレブレーションモチーフダイヤルはピッタリではないだろうか?
着用してみると、私の細い手首にピッタリとフィットした。これをつけるまで、31mmが自身のジャストサイズの時計だと知らなかったのだ。ただもしかしたら、堅牢性を高めるためのぷっくりとしたオイスターケースだからこそピッタリだったのかもしれない。
私は資産価値の下がらない時計だとか、多くの人が持っている時計に興味がなく、まあ正直に言ってしまうとロレックスにあまり関心がなかったのだが、このオイスター パーペチュアル 31のセレブレーションモチーフダイヤルは純粋に欲しいと思った。こんなにちょうどよくつけられて、かつダイヤルがカラフルで目を引くモデルなんて、心引かれないほうがおかしい。
もしひとつ挙げるとしたら、本モデルはベースカラーにターコイズブルーを採用しているが、個人的にはロレックスのコーポレートカラーであるグリーンをベースにしてもいいなと感じた。あと個人的にグリーンは私の好きな色でもある。ブランドが、消費者人気の高かったターコイズブルーを選んだのもわかる。でもグリーンのみと言わず、キャンディピンク、イエロー、コーラルレッドを背景にした、セレブレーションモチーフダイヤルのバリエーションも見てみたい。これは高望みだろうか? だがロレックスの技術力であればきっと実現できるだろう。またこれを読んでいる女性も、この色がベースだったらもっといいのに、と感じる人もいるはず。
ブランドの担当者に、いま借りているモデルをそのまま買うことはできませんか? と聞くのを抑えて、私はロレックスまで時計を返しにいくのだった。