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ウルベルクは本当にクールだと思う。最近、ヴィンテージウォッチに引かれる気持ちとモダンウォッチの魅力に引っ張られる自分について書いたが、モダンなデザインで一番心をつかまれるブランドといえばやはりウルベルクが思い浮かぶ。彼らの時計はモダンかつタフで、なんというかただただカッコいいという感じだ。見た目がすごく個性的であるのに、びっくりするくらい時間が読みやすくて直感的。単なる“奇抜なデザイン”ではなくて、きちんと使いやすさを考えたデザインになっているのが素晴らしい。
今回の新作UR-150は時計としての革新性ももちろんすごいが、ウルベルクらしさという核心的な部分はまったくブレていない。むしろそれが、少し新しい形に進化した感じがする。
新作UR-150を説明するには、“よりワイドなレトログラード表示”と表現するのが適しているかもしれない。ウルベルクの特徴であるサテライトディスプレイは通常120°の弧を描くが、このモデルでは240°に広がっている。では、これは何を意味するのか? まず、サテライトディスプレイ全般の仕組みを解説しよう。サテライトディスプレイは時計回りに進むが、時間が経過してもディスク自体が回転するわけではない。赤いフレームの先端には矢印が付いており、文字盤外周にあるミニッツトラックを指して時間を示す。そして分針が60分に近づくと、フレーム全体が勢いよく0に戻り、ディスクが進んで次の時間をフレーム内に表示する仕組みだ。
秒表示がないため、分目盛りを広く配置することで視認性が向上している(これはムーブメント自体の精度ではなく、読み取りの精度の話だ)。つまり、分表示がより読み取りやすくなっているのだ。時間の設定は12時位置のリューズで行うのだが、その操作は非常に触覚的な体験だ。リューズを操作するとムーブメント全体がゼロに戻るスナップを実際に感じ取れる。通常、12時位置にリューズを配置するのは扱いづらいものだが、リューズは大振りなサイズで操作性のバランスがよく、なおかつ邪魔にならない位置に収まっている点が秀逸だ。
この新作での主な功績は、新しいムーブメントが文字盤上の表示範囲を広げたこと自体ではなく、その実現方法にある。ここはウルベルクのフェリックス・バウムガルトナー(Felix Baumgartner)氏に説明を任せよう。
「すべてのサテライトを駆動し、時針を誘導し、各要素が正確なタイミングでジャンプするようにするために、新しいサテライトコンプリケーションシステムを設計しました。このシステムは、サテライトとベースムーブメントのあいだに配置されたフライングホイールとピニオンを中心に構築されています。これがカムの“ガイディングスレッド(動きを導く指針)”を読み取り、追従します。そのため従来のマルタ十字に基づく装置を、カムとラック(土台)システムに置き換えました。この新しい設計には非常に特殊なバネの開発が必要で、その製造は自社工房で独自に加工する必要がありました。この動きの躍動感をより視覚的に楽しめるようにするため、通常の60から0の目盛り間の距離を2倍に拡大しています」と、彼は語る。
より興味深いのは、視認性の向上が主目的ではなく、ムーブメントの技術的な成果を強調するという意図の副次的な効果だったという点だ。これらの動作はわずか100分の1秒と、一瞬で完了する。これについてサソリの一撃のようだとブランドは表現している。そしてカルーセルアームに取り付けられたウェイトは、これまでで最大のサイズを誇るだけでなく、このスナップ動作の力をバランスよく制御するために不可欠な要素となっている。
同ムーブメントは自動巻きだが、巻き上げの速度や使用時に発生する衝撃、さらにはムーブメントが動作する際の力を抑えるため、ブランドは二重のタービンシステムを採用している。そしてこのタービンが、衝撃を吸収する仕組みだ。とはいえ何よりも印象的だったのは、ムーブメントの裏側の見た目だ。文字盤側からも多くのメカニズムが見えるが、裏側から見えるローターのデザインはこれまで見たどの時計とも違う独特なものだった。
この時計は有機的なドーム型形状と横から見たときのプロファイルが特徴で、手首にフィットして快適に着用できる。ケースはサンドブラスト仕上げとショットブラスト仕上げが施されたチタンおよびスティールで構成され、ふたつの異なるモデルがそれぞれ異なるカラーで仕上げられている。どちらのモデルも50本の限定生産である。
昨年、シンガポールで両モデルを目にする機会があったが、撮影したのは下に掲載した“ダーク”モデルのみだ。このモデルはアンスラサイトカラーのPVD処理が施されたケースと赤いフレームの分針が特徴である。光の当たり具合によって、ダークのブラックアウトされたケースが少しグレーがかった印象を与えることもあるが、PVD加工のない“タイタン”モデルは、基本的にこのグレーの色味となっている。
下の写真だけ見ると時計があまり手首にフィットしていないように見えるかもしれないが、それはウルベルクが非常に長めのラバーストラップを標準で提供しているからだろう。おそらく、9インチ(約22cm)の手首サイズでも、箱から出したまま特に問題なく装着できるのではないだろうか。写真を撮っていないときに、ストラップを調整して7.25インチ(約18.4cm)の自分の手首にしっかりフィットさせてみたところ、ぴったりと手首に沿った。実際、これまで着用したウルベルクのなかで最も快適だったかもしれない。
新作UR-150 “スコーピオン”の価格は、PVD加工のない“タイタン”モデルが8万8000スイスフラン(日本円で約1500万円)、先述した“ダーク”モデルが8万9000スイスフラン(日本円で約1530万円)となっている。決してお得とは言えない価格だが、ウルベルクへの愛着とブラックアウトされたデザインへの偏愛を考えると、この時計がウルベルクらしい非常にクールな一品であることは間違いない。
詳しくはウルベルクの公式サイトをご覧ください。