WATCH OF THE WEEK ダリ・ウォッチはクラッシュを超えた存在

Watch of the Weekでは、Hodinkeeのスタッフや友人から、時計にまつわる個人的なエピソードを募集しています。今日の特集の著者は、不動産業者、ファッションディーラー、そして#teamcozyboysの創立メンバーであるエリアス・マルテ(Elias Marte)さんです。

　私は昔から服を着るのが好きで、その多くは母から受け継いだものです。母はいつも「男は時計をつけるものだ」と言っていて、それが心に残っています。だから、たとえジュエリーをつけていなくても時計は必ずつけています。私のスタイルセンスは、母から多くの影響を受けています。母は、地元ブルックリン地域では、特別な日のためにきちんとした服装をすることで有名でした。彼女はシングルマザーで私は一人っ子だったので、よく一緒に買い物に行き、私の意見も聞いてくれたので、比較的早くから自分の好みを確立することができました。幼い頃から着たいものが決まっていて、母がそれをさせてくれたのを覚えています。買い物は私たちにとってイベントであり、母がブルックリンのダウンタウンに行き、電気代を払ってから買い物に行くというのが日課でした。母は1、2度、私を学校から連れ出して、一緒に時間を過ごすこともありました。カルバン・フィットやジョーダッシュ・ジーンズを、頭からつま先まで着こなしたいと思っていた頃のことです。

　95年、初めて学校に行った時に母がくれた腕時計がカシオのFW-91。とても気に入ったのですが、お道具箱を持っているような好奇心旺盛な子供だったので、長くは持ちませんでした。でも、一番印象に残っている時計は、実は叔母が持っていたものなんです。私が5歳くらいのとき、叔母の膝の上に座って、彼女がこのファンキーなパルサーの時計をつけていたのを覚えています。そこから、私の奇妙な形の時計に対する愛情が始まったのです。

　時計にドンドンハマるようになると、ユニークな形の時計や、せめて丸くない時計を探すようになりました。僕はあまり時計を手放すことはなく、自分が気に入った時計、ファンキーな時計ならハッピーになれる時計を買います。でも、今、私のコレクションは26か27本くらいで、なかには丸い時計もいくつかあります。私は四角い時計や変わった形の時計で知られているので、期待に応えたいような気がしますが、ヴィンテージの丸いダイビングウォッチを4本持っています。

　私は小さい時計が好きでヴィンテージ時計を中心に購入しているので、サイズ的には「女性用」のカテゴリーに入ります。私は自信と余裕があるので、あえて小さいケースや女性用の時計に手を出しましたが、特に気になりません。でも、そのカテゴリーでひとつ気づいたのは、「時計は丸くなければならない」という考え方が、それほど定まっていないことです。時計の世界は丸いものであってはいけない、他にもいろいろな形があるはずだ、ということです。学校に行っても、丸以外の形もたくさん習いますよね。女性用の時計は、台形、正方形、長方形など、決まったルールがないんです。

　小さいケースに引かれてヴィンテージを買っても、小さすぎて困ることはまずない。ムーンフェイズやパーペチュアルカレンダーに興味を持つ人もいるでしょう。私はいつも、非常に小さなムーブメントと、それを作るために必要な技術に感動しています。

　私はカルティエの時計が大好きです。だからいつもカルティエの時計を探しているんですが、数年前、ダリウォッチと呼ばれるエグザエコ・ソフトウォッチ(Exaequo Softwatch)に、もしかしたら私が気に入るかもしれないと何度も誘導されたんです。しかし、当時はタンクをもっと手に入れることに集中していたため、ずっと無視していました。でもある日、クリックしてみたら、なるほど、これは面白い。ネイビー文字盤のものを手に入れ、その数ヵ月後にホワイト文字盤を手に入れました。この値段で手に入れることができたのですから、驚きです。この時計は見た目はいいのですが、複雑な機構を搭載しているわけでもなく、「すごい！」と思うようなものでもありません。ロンダのムーブメントを搭載していますが、これは非常にベーシックで、耐久性はありますがそれだけです。だから、私が2つとも持つようになった短いあいだに、それが普及したことに驚いているんです。

　これは真鍮に金メッキを施したもので、私のコレクションのなかで最も複雑で美しく、貴重な時計というわけではないですが、会話のきっかけにはなります。イベントやパーティにつけていくと、時計に興味がある人もない人も、この時計について話してくれるからです。人によってはクラッシュだと思うかもしれませんが、私はこの時計について研究してきたので、どういうものなのか自分自身で語ることができると感じています。この時計は、新しい友人を作るのに役立つか可能性がとても高く、気に入ってつけているんです。

　私は自分のスタイルをとてもニューヨーク的だと考えています。ヒップホップやサルサの影響を強く受けて育ったので、シンガーたちは皆、日除けやネックレス、ポップな襟巻き、大きな髪型です。だから、何が出てくるかわからないんです。ある日、大きなパーカーとバラクラバを着るかもしれないし、カリブ海のルーツであるブレスレットや指輪に傾倒するかもしれません。私が持っているほとんどの時計よりも太いブレスレットも持っています。でも、何より、この時計と、髪を切り、爪をきれいにして身につけると、母の伝統である装いを引き継いでいるような気がするのです。叔母は私が物を買いすぎると思っているようですが、母なら納得してくれるでしょう。彼女はおしゃれにとても熱心だったので、服を着るときは母のことを思い出しています。