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我々が知っていること
先日、ポルシェデザインはポルシェAGと共同で、2本の時計と2台の“新しい”車を発表した。最初の時計はポルシェデザインが設立された1972年に発売した、オリジナルのポルシェ デザイン クロノグラフへの直接的なオマージュだ。外観はすべてオリジナルの時計と同一だ。しかし、内部にはポルシェデザインがWERK 01.140と呼ぶ、フライバック機能を備えたキャリバーが搭載されている。このクロノグラフは72年のスティール製モデルとは異なり、チタン製だ。
72年製のポルシェデザイン クロノグラフ 1を忠実に再現。
オリジナルの時計は、ポルシェの創業者フェルディナンド・ポルシェ(Ferdinand Porsche)の孫にあたるフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェ(Ferdinand Alexander Porsche/ポルシェマニアは“ブッツィ”と呼ぶ)がデザインし、今では当たり前となっているカーデザインを時計デザインに取り入れた初期の例となった。フェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェは、エルヴィン・コメンダ(Erwin Komenda)とともにオリジナルの911をデザインしたこともあり、ポルシェデザイン50周年記念の一環として、ポルシェと共同で1972年製の911 S 2.4 タルガをフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェお気に入りの仕様で復元・製造した。彼は黒を好んだため、当然ながらクルマも黒を基調とし、アルマイト仕上げのフクス(ポルシェを象徴するホイールデザイン)、横方向のストライプ、黒とクールグレーのチェック柄のSport-Texファブリックシートが採用されている。ブッツィのスタイルを象徴するような作りだ。
1972年のタルガは、製作開始前にファクトリーによってむき出しの金属の状態まで剥がされた。
ブラックは当然の選択。時計と完璧にマッチしている。
2022年の911ポルシェデザイン50周年記念モデルが、72年の911カスタムレストアと一緒に停まっている。2台とも年代は違えど、ブッツィのオリジナルデザインと美学を体現している。
そしてポルシェデザインは、その72年製911の唯一のカスタムレストアと対をなす現代版をリリースする。「2022 911 ポルシェデザイン創立50周年記念限定モデル」だ。2022年型911 タルガ4 GTSからスタートし、シートのクラシックなチェック柄のSport-Texや、ブラックペイントのキャリパーを採用したスポーツデザインパッケージなど、すべてのヴィンテージ要素を加えている。しかしスポーツクロノのパッケージの一部として装備されるポルシェデザインの赤いクロノグラフ秒針が、ポルシェデザインのクロノグラフを最もよく表している。
時計と車を並べてみると、その視覚的な調和がよくわかる。
ここまでに72年のポルシェデザイン クロノグラフの再現、911 S 2.4 タルガのワンオフ・ファクトリーレストア、2022年の911ポルシェデザイン50周年記念モデルを紹介した。しかしポルシェデザインはもうひとつの仕掛けを用意している。クロノグラフ1 - 911 エディション50Y ポルシェデザインだ。このモデルはオリジナルのレトロなロゴではなく、現代的なロゴを使用している以外はクロノグラフ1とまったく同じだ。さらに500本限定モデルがソリッドケースバックを備えているのに対し、このモデルはシースルーバックから見えるフクス型のローターを備えている。この時計は2022年式911 ポルシェデザイン50周年記念モデルの購入者限定で車は750台しか製造されないが、これは時計も同様だ。
初代911は63インチ幅だが、新型は74インチ幅。ホイールベースも87インチから97インチに伸びた。しかし911のスタイルや思想は、おおむね変わっていない。
我々が思うこと
昨年、私は911を売却した。空冷エンジンを搭載した85年製のレア仕様Gボディでとても気に入っていたのだが、単純にその時が来たのだ。911のクラシックカーが高値で取引され、空冷エンジン車が過剰なブームとなる前に私はこの車を手に入れていた。私はモノを手放したことをあまり後悔しないが、ポルシェデザインが50周年を記念して行っていることを見たとき、そもそもなぜポルシェを所有しようという気持ちになったのかを思い出した瞬間があった。彼らはすばらしい仕事をしている。
しかも、ポルシェの限定車や限定モデルの時計はほとんど見かけない(ましてや両方など)。ポルシェのファクトリーがプロジェクトを手がけるとき、その結果はいつも特別なものになる。
この限定モデルをクールにするのは? ブラックとクールグレーのSport-Texファブリックだ。
ポルシェデザインは長いあいだ、ポルシェAGの軌道上で機能してきたが、このクロノグラフ1のようなプロジェクトを通じ、時計と車の両方の世界で意義深い形で両社が協力した。ポルシェデザインが時計製造のベル・エポックを築いたのは70年代のことだ。彼らはまず、スイスの時計メーカーであるオルフィナと提携し、一般に初めてオールブラックのスポーツウォッチと言われるものを発表した(PVDとは言わない。PVDを使用していなかったからで、パウダーコーティング仕上げのようなものだった)。それが今回の記念となった72年のクロノグラフだ。その後、1977年にIWCと提携し、最近ヴィンテージコレクターのあいだでカルト的な人気を誇る、奇抜なデザインの時計をいくつか生み出した。
この時計は2022年のものだが、一見すると1972年のオリジナルと見間違うほどだ。
新バージョンでは人間工学と装着性を考慮し、チタンを採用。
自社製のCal.WERK 01.140には、7750のインスピレーションが込められているようだ。
この時代のポルシェデザインの哲学に立ち返ると、いろいろな意味で興味深いものがある。フェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェは、実際にこの時計と911の両方をデザインした。これは911へのオマージュや“911の精神に基づいてデザインされた”時計ではない。史上最もアイコニックなスポーツカーのひとつを設計した人物とまったく同じ人物によって設計された時計なのだ。そして、この時計が結びついた車もある。
クロノグラフ 1 – 911 エディション50Y ポルシェデザインは、フクスをモチーフにしたローターを備えている。
ポルシェは概して非常に規則を遵守する自動車メーカーだ。顧客が新車でできること、できないことが明確になっている。カスタムオーダーはディーラーのマネージャー、地域のコーポレートマネージャーのサインを経てツッフェンハウゼンに運ばれ、そこでもう一度審査が行われるのだ。それがこのモダンな限定車の魅力になっている。チェック柄のSport-Texやポルシェデザインのスモールセコンドクロックなど、シートはポルシェの社内カスタマイズプログラムであるSonderwunsch(特別な願い)プログラムのなかでも、標準装備では非常に入手困難なものだ。
20世紀を代表するスポーツカーはもちろんのこと、自動車をデザインした時計デザイナーはそう多くはないだろう。
クロノグラフ1と、それに連動する911モデルの復刻はポルシェデザインがコアユーザーが何を求めているかを知っていることをファンに示唆するものだ。ポルシェAGとポルシェデザインはまったく別の会社だが、これほど密接に協力しているところを見ると、ポルシェデザインの時計部門の将来にとって極めていい兆しであると言える。なにしろ、もともとクロノグラフ1を誕生させたのは911なのだから。
ポルシェデザイン クロノグラフIは、ポルシェデザインを通じて7700ドル(約87万5320円)で販売。500本が製造される予定。クロノグラフ 1 -911 エディション50Y ポルシェデザインは911ポルシェデザイン50周年記念限定特別モデルを購入された方が対象。それぞれ750本が作られる予定。最後にポルシェ911 S 2.4 タルガクラシックはポルシェミュージアムで一般公開される。