Hands-On スウォッチ　ゴールデン・メリーはあなたの手首を飾るスウォッチ流のクリスマス・セーターだ

　多くの人がそうであるように、私もホワイトクリスマスを夢見るだけでなく、聖ニコラスおじいさんがおもちゃ袋のなかに時計を入れて街にやってくることを祈っているのだ。もちろん、ロイヤル オーク'ジャンボ'やペプシGMTもいい。でも、最近はサンタでさえ順番待ちをするようなので、もう少し現実的に考えて、もっとシンプルなものを指折り数えて待っているところだ。

　数週間前、HODINKEEのオフィスにいる同僚が、机の上にある時計を見て笑っているのを聞いた。そこで一緒に見ることにした。時計は楽しいものだが、こんなに笑ったのはいつ以来だろうか。

　スウォッチのXmasコレクションの目玉商品であるゴールデン・メリーは、クリスマスツリーの周りで揺れるクリスマスセーターをテーマにした、大げさな時計だ。

　写真で見たとき、この時計は完璧に見えた（まぁ、完璧に楽しくておふざけが過ぎるのだけど）。2022年の長い苦労の末、新年を迎えるのにこれほど陽気で明るいものはないだろう。これは手に入れなければならなかった。しかし、期待に胸を膨らませていたのに、どうやら一人寂しいブルークリスマスを迎えそうな予感だ。なぜって注文する前に、その時計は完売してしまったのだから。

　どうやら、クリスマスセーターをテーマにした時計が、世界を楽しくしてくれると思ったのは、私だけではなかったようだ。

　だから、ウィスコンシンの家族に会いに行く前夜にUPSのトラックが到着したとき、それはまるでサンタがそりに乗ってやってきたかのようだった。箱を開けると、そこにはゴールデン・メリーが。本社に依頼していた貸出サンプルが届いたのだ。

　私はHODINKEEのチームにメッセージを送り、このありえない展開について皆に知らせた。「クリスマスの奇跡だ！」と上司から返信があった。

　この時計は純粋にキッチュだが、すべての時計がシリアスでなければならないなんてことはない。直径34mm、厚さ8.75mm、バイオ素材で作られたスウォッチのケースとプラスチック製のクラスプを持つ、普通の時計だ。しかし、レザーストラップにゴールドのふさ飾りとコントラストの効いたイエローのステッチ、それにヒイラギの刺繍が施された時計（もちろん、陽気なクリスマスが過ごせるように）がほかにあるだろうか？

　正解は、この時計以外にない。

　そして、ふたつのベルが鳴り響き、手首を動かすたびにチリンチリンと鳴るのだ。確かに「ダサいクリスマス・セーター」を模したものだが、私の目には、ダサいというより、むしろ派手で楽しいと映った。

　ゴールドのミラーダイヤルに描かれたシルエットは、ヒイラギ、トナカイ、スイスのシャレー（木造建築の山小屋）、そしてアルペンホルンを吹くサンタなど、クリスマスにちなんだものだ。赤、白、緑のボールが交互に配置された金色のミニッツトラックは、特定の分表示に対応していないようだが、1年で最も素晴らしい季節であることを知るだけでよいのなら、正確な時間など必要ないだろう。

　クリスマスにふさわしく、ゴールデン・メリーは文字盤と同じモチーフの25cmを超える厚紙製の特大円形オーナメントの中心に付属したパッケージだ。つまり時計とオーナメントを一緒にクリスマスツリーの枝（巨大で丈夫な）に飾ることができるというわけだ。しかし、より現実的なのは、パッケージが大きなマトリョーシカ人形で、そのなかに雪のなかの梢のように輝く6つの小さな段ボール製の切り抜きオーナメントが収まっていて、ツリーで目立ちすぎたり、重くてひっくり返したりすることはないのだ。

　とにかく、私はその時計を手に入れたのだ。2回のフライトと24時間足らずで、私はウィスコンシン州の田舎町の自宅に到着した。雪が降ってきて、これから数日間、アメリカの大部分を襲う吹雪に悩まされる空の旅に勝利したのは幸運だったと思う。もちろん、ゴールデン・メリーは完璧なトラベルウォッチでもなんでもない。フライヤーでもコーラーGMTでもない、ただの普通の2針のスウォッチなのだ。もし旅行中につけていたら、空港で奇異の目で見られること間違いなしだ。でも、そのバカバカしさ（そしてそれを身につけている自分の自意識過剰さ）にもかかわらず、ゴールデン・メリーは自我を捨て、クリスマス気分に浸るための完璧な口実となったのである。

　レザーストラップとふさ飾りはともかく、防水性能は30mしかないため、ゴールデン・メリーをつけて私道の雪かきをしたいとは思わない。実際、箱から出している間にリボンがひとつ取れてしまった。そのため、私が家に着いてから12時間の間に降った15cmほどの雪から車道を掘り起こすと、母は裁縫道具を取り出し、サンタの妖精のように素早くリボンを付け直し、この時計がクリスマスに向けて撮影可能な状態になっていることを確認してくれた。

　雪かきが終わると、川を越え、森を抜けて祖母の家に行き（文字通り、祖母は森を抜けたところに住んでいる）、この最新のおもちゃを見せに行った。87歳の祖母は生涯を通じて編み物をしており、伝統的な意味でのクリスマス・セーターを作ったことはないと思うが、このアイデアはきっと喜んでもらえると思ったのだ。「彼女は、私が着ていたセルブのミトンのように、ノルウェーの伝統的な編み物にこだわるのではないかと思っている。また、時計の価値（この場合、税込1万4300円）や歴史（ミラのニコラオスの歴史はご勘弁を）ばかりを追求する必要はない。ときには、おかしなクリスマス・セーターを腕に巻くことも必要なのだ。

　今年のクリスマス、もし誰かにこのスウォッチをプレゼントされたとしても、その翌日には手放さないで。今年は、時計と一緒に楽しい時間を。そう、クリスマスツリーを囲んで、楽しいひとときを過ごそう。この趣味は楽しいことばかりだ。

　私はこんなシンプルな願いを込めたいと思う。サンタクロースがあなたのクリスマスを輝かせるゴールデン・メリーを持って町に来ていて、クリスマスの朝、読者のうちの少なくともひとりがクリスマスソックスのなかで見つけるという願いだ。HODINKEEのスタッフ全員から、メリークリスマス、ハッピーホリデー、そしておやすみなさい。