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Business News LVMH傘下のゼニスは高級市場へのシフトに伴い、人員削減と生産量減少を計画しており、大規模な再編を進めている

長年の赤字経営を受け、ル・ロックル製造工場が事業再編の一環としてモデル数と生産量を削減するなか、従業員の最大半数が職を失う可能性がある。

1世紀以上の歴史を持ち、高振動クロノグラフムーブメントのエル・プリメロで知られるスイスの老舗ブランド、ゼニスは、大規模な組織再編に着手する。LVMH傘下の同社は、従業員の大幅削減と生産・流通規模の縮小を余儀なくされ、少量生産の高級時計メーカーとしてブランドを再構築する計画だ。

 1865年にスイスのル・ロックルでジョルジュ・ファーブル=ジャコ(Georges Favre-Jacot)によって創業されたゼニスは、長年にわたり赤字が続いていた。最高経営責任者(CEO)のブノワ・ド・クレルク(Benoit De Clerck)氏は今週、本社で従業員に対し、組織再編を発表するとともに、製造拠点の従業員の約半数にあたる最大100人の雇用を削減する可能性があると警告した。2029年までに組織再編とブランドの再定位を完了するため、時計ブランドの国際チーム全体を含む、さらに100人の人員削減も検討されている。

ゼニスの時計師。

 経営陣と幹部は今後3週間にわたって、再編と人員削減の条件を協議するため、従業員との正式な“協議手続き”を開始する。メーカーの従業員を代表するスイスの労働組合ウニア(Unia)は従業員と面談し、経営陣とともに協議に加わるという。関係者は公に発言する権限がないため、匿名を条件に語った。

 「本日[10/22(木)]、メゾンの戦略的な再定位案に関する従業員との協議手続きが開始されたことを確認します」と、ゼニスの経営陣は用意した声明で述べた。

 「この手続きと、現在協議を行っている従業員への敬意から、協議手続きが完了するまで、これ以上の情報提供は控えます」と、同社の広報担当者は付け加えた。

ゼニス社製の刻印工具。

 ゼニスの苦境は、スイスフラン高や米国の輸入関税、中国や中東など従来の主要市場における需要の変化に直面するスイス時計業界で、近年進む再編の最新の事例であり、おそらく最大規模となる。

 近年、ゼニスは財務上の損失を重ねてきた。顧客やブランドが、より高価格で少量生産の時計へと移るなか、約7000〜1万2000スイスフラン(約130万から230万円)という中価格帯に位置するゼニスの時計への需要が落ち込んでいるためだ。ル・ロックルの施設には大きな生産能力があるものの、需要の低迷により十分に活用されていない。

最新モデルのゼニス デファイ。Photo credit: Tim Vaux

 ゼニスは、エル・プリメロを含むムーブメントをティファニー、ウブロ、ブルガリなどLVMH傘下のブランドに供給し、一定の成果を上げてきた。しかし、グループ内からの発注だけでは十分ではなかった。再編中もLVMH傘下のほかのブランドへのムーブメント供給は続ける一方、クロノマスター、デファイ、パイロットなど、カタログの中核をなす多くのモデルの生産を終了する見通しだ。

 同社は、ブランド創業者のイニシャルにちなんだG.F.J.モデルのように、GPHJを受賞した高級時計ラインに注力していく計画だ。

 スイス紙『ル・タン』は木曜日、ゼニスの組織再編について報じた。同紙はCEOのブノワ・ド・クレルク氏が従業員に向けて行った説明の記録を入手し、ゼニスとスイス時計業界の多くが直面する課題について同氏が語った内容を引用した。

 “ミドルレンジとされる当社のセグメントでは、誰もがきわめて厳しい時期を迎えています。ここ数カ月、競合他社から相次いで発表があったことからもおわかりでしょう。数日前には、ここル・ロックルでもモンブランが発表を行いました。スイスフラン高、米国の関税、中東やアジアといった主要市場の縮小は一時的な乱気流ではなく、長期的に見て市場が変化したことを示しています。ゼニスもこの状況を免れることはできません。それでも我々のメゾンには歴史、専門知識、そして比類なきキャリバーという、提供できる確かな強みがあります”と、同紙によるとド・クレルク氏は述べたという。

“ミドルレンジとされる当社のセグメントでは、誰もがきわめて厳しい時期を迎えています。スイスフラン高、米国の関税、中東やアジアといった主要市場の縮小は一時的な乱気流ではなく、長期的に見て市場が変化したことを示しています”

– ゼニスCEOのブノワ・ド・クレルク氏

 同社に近い関係者によると、ゼニスは他ブランド向けムーブメントの製造に加え、充実したアフターサービス事業も継続していくようだ。ゼニスは100年以上にわたる製造の歴史のなかで手掛けたほぼあらゆる腕時計やクロックの修理・メンテナンスに対応できることを誇りとしてきた。ル・ロックルの工場には、ヴィンテージモデルの修理や再生に用いる部品が100万点以上保管されている。

ゼニスはル・ロックルにある工場で、アフターサービス用の部品を100万点以上在庫している。

 1999年にLVMHに買収されるまで、ゼニスの企業史は長く不安定なものだった。1970年代の大部分において、ゼニスはシカゴに本社を置く米国ゼニス・ラジオ・コーポレーションの傘下にあり、同社はスイスの時計メーカーであるゼニスに対し、ムーブメントの生産を完全に電子式クォーツムーブメントに切り替え、機械式ムーブメントの生産を中止するよう命じた。しかしゼニスの有能な主任ムーブメントエンジニア、シャルル・ベルモはこれらの命令に逆らい、エル・プリメロの刻印工具、設計図、部品をル・ロックル工場の屋根裏部屋の秘密の場所に隠した。エベルやロレックスといった大手ブランドが、新型モデルや刷新モデルに搭載する信頼性の高いクロノグラフムーブメントを必要とした際、ゼニスはエル・プリメロを供給した。この決断が、当時の同社を救うことになった。

ゼニス製ムーブメントのベースプレート。

 ゼニスの人員削減と再編計画は、地元および海外メディアが報じたIWC、モンブラン、ショパール、ブライトリングなど、スイスのほかの時計ブランドでの人員削減に続くものだ。業界に部品を供給するメーカーも苦境に立たされており、オーデマ ピゲ、ロレックス、パテック フィリップ、リシュモンといった大手はサプライヤーの事業継続のために投資や買収を行っている。

 スイス時計業界の年間輸出額は約250億スイスフラン(約4兆7600億円)と過去最高水準にある一方、輸出本数は過去10年でほぼ半減し、ゼニスのようなエントリーからミドルレンジのブランドは苦境に立たされている。

 “ゼニスもまた、構造的な課題に直面しています。こうした強みを、もはや持続的な業績につなげられなくなっているのです”と、『ル・タン』によるとCEOのド・クレルク氏は今週、従業員に語った。さらに、“これらの困難は、当社よりも大きなマーケティング力を持つ競合他社がひしめく激戦区における当社の立ち位置、そして販売量を大きく上回る規模の生産・営業体制が、コストを押し上げている点にあります”と付け加えた。

 ゼニスの従業員と労働組合代表者との協議は、11月12日まで続く。ド・クレルク氏は、ゼニスを含め、どの企業も赤字を無期限に続けることはできないと述べたうえで、高級時計への移行によってビジネスモデルを抜本的に変えることで、ゼニスは“回復を選択している”と語った。

 ゼニスの再編に続き、LVMH傘下ブランドでは、経営陣の人事も行われている。ダニエル・ロートとジェラルド・ジェンタを統括する上級管理職が退任したほか、タグ・ホイヤーではCEOが交代し、売上の落ち込みにも直面するウブロでは、元オーデマ ピゲCEOのフランソワ-アンリ・ベナミアス氏をコンサルタントに迎えることが決まった。

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