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How They Made It ブルガリ オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー タンタル、オンリーウォッチオークションのための特別なモデル

タンタルは長い間、機械加工者の怒りを買っていました。- インターナショナル・ジャーナル・オブ・マシンツール・アンド・マニュファクチャリングより

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タンタルは時計のケースに使用される希少な素材の一つだが、それには理由がある。タンタルはブルーグレーの美しい光沢を持ち、ステンレススティールの2倍の重さがあるため、この金属で作られた時計には物理的な威厳があり、仕上がりはとても美しいものになるのだ。しかし、タンタルは世界で最も加工が難しい金属のひとつでもある。

 HODINKEEの歴史のなかで、タンタルを使った時計を取り上げたのは数えるほどしかなかった。最近では、ウルベルクのタンタル製限定モデル「UR-105」を取り上げたが、その際にダニー・ミルトンは、この素材を扱う上での課題を指摘した。また、F.P.ジュルヌオーデマ ピゲもこの素材を使用している。しかし、一般的には、タンタルを加工するにはコストがかかり、また加工には特別な専門知識が必要なため、ほとんどの時計メーカーにとっては蚊帳の外の素材なのだ。

2021年のオンリーウォッチに、ブルガリはタンタル製のオクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダーを出品する。オンリーウォッチは、高級時計業界最大のチャリティーイベントだ。一年おきにモナコで開催され、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのよりよい治療法、そしていつの日かそれを確立するための研究資金を集めるために、2005年にリュック・ペタヴィーノ氏によって創設された。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、筋肉組織が進行性かつ不可逆的に衰えていく病気で、ペタヴィーノ氏の息子であるポールは、2017年に20歳の若さでこの病気で亡くなった。

 このオークションには、世界のトップメーカー数十社が参加しており、世界記録の更新も珍しくない。寄贈された時計はどれも一点もので、コレクターにとってはたまらないものだ。特別な文字盤やケースデザインなど通常生産モデルのバリエーション違いというのが多く見られる(ただし、オンリーウォッチのユニークピースには、ごく少量生産された時計をベースにしているものもある)。

 オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー タンタルは、ケース、ベゼル、ケースバックの3つの金属の塊から始まり、それを徐々に機械加工してオクト フィニッシモのケースに仕上げていく。多段階のプロセスが必要となるのだ。タンタルはよく「粘性のある」素材と呼ばれるのだが、これはプラチナと同じように機械加工者にとって困難な課題であることを示している(詳細は記事「腕時計におけるプラチナという素材の長所、短所、コスト、そして複雑な歴史」参照)。つまり、プラチナと同様に、素材と切削工具の両方に、接着剤のような粘り強さで付着する傾向がある。また、プラチナと同様に、口でオクト フィニッシモと言うよりも早く切削工具を劣化させてしまうのだ。

 また、タンタルは非常に柔らかい素材でもあり、グレード2チタンの約半分の硬さだ。これと素材の粘着性が相まって、削りにくさを増大させている。生のパン生地を加工してきれいなエッジを出そうとすることを想像してみると、この素材を加工することが切削工具に与える影響の大きさがわかるだろう。

 オクト フィニッシモのケースは複雑な形状をしており、特にラグの部分には十数個の異なる面がある。どれも非常に立体的でシャープなエッジで構成されているが、タンタルではこれを実現するのが特に困難だ。綺麗にカットするためには、超高速の超硬工具と適切な潤滑剤の使用が必要とされる。通常、CNC旋盤では、切削ヘッドとワークの接触部分の冷却と潤滑のために、さまざまなグレードのオイルを使用する。タンタルの場合は、ドライクリーニングの液体であるパークロロエチレンが推奨されている(プラクティカル・マシニストのフォーラムでは、リステリンのマウスウォッシュでタンタルの加工によい結果を得た人がいると掲載されていた。驚きだ)。

 その後、ヤスリをかけて手仕上げされる。これは、機械加工のときに残った残留物を取り除くためである。プラチナと同じように、タンタルを加工する際には、お客様に提供できるような研磨面にするのは難しいため、手作業での仕上げが必要になるというわけだ。タンタルのケースを1つ作るのに、必ずしも大量の粉塵が発生するとは思わないが、もう1つの興味深い問題は、タンタルの粉塵が可燃性であることだ。その粉塵を入れた容器を輸送すると、実際に爆発する危険性がゼロではないほどで、火災が発生した場合には、消火器ではなく化学実験用の古典的な砂の入ったバケツに頼ることをおすすめする。

 ブルガリの機械工に必要以上の苦労をさせたくはないが、タンタルを使ったオクト フィニッシモ(複雑機構ではなく自動巻きのシンプルなモデル)は、とても面白い時計になると思う。タンタルの加工には困難が伴うが、少なくとも完成品としては、時計のケースには最適な素材だ。ゴールドをも腐食させるアクアレジアを含むほとんどの酸に耐え、生体適合性にも優れている(言い換えれば低アレルギー性)。オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダーのような薄型の時計(ケースサイズは40mm x 5.80mm)にタンタルを使用することで、興味深い重厚感を加えることもできる。前述のとおり、タンタルは316Lステンレススティールの約2倍の密度を持ち、ゴールドよりもわずかに密度が低いだけだから(タンタルは周期表でタングステンの前に位置している)。

 「オンリーウォッチ2021」は今年11月6日に開催されるが、ブルガリとオンリーウォッチが素晴らしい結果を残せるよう、幸運を祈る。このオークションは、筋ジストロフィー患者とその家族にトンネルの終わりに光を見出すという、非常に価値のある目的のために、毎年数百万ドルを生み出している。