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Naoya Hida & Co. 2026年新作コレクション、7つの新作を含む全10モデルが登場(編集部撮り下ろし)

2026年はNaoya Hida & Co.にとって、ブランド初となる試みが数多く盛り込まれた年となった。クロノグラフやポーセリンダイヤルの採用、小径ケースへの挑戦など、これまで培ってきた美学を軸にしながらも、新たな領域へと踏み出す動きが随所に見られる。ブランドの進化と拡張が同時に進んでいることを強く印象づけるラインナップだ。

Naoya Hida & Co.は、2012年に飛田直哉氏、時計師の藤田耕介氏、そしてエングレーバー(彫金師)の加納圭介氏の3名でスタートしたプロジェクトです。2018年にブランドとして結実し、現在では複数の時計師と彫金師を擁するチームへと発展しています。少人数体制を維持しながらも、製造本数は着実に積み上げられており、その歩みは量よりも質を重視する姿勢とともに続いてきました。

 2026年の新作発表は、そうした体制の拡充を背景に移転した、新しい本社兼工房で行われました。製作の現場そのものがアップデートされたタイミングでの発表であり、ブランドが次のフェーズへと進みつつあることを強く印象づけます。

 今年の新作7モデル(うち2モデルは完全新作)と継続生産の3モデル(NH TYPE3B、NH TYPE3B-3、NH TYPE6A)で構成される今回のラインナップは、クラシックなラウンドウォッチの深化と、レクタンギュラーや複雑機構への展開が同時に進んでいる点が印象的です。

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NH TYPE1E: 36mmになったブランドの原点

新作のNH TYPE1E(左)とNH TYPE1D(右)。

 ブランドの原点とも言えるTYPE1シリーズの最新世代が、このNH TYPE1Eです。2019年に最初の製品として登場して以来、改良を重ねてきた本シリーズは、今回ついに第5世代へと進化しました。一見しただけでは大きな違いに気づきにくいかもしれませんが、その変化は確実に積み重ねられています。最大の変更点はケース径で、従来の37mmから36mmへとサイズダウンしました。

新作のNH TYPE1E(上)とNH TYPE1D(下)。

 37mmは手首周り15.5cmと細めの僕にとって“スイートスポット”と感じられるサイズですが、36mmになることでよりドレッシーで引き締まった印象へとシフトしてように感じられます。わずか1mmの差ではあるものの、この種の時計を好む人にとっては着用感や佇まいに明確な違いとして現れます。

 また風防は、従来の緩やかなカーブからより立体的なドーム形状へと変更されました。厚みは増しているものの、その分ダイヤルには奥行きが生まれていて、実機を並べて見ると、その差はより明確に感じられます。Naoya Hida & Co.らしい“微差の積み重ね”が端的に表れた1本です。

Naoya Hida & Co. NH TYPE1E
直径36mm、厚さ10.9mm、ラグ・トゥ・ラグ43.8mmのステンレススティール(SUS904L)製ケース、5気圧防水。ドームド・サファイアクリスタル風防。洋銀製ダイヤルに手彫りインデックス、カシューによる墨入れ。時・分・スモールセコンド表示。手巻きCal.3019SS、2万8800振動/時、パワーリザーブ約48時間。価格は297万円(税込)。


NH TYPE2C-2: ブランド初のポーセリンダイヤル

 TYPE2シリーズの最新作となるTYPE2C-2は、ブランド初となるポーセリン製文字盤を採用した意欲作です。

 センターセコンドのTYPE2は、発表当時、個人的にも特に気に入っていたモデルのひとつでした。ただ、このブランド全体で見ると必ずしも主力モデルという位置付けではなく、通好み商材の中でもさらにコアな存在だった印象があります。その後、マーク・チョー氏率いるアーモリーとのコラボレーションモデルであるNH TYPE2C-1 “レターカッター”によって再び注目を集めましたが、通常モデルは第3世代で一度生産が停止していました。

 このシリーズが2年ぶりに再びラインナップに戻ってきた本作では、新たにポーセリンダイヤルを携えて再登場を果たしました。従来とは異なるアプローチで新たな価値を提示したいという意図があるように感じられます。1950〜60年代のモダンドレスウォッチをベースにしたこのシリーズに、19世紀に多く見られたポーセリンという素材をどう融合させるか――それが今回の大きなテーマだったそう。

 同様にポーセリンダイヤルを用いた時計としては、クレドールの叡智IIが思い浮かびますが、本作もまた、素材の持つ静けさと奥行きを活かしながら、ブランド独自の解釈でまとめられています。極めてシンプルな構成でありながら、手描きのロゴやインデックスが生み出すわずかな立体感がケースと美しく調和し、これまでのモデルとは異なる魅力を備えた1本に仕上がっています。

Naoya Hida & Co. NH TYPE2C-2
直径37mm、厚さ11.4mm、ラグ・トゥ・ラグ44.5mmのステンレススティール(SUS904L)製ケース、5気圧防水。カーブド・サファイアクリスタル風防。ポーセリン製ダイヤルに手描きインデックスとロゴ。時・分・センターセコンド表示。手巻きCal.3020CS、2万8800振動/時、パワーリザーブ約45時間。価格は313万5000円(税込)。


NH TYPE3B-4: 彫金ケースのムーンフェイズ

 今回のコレクションのなかでも、ひときわ強い個性を放っているのがTYPE3B-4です。ムーンフェイズを搭載するTYPE3シリーズとして初めて、ケース全面に手彫りの彫刻を施したモデルであり、従来のTYPE1D-3からさらに発展した存在です。前作では側面に限られていた彫刻も、本作ではラグ上面にまで及び、ケース全体を包み込むような造形へと進化しています。

 モチーフはアール・ヌーヴォー。パリの地下鉄入口に見られるエクトール・ギマールのアイアンワークに着想を得た蔦や唐草のモチーフが、ケース側面からラグ、さらにはラグのあいだに至るまで流れるように施され、強い統一感を生み出しています。模様を残して周囲を掘り下げる手法によって、立体感もいっそう際立っています。

 さらにインデックスには、新たにデザインされたアール・ヌーヴォー様式のアラビア数字を採用。立体的に浮き彫りにしたうえで金箔を施すことで、装飾性と視認性を両立しています。TYPE1D系に見られたゴールドのミニッツサークルも組み合わされ、全体として統一感の高いゴールドウォッチに仕上げられています。

Naoya Hida & Co. NH TYPE3B-4
直径37mm、厚さ10.8mm、ラグ・トゥ・ラグ44.5mmの18Kイエローゴールド製ケース、全面手彫り彫刻、5気圧防水。洋銀製ダイヤルにアール・ヌーヴォー書体のアラビックインデックス(浮き彫り+金箔)、ラピスラズリ製ムーンフェイズディスク。時・分・ムーンフェイズ表示。手巻きCal.3021LU、2万8800振動/時、パワーリザーブ約45時間。価格は1650万円(税込)。

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NH TYPE5B / NH TYPE5B-1

 2024年に登場したブランド初のレクタンギュラーモデルであるTYPE5A。その進化形がTYPE5BおよびTYPE5B-1です。一見すると大きな変更はないように見えますが、ラグを1mm短縮し、ケース側面の段差をわずかに調整するなど、細部に手が加えられています。

 数値上はごくわずかな差異であっても、装着感や視覚的なバランスには確かな変化として現れます。実際、これらの調整は飛田氏自身が約1年にわたる着用テストを通じて導き出したものであり、この変化によって全体のプロポーションはレクタンギュラーシェイプからよりスクエアシェイプへと変化しています。

 またTYPE5B-1ではアクリル風防を採用。ヴィンテージウォッチに見られる柔らかな歪みや温かみを現代的に再解釈した仕様であり、サファイア仕様とは異なる魅力を備えています。

Naoya Hida & Co. NH TYPE5B
全長33mm、全幅26.7mm、厚さ9.1mm(ラグ・トゥ・ラグ41.4mm)のステンレススティール(SUS904L)製レクタンギュラーケース、3気圧防水。2パーツ構造の立体サファイアクリスタル風防。洋銀製ダイヤルに手彫りインデックス、カシューによる墨入れ。時・分・スモールセコンド表示。手巻きCal.2524SS、2万1600振動/時、パワーリザーブ約38時間。価格は407万円(税込)。

Naoya Hida & Co. NH TYPE5B-1
全長33mm、全幅26.7mm、厚さ9.1mm(ラグ・トゥ・ラグ41.4mm)のステンレススティール(SUS904L)製レクタンギュラーケース、3気圧防水。ドーム型アクリル風防。洋銀製ダイヤルに手彫りインデックス、カシューによる墨入れ。時・分・スモールセコンド表示。手巻きCal.2524SS、2万1600振動/時、パワーリザーブ約38時間。価格は407万円(税込)。


NH TYPE7A: 初のクロノグラフ

 今回のラインナップで特に注目したいのが、完全新作のひとつであるTYPE7Aです。

 ヴィンテージの名機、バルジュー23(236)を搭載したクロノグラフであり、飛田氏が長年温めてきた構想がついに結実したモデルです。バルジュー23は1916年からおよそ60年にわたって製造された手巻きクロノグラフムーブメントの傑作であり、多くの名門ブランドに採用されてきました。近年では小規模ブランドがヴィンテージクロノグラフムーブメントを採用していて、昨年はニバダ グレンヒェンのクロノマスター アビエーター シー ダイバー、今年発表されたレイモンド・ウェイルのミレジム ザ フィフティ、ブレモン アルティチュード クロノグラフ パルソグラフなどでも見られます。

 実は、ヴィンテージムーブメントの採用というアイデア自体は同社の中で10年以上前から検討されていたものの、安定した調達や継続的な製造の観点から見送られてきた経緯があったそう。今回、それらの課題に目処が立ったことで、満を持して実現に至ったのだと言います。

ヴィンテージのパテックフィリップ Ref.1463 タスティ・トンディにみられる装飾がクロノグラフプッシャーに見られる。

 そうした歴史あるムーブメントに、現代的なケース設計とブランド特有の手彫りインデックスを組み合わせることで、本作は単なるヴィンテージの再現にはとどまりません。過去の名機に対するリスペクトを礎としながら、Naoya Hida & Co.ならではの解釈を加えた、独自のクロノグラフへと昇華されています。

Naoya Hida & Co. NH TYPE7A
直径36mm、厚さ11.7mm、ラグ・トゥ・ラグ43.8mmのステンレススティール(SUS904L)製ケース、3気圧防水。ドーム型サファイアクリスタル風防。洋銀製ダイヤルに手彫りインデックス。時・分・クロノグラフ(30分積算計)表示。手巻きCal.2926CH(Valjoux 23/236)、2万1600振動/時、パワーリザーブ約45時間。価格は583万円(税込)。


NH TYPE8A: 初の小径サイズモデル

 最後に、新たに加わったもうひとつの完全新作モデルがTYPE8Aです。同社のラインナップで最も小径となるケース径31mmを採用。パテック フィリップのRef.96やブレゲRef.3210に象徴される小ぶりなドレスウォッチを想起させるスタイルでありながら、小型でもスモールセコンドを適切な位置に配置するため、プゾー7001ベースの新規開発のムーブメントが用いられています。

 単なるサイズダウンではなく、“小さい時計を成立させる”という課題に真正面から向き合った設計であり、その完成度の高さが際立ちます。

 これまで37mm前後を中心としてきたラインナップに対し、31mmというサイズはさらに一歩踏み込んだ提案と言えるでしょう。男性はもちろん、女性にとっても手に取りやすいサイズ感となり、着用の幅を広げる存在です。加えて、やや大きめのサイズを好む場合には、同時に発表された36mmのNH TYPE1Eも選択肢となります。これまでサイズ面で同ブランドの時計を見送っていた層にとっても、今回のラインナップは新たな入口となり得ると思います。

Naoya Hida & Co. NH TYPE8A
直径31mm、厚さ8.9mm、ラグ・トゥ・ラグ38.4mmのステンレススティール(SUS904L)製ケース、5気圧防水。ドーム型サファイアクリスタル風防。洋銀製ダイヤルに手彫りインデックス、カシューによる墨入れ。時・分・スモールセコンド表示。手巻きCal.2326SS、2万1600振動/時、パワーリザーブ約38時間。価格は352万円(税込)。


Naoya Hida & Co. 2026年新作まとめ

 2026年のNaoya Hida & Co.は、これまで築いてきた美学を守りながら、その射程を着実に広げています。TYPE1Eに見られる王道の深化、TYPE2C-2の素材的挑戦、TYPE3B-4の装飾表現の拡張、そしてTYPE5やTYPE7、TYPE8における新たな領域への踏み込み。いずれのモデルにも共通しているのは、“わずかな違いが本質を変える”という一貫した思想です。

 限られた生産体制のなかで展開されるこれらの時計は、単なる製品ではなく、明確な意思を持った作品として提示されています。今年のコレクションは、そのことを改めて実感させる内容と言えるでしょう。

 詳細はNaoya Hida & Co.公式サイトへ。