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Hands-On ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ・オートマティック・エクストラフラット 2500Vを実機レビュー

この新しい超薄型時計とキャリバーは、待った甲斐があったと心から思える仕上がりだ。

Photos by TanTan Wang

ヴァシュロン・コンスタンタンが今年のWatches & Wondersで発表した新作、オーヴァーシーズ・オートマティック・エクストラフラット 2500Vは大きな話題を呼んでいるが、それも当然だろう。なんといっても、7年もの歳月をかけて開発された真新しい自社製ムーブメントのおかげで、オーヴァーシーズ史上最も薄いモデルが誕生したのだ。1mm削るために、相当な研究開発コストが投じられているはずだ。。またこのモデルが登場したタイミングも象徴的で、ヴァシュロン・コンスタンタンは現在、ブランドとして勢いに乗っている印象がある。先月、マイアミで開催されたブランド最大のアメリカブティックのオープニングで目にしたコレクターたちの熱気は、非常に印象的だった。

 果たしてその開発は、かけた労力に見合うものだったのだろうか? 答えは、イエスだ。この新しいオーヴァーシーズ・オートマティック・エクストラフラット 2500Vを、新キャリバーの開発を記念するきわめて限定的で高価格なフラッグシップモデルとして捉えるならば、その価値は十分にあると言える。Watches & Wondersで、この新作と同時に発表されたオーヴァーシーズ・デュアルタイム・カーディナルポイントはすでにかなりの注目を集めており、ジュネーブでの発表が好調であったことを示唆している。

Vacheron 2500V
Vacheron 2500V Case Side
Vacheron 2500V Clasp

 長年のヴァシュロン・コンスタンタンのコレクターにとって、前作の極薄で時刻表示のみを備えたオーヴァーシーズ・エクストラフラット 2000Vはつい最近発売されたばかりのように感じられるかもしれない。しかし実際には、その登場から10年が経過している。ホワイトゴールド製のケースは直径40mm×厚さ7.5mmであり、内部には、ジャガー・ルクルト製のCal.920をベースとした自社開発のムーブメント Cal.1120を搭載。このムーブメントは、今日に至るまでフルローターを備えた自動巻きムーブメントとしては最薄という最高峰の称号を持ち、時計業界の世界三大ブランドの多くのモデルに採用されてきた。2016年の発売当時、価格は5万5700ドル(当時の予価690万円)であり、美しく、高価で、そしてきわめて入手困難だった。

 そして2026年、ヴァシュロン・コンスタンタンの新しいオーヴァーシーズ・オートマティック・エクストラフラットは、“美しく、高価で、そしてきわめて希少”というテーマを同様に受け継いでいる。2000Vは限定モデルではなかったが、ブティック限定販売で生産数も少なかったため、たとえ資金があったとしても手に入れるのは容易ではなかった。

 この新しい2500Vは、文字どおり限定生産であり、255本のシリアルナンバー入りで製造される。しかし今回はサイズが両面でわずかに縮小され、直径は39.5mmに、厚さは7.35mmと小さく薄くなった。オーヴァーシーズコレクションはすでに驚くほど薄いモデルであったため、このわずかな縮小はそれほど目立たないかもしれないが、実際に着用したときに際立つのはその重さだろう。というのも、この仕様の2500V(正確には2500V/210P-H028)は全体がプラチナで作られているからだ。つまりケースの高さは控えめであるにもかかわらず、この時計の圧倒的な密度は目を見張るものがあるということだ。

Vacheron 2500V Dial Closeup

 プラチナの輝きに組み合わされているのは、鮮やかなサーモンカラーのラッカーダイヤルだ。現代のオーヴァーシーズのダイヤルは、このカテゴリーのなかでも最も魅力的なもののひとつであり、サンレイサテン仕上げの上に施されたラッカー塗装が、滑らかさとメタリック感を両立させた輝きを生み出している。この新しいオーヴァーシーズ・オートマティック・エクストラフラットはデイト表示がないおかげで、長く伸びたアプライドインデックスと相まって、ダイヤルのシンメトリーがとても美しく実現されている。以前にも述べたことがあるが、私は自分の肌の色との相性からサーモンダイヤルがあまり得意ではない。しかしこのダイヤルはサーモンというよりは、明るいオレンジがかった銅色に近く、個人的には素晴らしい色合いだと感じた。

 長らく待ち望まれていたエクストラフラットモデルの復活は、2000Vに搭載されていたジャガー・ルクルト製ムーブメントをベースとする設計に代わる、ヴァシュロン・コンスタンタン独自の超薄型で自社製の自動巻きムーブメントがついに完成したことによって実現した。そしてこの2500Vのサファイアケースバックからは、その新しいキャリバーの全貌を眺めることができる。わずか2.4mmのスリムで新しいムーブメント Cal.2550は、そのスペックにおいて紛れもなく現代的だ。プラチナの採用はムーブメント側にも及んでいるが、マイクロローターに用いたプラチナの密度と、双方向巻き上げによって巻き上げ効率が向上し、80時間のパワーリザーブを実現している。80時間は、今日の時計業界ではそれほど印象的ではないかもしれないが、このサイズのキャリバーとしてはきわめて印象的だ。これはふたつの香箱が並列ではなく直列に作動しながらも、もう一方の上に積み重ねられた吊り下げ式のツインバレルによって実現されている。

Vacheron 2500V Movement

 ポワンソン・ド・ジュネーブ(ジュネーブ・シール)の認定を受けたこのキャリバーが持つ美学と仕上げは、きわめて現代的なヴァシュロン・コンスタンタンらしさを感じさせる。クリーンなレイアウトのなかに、コート・ド・ジュネーブ、ペルラージュ、スネイル装飾といった様々な仕上げとともに、美しいアングラージュ(面取り)がふんだんに施されている。マイクロローターには、ほかのオーヴァーシーズモデルのフルローターに見られるコンパスローズのモチーフが採用されている。

 プラチナ製のブレスレットを備えている本作は、そのケースサイズからは想像できないほどの重量感をもたらし、やや不思議な感覚をもたらす。回りくどい言い方をしたが、本作は輝きとずっしりとした重さが相まって、より一層ラグジュアリー感を放っているのだ。軽量なグレード5チタンというひねりを加え、スポーティさとラグジュアリーを融合させている新作のオーヴァーシーズ・デュアルタイム・カーディナルポイントとは対照的に、本作は圧倒的な高密素材ならではの重みで、手首に伝わるクラシックな高級感を体現している。

 ブレスレットの作りが素晴らしいのは言うまでもないが、この金属素材においてはそれが改めて強く感じられる。これまで、現行のオーヴァーシーズは時計の随所にマルタ十字のモチーフを少し使いすぎていると感じていたが、ブレスレットではこのモチーフがむしろ、各リンクに施された複数のポリッシュ仕上げの美しい面を際立たせている。マイクロアジャスト機能もクラスプにうまく統合されており、簡単に手首にフィットする。

Caliber 2550 Closeup
Thin Wristshot

 しかし現行のオーヴァーシーズと同様に、このモデルにもさらに2本のストラップが付属する。1本はダークベージュのアリゲーターレザー、もう1本はベージュのラバーストラップだ。当然ながら、これらのストラップに交換すれば時計全体の重さは少し軽くなるが、その分、時計本体の重さが際立つことになる。アリゲーターレザーストラップはクラシックなドレスウォッチの雰囲気を醸し出し(このモデルは2針なので、実際にドレスウォッチとしての資格も十分にあるだろう)、スリムでドレッシーなオーヴァーシーズとラバーストラップの組み合わせもまた違った魅力が生まれる。オーヴァーシーズを所有したことはないが、直感的に操作できるインターチェンジャブル機構のおかげで、どこへ行くにもこれらのストラップを存分に活用できるだろうと想像している。

 着用してみると、本作は予想どおりきわめてユニークな着け心地だった。薄型ではあるが、決して小型というわけではない。39.5mmというサイズは、ドレッシーな印象を与える2針時計としてはかなりの大きさだ。そして私は常々、薄さがむしろ直径を強調すると考えている。しかしこれは現行のオーヴァーシーズに共通する特徴だ。私は、どのモデルも実寸よりも少し大きく感じられる傾向があると思っているが、いずれにせよ、ケースは手首にぴったりとフィットする。

Vacheron 2500V WristShot upside down
Vacheron 2500V Holding Bracelet
Vacheron 2500V Soldier Medium

 ここで、本作を検討するうえで思い浮かんだ2モデルと比較したい。ひとつはもちろんヴァシュロン・コンスタンタン ヒストリーク 222、そしてもうひとつは同じ価格帯でより薄型の、プラチナ製のマイクロローターを搭載した2針モデルであるパテック フィリップの新作5610/1P-001だ。いずれも2500Vより直径が小さく、その違いは着用感にもはっきりと表れる。この3つのモデルのなかで、6桁台の価格帯に手が届かない人の現実的な選択肢となり得るホワイトメタル製のモデルは、コンパクトなサイズ(直径37mm×厚さ7.95mm)で、はるかに手ごろな価格(税込514万8000円)のステンレススティール(SS)製のヒストリーク 222だろう。現在の需要を考慮しても、2500Vに比べてはるかに入手しやすいはずだ。またこの2モデルは全く異なる顧客層をターゲットにしている。ヒストリーク 222は時代を超越したデザインの魅力を放つ一方、2500Vは現代のウォッチメイキングにおける革新性を突き詰めた1本だ。より適切な比較は、将来的に、SS製の2500Vが登場すれば可能になるかもしれない。

 3モデルのなかでより直接的な比較対象となるのは、ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ・オートマティック・エクストラフラット 2500Vと、パテック フィリップ 5610/1P-001だろう。5610/1P-001はノーチラス誕生50周年を祝う流れのなかで、Watches & Wondersでデビューした。幅38mm、高さ6.9mmと直径・厚さともに小さく、両方を試着した結果、私の細い手首にはパテック フィリップのほうが着け心地がよかった。しかし5610/1P-001に搭載されているのは、1977年に初めて導入されたきわめて古いムーブメント Cal.240だ。それゆえにヴァシュロン・コンスタンタンの新しいCal.2550が輝きを放つ。直径はパテック フィリップのキャリバーよりわずかに大きいが、厚さは2.53mmと2.4mmのそれよりわずかに薄く、より長いパワーリザーブ(80時間対48時間)を誇る。さらに両方向巻き上げという点で、片方向巻き上げのパテック フィリップ Cal.240のスペックを軽々と上回る。言うまでもなく、Cal.2550の現代的な設計は、耐久性や耐衝撃性においても優位性をもたらすだろう。

5610P Wristshot

パテック フィリップ ノーチラス 5610/1P-001。

222 Steel wristshot

SS製のヴァシュロン・コンスタンタン ヒストリーク・222。Photo by Mark Kauzlarich

 スペックはさておき、ノーチラスの大きな利点であり、同時に最大の欠点は、それがノーチラスであること自体だ。確かにオリジナル以来、屈指と言えるバランスの取れたプロポーションの時計デザインのアイコンを手にすることになる。しかし同時に、ノーチラスは世間の注目を大いに集めてしまう。一方でオーヴァーシーズは、はるかにニッチな体験を提供する。時計愛好家にはひと目でそれとわかるシルエットを持ちながら、控えめであって欲しい場面では主張しすぎない。さらにパテック フィリップ 5610/1P-001も間違いなく入手不可能であるものの、2500Vの255本という生産数は、5610/1P-001の2000本よりもはるかに希少性が高い。より慎重なコレクターであれば、2500Vがおすすめだ。

2500V Pocket Shot

 初代となるこのオーヴァーシーズ・オートマティック・エクストラフラット 2500Vは、1900万8000円(税込)という高額な価格設定ながら、クリーンな2針デザインを最大限に活かし、新世代の超薄型ムーブメントの幕開けを告げている。そしてその高額な価格は時計そのものと同じくらい話題になったが、私の印象では、Watches & Wondersが終わる頃にはそのすべてとは言わないまでも、ほとんどがすでに予約済みとなっているだろう。しかし確かなことは、これがCal.2550にとって始まりに過ぎないということだ。今後、オーヴァーシーズ・オートマティック・エクストラフラットのさらなるバリエーションに採用されることは間違いない(いつかSS製モデルが登場することを期待したい)。またヴァシュロン・コンスタンタンで将来的に、このムーブメントが複雑機構を搭載した超薄型モデルに採用されることも確信している。なにしろあの古典的なCal.1120は、今もなおオーヴァーシーズ・パーペチュアルカレンダー・エクストラフラットで使われているのだ。しかし当面のあいだ、オーヴァーシーズ・オートマティック・エクストラフラット 2500Vは、この物語の第一章として、極めてふさわしい役割を果たすだろう。