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クレドール2026年新作をWatches & Wonders 2026のブースからご紹介
クイック解説
今年のWatches & Wonders ジュネーブにおいて最もエキサイティングなニュースのひとつは、間違いなくクレドールの本格的なグローバル展開の幕開けだろう。ジュネーブの会場に設けられたクレドールのブースは、彼らが掲げる「The Creativity of Artisan(匠たちの探究と豊かなる創造)」というタグラインを体現するような、静謐でありながらも圧倒的な美しさを放つ空間となっている。ショーケースには、ゴールドフェザーをはじめとする極薄のドレスウォッチがずらりと並び、その美しいプレゼンテーションは世界中から集まった関係者の熱い視線を集めていた。
クレドールの彫金を担当する兼﨑遼斗氏。
この光景を前に、セイコーウオッチ株式会社の代表取締役社長 内藤昭男氏はHODINKEE Japanに対してその心中を語ってくれた。
「このように実際に(展示が)並ぶと、非常にセンセーショナルですね。量産ブランドながら薄型時計をここまで作り込んでいるブランドは、実はそれほど多くありません」
内藤氏は現在のクレドールのグローバル展開について「今『フェーズ1』が始まったばかり、新たな挑戦の始まりです」と語気を強める。グランドセイコーは実用時計の最高峰をベースに匠たちが日本独自のモノづくりを提供するのに対し、クレドールはアルティザンの芸術性に基づいてより自由な存在として繊細な美しさや審美性をひたすらに追求する。美しければそれを愛でることに価値があるという、独自の哲学のもとで作られているのだ。
以下では、そんなクレドールが今回のWatches & Wondersで発表した新作3本の実機を詳細に見ていく。
ゴールドフェザー トゥールビヨン 彫金限定モデル
1960年に誕生した初代ゴールドフェザーのDNAを受け継ぐ極薄のドレスウォッチに、クレドールが30年かけて研鑽を積んできた独自の彫金技術とトゥールビヨンを組み合わせたRef.GBCF997が登場した。ブランドの美意識と成熟した腕時計製造技術が結実した1本である。
本作の最大の見どころは、熟練の彫金師チームが施す超絶技巧の彫金である。ダイヤルには放射状に広がる軽やかな直線が刻まれ、絹のように滑らかな質感と優雅な光の反射を生み出している。驚くべきは、この放射状の筋目が一般的なサテン仕上げではなく、すべて手作業で表現されている点だ。また、極細の直線彫りで立体的に表現された鋭いローマンインデックスや、先端を丸くした鏨(たがね)で細かなドットを打ち込む伝統技法、魚子(ななこ)彫りによるミニッツトラックなど多彩な技法が38.6mmのケース内に凝縮されている。
一方、裏蓋から覗く手巻きトゥールビヨンムーブメントであるCal.6850には、羽根のように繊細なダイヤル側とは異なる力強い彫金が施されている。トゥールビヨンキャリッジを中心に放射状に広がるダイナミックな直線模様は、4つの異なる部品を跨いで彫られており、深さと刃の角度を完全に一致させなければならない。ムーブメントで最も薄い部品はわずか0.25mmしかなく、そこに0.15mmの深さで線を彫り込んでいくという、極限の集中力が要求される作業だ。少しでも力が強すぎればパーツを貫通して破壊してしまうため、長年の研鑽で培った指先の感覚のみを頼りに行う極限の集中力が要求される。この圧倒的な技術力こそが、クレドールの掲げる匠の創造性の真髄と言えるだろう。
プラチナ製のケースは直径38.6mmに対して厚さはわずか8.6mmに抑えられており、その極限まで薄い空間の中に、約60時間のパワーリザーブを備えるムーブメントを見事に収めている。この芸術的なタイムピースは、価格2860万円(税込)で、世界限定25本(うち国内18本)という極めて希少なモデルとなっている。
ブルーダイヤルを備えたゴールドフェザー 漆芸ダイヤル 限定モデル
ゴールドフェザーの薄型コンセプトを受け継ぎつつ、日本の伝統美を現代の感性で再解釈したのが、このRef.GBBY967である。本作が放つ圧倒的な存在感の源泉は、ダイヤルに施された漆芸にある。
最大の特徴は、伝統的な漆芸の世界では極めて珍しいとされる、黒から深い青へと移ろう奥深いグラデーションダイヤルだ。天然の漆はもともと茶褐色を帯びているため、澄んだ青を表現することは歴史的に困難とされてきた。しかし本作では、現代の高度な調色技術と、熟練の職人による緻密な塗り重ねによって、まるで夜が明ける直前の静謐な空のような藍漆のグラデーションを実現している。
緩やかな曲面を描くダイヤルに漆を均一に塗り重ね、研ぎ上げる工程は、熟練の匠の指先の感覚と精緻な角度調整が不可欠だ。インデックスや“CREDOR”、“Goldfeather”のロゴは、非常に硬質で加工が難しいプラチナ粉を用いた高蒔絵(たかまきえ)で描かれており、深い青の漆ダイヤルと美しいコントラストを織りなしている。ケース径37.4mm、厚さわずか8.1mmのPt950ケースには、信頼性の高い手巻きメカニカルムーブメントことCal.6890が搭載されている。クレドールが追求する繊細な美しさ、審美性がダイヤルに見事に表現されたこのモデルは、550万円(税込)で販売され、世界限定25本(うち国内15本)が用意される。
ロコモティブ
最後に紹介するのは、1979年にジェラルド・ジェンタがデザインしたロコモティブの新たなバリエーション、Ref.GCCR995である。このモデルこそ、クレドールが持つ国籍にとらわれない柔軟性を象徴する存在と言える。内藤氏は、「ロコモティブがひとつの例ですが、日本人以外のクリエイターも参画できるのがクレドールの特徴」と語る 。ブランド名自体にフランス語のような響きがあり、日本という背景に依存せず、人類が普遍的に求める美しさを目指す姿勢が、このジェンタによる独創的なデザインの継承に現れているのだ。
本作はDawn Blue(ドーンブルー)をテーマに、夜明けの空を思わせるブルーグレーのダイヤルを採用。ジェンタによってもたらされたDNAであるアイコニックな六角形のベゼルに呼応するように、ダイヤルには複雑な六角形の幾何学模様が施されている。ケースとブレスレットには、ステンレススティールよりも30%軽量で耐傷性・耐食性に優れたブライトチタンを採用。ケース径38.8mmに対し、厚さは8.9mmと非常にエレガントなフォルムを維持している。ムーブメントには専用の薄型自動巻きCal.CR01を搭載し、価格は198万円(税込)となっている。
ファースト・インプレッション
今回のWatches & Wondersへの初出展において、クレドールが示したメッセージは明快だった。それは、グランドセイコーが精度や視認性などの時計としての実用面での機能価値を追求してきたのに対して、クレドールは精緻な装飾や審美性を極限まで追求しているということである。グランドセイコーが日本の文化や物語を入り口にファンを広げてきたのに対し、クレドールは「人類が共通で求める美しさ」をその核に据えている。フランス語を語源とするその名が示す通り、クレドールは国境を超えた美を目指しているのだ。内藤氏は僕達に、「日本に惹かれない外国の人であっても、美しいものには関心がある。そうした層をクレドールで開拓したい」と語った。この言葉は、ブランドが目指している新たな地平を象徴している。
なお現在、クレドールはその特性上生産本数が限られるため、海外の高級店から「商品が足りない」と声が上がるほどの反響があったという。
「美しければそれを愛でることに価値がある」。この自由な美の追求こそが、クレドールを真に国際的なラグジュアリーブランドへと押し上げるエンジンとなるだろう。
Photographs by Shoichi Muramoto, Yusuke Mutagami
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