trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Hands-On ハミルトン カーキ フィールド メカニカル 36mm ― ヴィンテージミリタリーの名作が帰ってきた

アメリカ建国250周年を祝し、ハミルトンは自らの歴史を振り返り、そのなかでもっとも伝説的かつ希少なツールウォッチのひとつを復活させた。

今年、アメリカ合衆国は独立宣言の署名から250年という節目を迎えた。2世紀半にわたる歴史を振り返るこのタイミングで、アメリカにルーツを持つハミルトンもまた、自らの過去を掘り起こしている。ただし、同ブランドが着想を得たのは1770年代ではない。舞台は1970年代に遡る。スイスを拠点とするハミルトンが今回発表したのは、カーキ フィールド メカ 36mmだ。本作は1970年代にアメリカ空軍のナビゲーターズウォッチとして製作された名作、ハミルトン FAPD-5101 Type 1を、ほぼ忠実に再現したモデルである。当時のサイズ感を忠実に再現した36mmケースを採用し、ヴィンテージ・ミリタリーウォッチの空気感を現代に蘇らせている。

hamilton boutique

ペンシルベニア州ランカスターにあるハミルトンのブティック。かつては時計職人を育成するボウマン・テクニカル・スクールだった建物である。

 FAPD-5101 Type 1は1970年9月に製造されたモデルで、ベトナム戦争時にアメリカ空軍の兵士が使用するナビゲーターズウォッチとして作られたものだ。ハミルトンは20世紀を通じてアメリカ軍向けに数多くの時計を製造してきたが、このモデルは同時代のほかの軍用時計よりもわずかに大きく、そのぶん視認性に優れていた点で特別な存在であった。現代的ともいえるサイズ感と希少性を備えていることから、現在でもヴィンテージウォッチのコレクターたちから高く評価されている。

ADVERTISEMENT

アメリカにおけるハミルトンのルーツ

この新作の発表は、メモリアルデーの週末を目前に控えたタイミングで、ハミルトンの故郷ともいえるペンシルベニア州ランカスターで行われた。ハミルトンは1892年、この地で創業している。当時、ランカスターでは時計産業を根づかせようとする動きが数年にわたって続いていた。急成長する鉄道産業において高品質な時計への需要と可能性を見出した地元の起業家たちが、その商才を結集して立ち上げたのが、のちにアメリカでもっとも成功した時計メーカーのひとつとなるハミルトンだったのである。1969年に工場は閉鎖され、生産拠点はスイスへ移されたものの、ハミルトンの歴史はいまなおランカスターの街にはっきりと息づいている。それどころか、近年ではその存在感があらためて見直されつつある。

hamilton boutique
hamilton boutique
hamilton boutique

ハミルトン ブティックに置かれたゲストブック。ランカスターの時計製造の歴史にまつわる、個人的な思い出やエピソードが綴られている。

 かつてハミルトンの工場だった建物は、現在もその姿を残している。いまではアパートメントやコンドミニアムとして使われているが、それだけを聞くと歴史が上書きされ、忘れ去られてしまったように感じるかもしれない。しかし実際は、まったくその逆だ。古いレンガ造りの建物に設けられた時計塔はいまも健在で、きちんと時を刻んでいる。館内の随所には、ハミルトンの歴史を伝えるポスターや銘板が掲げられている。さらに、この建物の住人たちは快く見学ツアーを行い、自分たちの住まいに刻まれた時計づくりの歴史を誇らしげに紹介してくれるのだ。

hamilton factory

目を向けるべき場所さえ知っていれば、ランカスターの街にはハミルトンの歴史を物語る痕跡がすぐに見つかる。

hamilton factory

ハミルトンの旧工場棟に設けられた時計塔は、現在もその姿を残している。

 そこから数ブロック離れた、歴史的な地区の中心部にあたるデューク・ストリートには、ハミルトンの旗艦ブティックがある。店舗が入るのは、かつてボウマン・ビルとして知られた建物だ。この場所は以前、時計学校として使われ、その後はジュエリーショップとして営業していた。そして2024年、ハミルトンがこの空間を引き継いだのである。現在、このブティックは街のランドマークとなっており、新作カーキ フィールド メカ 36mmの発表イベントのように、地域に向けて扉を開く特別な催しも定期的に行われている。

ADVERTISEMENT

名作の復活

時計そのものは、期待できる限り忠実な復刻モデルだといえる。ケースのプロポーションはオリジナルと同じで、ダイヤルのレイアウトも踏襲されている。さらにハミルトンは、当時の極めて希少な民生モデルに使われていたヴィンテージロゴまで採用した。もちろん、現代的な改良やアップデートも施されている。その代表的な要素が、ETA C07.701をベースとする手巻きムーブメントであるCal.H-50の搭載である。約80時間のパワーリザーブを備える実用的なムーブメントだ。ステンレススティール製のケースは、ヴィンテージモデルのようなリン酸塩皮膜処理、すなわちパーカライズ処理こそ施されていないものの、ほぼ同じ印象のマットな仕上げを持ち、100m防水も確保している。

Hamilton Khaki Field Mechanical 36mm

1970年製のオリジナル、FAPD-5101 Type 1と、新作カーキ フィールド メカ 36mm。

 カーキ フィールド メカ 36mmには通常モデルに加え、アメリカ建国250周年を記念した限定バンドル仕様のカーキ フィールド メカ 250も用意される。日本ではまず1000本限定のジャパン エディションが展開され、その後通常仕様が販売される予定だ。後者には、“Date APR 2026, 1 of 1776”という特別なケースバックの刻印が入り、追加のレザーストラップと折りたたみ式のキャリングポーチが付属する。そしていずれのモデルも、生産されるのは2026年のみである。とはいえ正直に言えば、ここまで完成度の高い時計が、何らかのかたちで通常ラインに戻ってこない未来を想像するのは難しいだろう。

Hamilton Khaki Field Mechanical 36mm
Hamilton Khaki Field Mechanical 36mm
Hamilton Khaki Field Mechanical 36mm

 36mm径のケースと、柔らかなオリーブドラブグリーンの平織りコットン製NATOスタイルストラップの組み合わせによって、この時計は実に控えめな存在になる。一度手首に着けて日常を過ごし始めると、自分が時計を着けていることをすぐに忘れてしまうほどだ。しかし、それこそがフィールドウォッチ、あるいは本作の場合でいえばナビゲーターズウォッチに求められる性質である。必要不可欠な道具と同じように、自らの役割を確実に果たし、使い手が本来やるべきことに集中できるようにする。必要なものはすべて備えており、余計なものは何もない。

Hamilton Khaki Field Mechanical 36mm

 ストラップについても触れておきたい。これは本当に出来がいい。ファブリックは柔らかく快適で、同系色のオリーブグリーンのレザーアクセントが効いている。18mmのラグ幅に合わせられたこのストラップは、時計全体が手首の上で主張しすぎない印象を支えている。そして、それこそが本作の狙いなのだ。価格は通常モデルで725ドル、にジャパン エディションも9万9000円(税込)と手に取りやすく、カーキ フィールド メカ 36mmのような時計は、劇的な存在感を放つステートメントピースではない。目指しているのはクリーンで、クラシックで、気負いのない時計である。ツールウォッチに求められる要素を純粋に抽出した一本であり、シンプルで、そしてほとんど完璧といっていい。


著者について

トロイ・バーモア(@troybarmore)は、ニューヨークを拠点に活動するラグジュアリーウォッチ、アイウェア、ヘリテージグッズのスペシャリストであり、ジャーナリスト、フォトグラファーでもある。HODINKEE、Revolution Magazine、Chrono24 Magazineをはじめ、数多くの時計メディアに寄稿している。