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アイコンがアイコンに挑むとどうなるか? ミッキーマウスほど有名なアニメキャラクターは存在しないのと同様に、時計の世界でもロイヤル オーク(およびそのほか数百もの時計)のデザイナーであるジェラルド・ジェンタほど有名なデザイナーは存在しない。彼は自身の名を冠した時計を数多く生み出し、そのなかには贅沢な宝石を使ったハイコンプリケーションや超薄型リピーター、そして最も有名なのはピンクパンサーからディズニーを有名にしたあのマウスまで、あらゆるアニメのキャラクターウォッチが含まれる。
1990年代の初代レトロ ファンタジー ミッキー。
“有名”というのも、ジェンタのキャラクターウォッチは、少なくともスイス人にとっては悪名高いことでも知られていたからである。今日、時計のデザインで不道徳すぎるとみなされるタブーはないが(例えば、両性愛のマーメイドが描かれたユリス・ナルダンのダイヤルなど)、1984年、彼がジュネーブのモントレ・エ・ビジュー(SIHHの前身で、3月末に開催されるウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブの前身)で最初のキャラクターウォッチを発表したとき、軽薄だと展示会の主催者を怒らせ、ジェンタにブースのショーウィンドウから時計を撤去するように伝えたそうだ。彼は憤慨して展示会から完全に撤退した(ある意味、彼を完全に責めることはできない。ピンクパンサーの時計を不快に感じるのだったら、どんな時計が不快でないというのだろうか。本当の理由はわからないが、例えば、パンサーが誰かの父親を食べてしまったため、時計がそれを思い出させるかもしれないからなのか)。以来、ジェンタは展示会から姿を消してしまった。
ジェンタは1996年に会社をシンガポールのアワーグラスに売却し、2000年にはブルガリに拾われた。ブルガリは以来、ムーブメントとデザインを積極的に活用し、高級時計の実力者としての地位を確立しようとしている(この使命は、超薄型時計製造への多額の投資により、現時点でほぼ達成されている)。アリーナ レトロ ミッキー(正式名称はジェラルド ジェンタ アリーナ レトログラード スマイル ミッキーマウス ディズニー)は2021年8月に発表され、豪華な宝飾時計や本格的な薄型高級時計の多いブルガリやジェンタのカタログのなかでこの時計は、変わり種として異彩を放っている。
新作発表時の取材で述べたように、これは特定のジェンタのミッキーマウスウォッチをコピー&ペーストしたものではない。ミッキーの描写はほとんど同じで、今でも思わず笑みがこぼれてしまうほどだ。コインエッジの側面と凸型ベゼルが目立つアリーナケースは、漫画に出てくるような球状の質感で、ミッキーとの相性は抜群だ。オリジナルのレトロミッキーウォッチと同様、ミッキーの片方の針はレトログラード分針で(ゆえにレトロ)、ジャンピングアワーのための窓がある。
私はこの時計を実際に見て気に入ってしまった。今までオリジナルのジェンタのキャラクターウォッチを実際に見る機会がなかったが、期待に違わぬ粋な時計だった(読者の皆さん、ヒーローに会うのを怖がらないでほしい)。ひとつだけ難点があるとすれば、ミニッツトラックの配置だ。ダイヤルの上半分を占めているため、毎時10分から15分の間、ミッキーの腕が顔を部分的に塞いでしまうのだ。初代レトロファンタジー ミッキーマウスウォッチでは、ジェンタはミニッツトラックがダイヤル右側に沿って走り、窓が9時位置にあるレイアウトと本モデルのレイアウトの両方を使用していたので、ブルガリは少なくとも歴史を尊重したということになる。細い腕というのも利点である。レトロなポパイの時計であれば、深刻な問題になるかもしれないが、ミッキーのパイプのように細い腕はダイヤルのレイアウトに差し障りないことを意味しているからだ。
果たして日常使いできる時計だろうか? もし、この時計があなたの好みに合うなら、そうしない理由はないだろう。アリーナ レトログラード スマイル ミッキーマウス ディズニーの直径は41mmだが、その分、ダイヤルの面積が広くなっており、神聖な38mmを数mm超えるような時計は、キャラクターウォッチと呼ぶにふさわしいかもしれない。この時計は、時計製造の歴史において、ある種のクラシックなステータスを獲得しているのだ。
ジェラルド ジェンタ アリーナ レトログラード スマイル ミッキーマウス ディズニーは限定モデルで、すでに完売。