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Hands-On パテック フィリップ ノーチラス50周年記念コレクション Ref.5810GとRef.5610Pを実機レビュー

ときに、パテック フィリップですら我々を驚かせることがあるのだ。

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実のところ、ノーチラス50周年記念コレクションはどんなキャリバーやケース素材、フォーマットであろうと、売れることはほぼ確実だったと言っていい。これは今日の時計業界におけるパテック フィリップの圧倒的な存在感と、一体型ブレスレットウォッチへの需要の高さを示している。そしてノーチラスはロイヤル オークとともに、ずっと以前にその潮流をつくり、今なおこのカテゴリーの頂点に君臨し続けている。いや、純粋に需要という観点だけで見れば、ノーチラスは需要という点では、時計全体のなかでも頂点にいるかもしれない。私が知る限り、最も影響力のある人々が最も熱望する1本なのだ。それが良いとか悪いとか言っているのではないが、それが現実なのだ。とはいえノーチラスの40周年は私にとってはやや期待外れだった。なぜならノーチラスは我々の多くにとって“特別な時計”であり、私自身も長年それに魅了されてきたファンだし、これからもそうあり続けるだろうからだ。今日どれだけ妙な人たちが着けていようとも、その思いは変わらない。

1980年頃のRef.3700G、2015年頃のRef.5711R、2024年頃のRef.5811G。そう、私はノーチラスが大好きなのだ。

 ご存じの方も多いと思うが、私が初めて購入したパテック フィリップはRef.3940Gだった。では2本目は? ノーチラス Ref.3700Aだ(ポール・ブトロスとの共同購入で1万8000ドル/日本円で約280万円で手に入れた。ちなみに彼はさらに安い値段で222を購入していた😵‍💫)。その数年後、きわめて希少なRef.3700Gを購入した(親しい友人でありメンターでもある人物がずっと所有することを夢見ていた時計だったため、彼が会社を売却した際に彼へ売却した)。そして2015年、ノーチラスがまだショーケースに並んでいたころ、私は初めて現行モデルのRef.5711をローズゴールドで購入した。そして2016年にGQが取り上げたパテック フィリップの朝食会を含め、可能な限りあらゆるイベントに誇らしげに着けて行った。そう、私はこの時計が本当に好きなのだ。しかしそのすべてが好きというわけではない。

40周年記念の2本のノーチラス。どちらもバゲットカットダイヤモンドのインデックスと、ダイヤル中央に大きな“1976-2016”の刻印が入っている。これはいただけない。

 2016年当時、ノーチラスに対する熱狂はまだそれほどではなかった。だからといって、一体型ブレスレットウォッチのファンがノーチラスに注目していなかったわけではなく、間違いなく我々は強い関心を寄せていた。そして40周年には、率直に言えばRef.5711の後継機も含めて、とてつもないものを期待していた。しかしそれは実現しなかっただけでなく、我々が目にしたのは、ダイヤルに大きな40周年記念の刻印とダイヤモンドをあしらった2本の時計だった。比較的希少ではあるが、これらは私が生きているあいだにつくられたノーチラスのなかで、おそらく最も好みではないモデルだ。だから今年がコレクションの50周年だとわかっていても、パテック フィリップがどんな記念モデルを用意するのか、あえて考えないようにしていたほどだ。だがこの心の壁は2026年4月14日、中央ヨーロッパ時間の午前1時15分に、一瞬にして純粋な喜びに変わった。


そして50周年記念コレクションが登場し、すべてが許された

シンプルかつ力強く、新しい50周年記念ノーチラスはデイト表示と秒針を排した。

 その舞台はHODINKEEの作戦司令室。Watches & Wondersが大手ブランドの大部分の発表を午前9時ではなく深夜0時に行うと決めて以来(ところで、これには本当に感謝している😵‍💫)、我々が毎年占拠する会議室でのことだ。HODINKEEチーム全員がそこに集まり、それぞれの新作を吟味し、リアルタイムでフィードバックを交換し、誰が何を書くかを決めていく。そうこうしているうちに、すぐに妙なテンションになっていく。パテック フィリップの新作が発表されたとき、ノーチラス50周年記念コレクションを見つけ出すまでに少し時間がかかった。というのもノーチラスの発表は、2026年後半に持ち越されるだろうというのが、チーム内での共通認識だったからだ。我々は間違っていたが、その間違いを大いに歓迎した。ティエリー・スターン氏とパテック フィリップのチームがこの半世紀の節目に何を用意したかを理解した瞬間、我々は声をそろえて「KABOOM(ドカーン!)」と叫んだ。彼らはやってくれた。本当にやってのけたのだ。

こちらがノーチラス50周年記念コレクション Ref.5810Gだ。とにかく素晴らしい。

 マークがIntroducing記事を書き始めたとき、私は(文字どおり)マイクを掴み、SNS用のリール動画を撮影していた。その投稿を見ればわかると思うが、私はリアルタイムで何が起きているのかを必死に理解しようとしていた。パテック フィリップは3本の新しいノーチラスを発表したが、そのうちの2本は文句のつけようがないほど完璧だ。いや、完璧というのは言い過ぎかもしれないが、本当に素晴らしい出来栄えで、私のような男が夢見てきたものそのものだ。まずRef.5810Gは、Ref.5811G(現行のカタログモデル)と同じようなサイズ感を受け継ぎ、ホワイトゴールド(WG)製の41mmケースを採用している。しかし厚さは8.2mmではなく、わずか6.9mmになっている。それに加えて、秒針とデイト表示がなくなった。ここで特筆すべきは、本作が初代ノーチラス(Ref.3700)のアイデアを取り入れ、オリジナルの形状やスペックを超えるほどにさまざまな要素を削ぎ落としている点だ。オリジナルの時計は厚さ7.5mmで、デイト表示を備えていたが、このRef.5810Gにはそれがない。

 この驚異的な薄さは、パテック フィリップがノーチラスにベースキャリバーの240を搭載したことによって実現した。これはきわめて興味深い選択と言える。このキャリバーは初代ノーチラスにも、その後のノーチラスにも採用されたことがない(ここで言うのはベースキャリバー240のことであり、Ref.3712、Ref.5712、Ref.5740に搭載された派生モデルのことではない)。そこには何らかの理由があったのだろう。もっとも、このムーブメント自体は1977年に発表されたもので、Ref.3700とほぼ同時代の存在でもある。その結果として本作は、現代の基準ではどこか古典的でありながらも強い魅力を備えた“いかにもパテック フィリップらしい”キャリバーを、まさにパテック フィリップらしい時計のなかで味わえる1本となっている。

Cal.240は1977年からパテック フィリップで採用されてきたが、なぜかノーチラスに搭載されることはなかった。

 Cal.240のイエローゴールド製マイクロローターには、“50 - 1976-2026”という小さな刻印がある。これは10年前に我々が手にしたものよりはるかに優れている。Cal.240の仕上げは以前と変わらず、きわめて素晴らしいもので、それ以上でもそれ以下でもない。ただしこのキャリバーが技術的な観点から見て、Ref.5811Gに搭載されているキャリバー(26-330 S C)に著しく劣っているという点は指摘しておくべきだろう。

Ref.5811Gに搭載されたキャリバー26-330 S Cは薄さを除けば、ほぼすべての点でRef.5810Gの240より優れている。

 そのキャリバーはRef.5711の生産途中で導入され、Ref.5811で本格的に採用されたものだ。ハック機能に加え、摩耗を抑える革新的な巻き上げシステムの“デクラッチ”機能、秒針のブレを低減するLIGA製の歯車、そして損傷を気にすることなくいつでも調整可能なデイト表示を備えている。

 誤解のないように言えば、この49年前のムーブメントをノーチラスに採用したことで、コレクターにとって特別な限定モデルが生まれたのは事実だ。しかしそれは(一部のインスタグラマーが示唆するように)量産型ノーチラスに搭載される最新世代の優れたキャリバーに取って代わるものではない(また、そうあるべきでもない)。確かにヴァシュロン・コンスタンタンが今年披露したような新開発の超薄型キャリバーが、この記念モデルに搭載されていたら面白かったとは思う。しかしそれは本質的な問題ではない。Ref.5810Gにおいて重要なのは、ムーブメントのスペックや仕上げではなく、手首に載せたときの感覚と、それが着け手に与える体験だからだ。その点において、Ref.5810Gは最高の1本に仕上がっている。

要するに、本作は新たな量産モデルとして考えればまったく理にかなっていない。しかしパテック フィリップ ノーチラスの50年を称えるトリビュートとして捉えれば、これ以上ないほど筋が通っている。

5810/1G-001

5810G-001

 Ref.5810Gにはふたつの仕様が用意されている。ひとつはWG製ブレスレット仕様(5810/1G-001)で2000本限定、もうひとつはコンポジットストラップ仕様で、バゲットカットダイヤモンドのインデックスを備えた1000本限定(5810G-001)だ。注目を集めるのは間違いなくブレスレットモデルだろうが、ダイヤモンド仕様を割り当てられた人が落胆することもないはずだ。実際、本作の装着感は際立っている。ラグ・トゥ・ラグはオリジナルのRef.3700に近く幅広で、“ジャンボ”の名にふさわしい仕上がりだ。一方で、その驚異的な薄さが快適性をさらに高めている。私は15年近くにわたり複数のノーチラスを所有してきたが、装着感に不満を抱いたことはただの一度もない。むしろ、どのモデルも着け心地の良さが印象に残っている。

幅広く、薄く、そして完璧だ。

 もしパテック フィリップがこの2種類のRef.5810Gだけで発表を終えていたとしても、私はこの50周年を成功と呼んだだろう。しかし彼らはそこからさらに踏み込み、きわめて特別な1本を用意していた。

左がRef.5810G、右がRef.5610P。

 Ref.5610Pは時・分表示のみという構成と、(Cal.240による)6.9mmの薄さを継承しながら、ケースサイズを完璧な38mmへと縮小している。ケース素材にはWGではなくプラチナを採用。これは1980年代のノーチラス Ref.3800(および5800)を想起させる。近年、小径時計への関心が高まるなかで、この系譜の人気も再び上昇している。(印象的なサテン仕上げのベゼルを備えた)フルプラチナ製ケースが、直径38mmという控えめなケースサイズで仕上げられており、手首の上でスペック以上の存在感を放つ。個人的には、このRef.5610PこそがWatches & Wonders 2026最大のハイライトだった。今年は全体としても豊作の年だっただけに、その印象はなおさら強い。

Ref.5610Pのダイヤモンドはケースの左側にセットされ、プラチナ製であることを示している。

これは意味のある薄さの時計だ!

 Ref.5610PとRef.5810Gのブレスレットはどちらも現代的な構造で、両側にエクステンションリンクを備えたバタフライクラスプが装着されているのも好印象だ。興味深いのは、この古いキャリバーを使用することに加えて、薄型ケースの採用により、3モデルすべての防水性能が100mからわずか30mに低下していることだ。貴金属製の限定モデルであるパテック フィリップを着けて泳ぎに行く可能性はかなり低いので、これは大きな問題ではない。しかし水中スポーツウォッチという本来のコンセプトを考えれば、批判の余地があるかもしれない。とはいえ、私自身はそれを大きな欠点とは感じない。なぜなら、これらの時計は今年発表されたほぼすべての時計と比べて本当に素晴らしい出来栄えであり、40周年記念モデルと比べれば、まったく別次元の素晴らしさだからだ。

ダイヤルは光の加減によって、ライトブルーからほとんどブラックに近い色合いまで変化する。

 WG製のRef.5810Gが1526万円、プラチナ製のRef.5610Pが1832万円(いずれも税込)だ。まるで価格が問題であるかのように言ったが、これらの時計にとって価格は重要ではない。参考までに言うと、最近の他ブランドや独立時計師の時計と比較すれば、この価格は決して法外なものではない。

それにしても、この5610Pは私の手首によく似合うと思わないか?

 しかし繰り返すが、こうした時計を希望する人は、このクラブの一員になるためならどんな価格でも支払うだろう。顧客側と正規販売店側の両方の友人から、需要は並外れていると聞いている。そして率直に言って、これらのモデルに関しては、それは当然のことだろう。Watches & Wondersのポッドキャスト初日にも言ったように、パテック フィリップはまさにこの分野で圧倒的な成功を収めたのだ。

 しかしそれ以上に、注意深く見ていればわかるように、近年のパテック フィリップは、ラウンドムーブメントを搭載したスクエアケースのモデルを発表する一方で、きわめて完成度の高い時計も着実に生み出している。例えばA、B、Cのようなモデルは、同ブランドが今後どの方向へ進もうとしているのかを示す前向きな兆候と言えるだろう。そして生粋の時計好きとして言わせてもらえば、パテック フィリップが全開で動いているとき、時計業界はずっと面白くなる。今回の新作を見る限り、その流れは再び始まりつつある。それも、多くの人が思っていたより早く。

 パテック フィリップ ノーチラス50周年記念コレクションの詳細についてはこちらから。

 そして、コレクション最後のピースである8日巻きのトラベルクロックについても、近々実機レビューをお届けする予定だ。

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