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今後数週間にわたってオークション情報をお届けする予定だが、まずフィリップスに注目する価値があるだろう。というのも、フィリップスは前年比売上高で業界をリードし続けているからだ。昨年、このオークションハウスは時計部門で過去最高となる2億9000万ドル(日本円で約460億円)以上を売り上げ、5年連続で2億ドル(日本円で約320億円)以上の売上を記録している。ここ数年で市場は(個人的には少なくとも2回は)変化したが、F.P.ジュルヌやインディペンデントブランド(そう、懐中時計だ)の市場が成長しているにもかかわらず、フィリップスのトップロットは依然としてパテック フィリップが占めている。
フィリップスは春に開催する各オークションで、重要なパテック フィリップを出品する。そのどれもが、世界トップクラスのコレクションの頂点に立つ可能性を秘めた時計だ。いつものように注意喚起するが、まだこれらの時計を実見したことのない入札検討者は、可能であれば必ず実物を直接確認することをおすすめする。
ふたつのリューズと南米大陸クロワゾネダイヤルを備えたパテック フィリップ Ref.2523 ワールドタイム
まず、ジュネーブで5月9日午後2時(日本時間で同日午後9時)に出品されるスターピースは、1953年製のふたつのリューズと南米大陸クロワゾネダイヤルを備えたパテック フィリップ Ref.2523 ワールドタイムだ。Ref.2499やRef.1518の希少なバリエーション(そしていくつかのリピーター)を除いて、このふたつのリューズを備えた時計は、その驚くほど角張ったラグと、ダイヤル中央に広がる巨大なオープンキャンバスによって、多くのコレクターにとって聖杯級の存在だ。希少性が高く、入手困難で垂涎の的である一方で、研究、理解、体系化できるほど十分な数が出回っている。希少すぎたり難解すぎたりすると、学者以外には理解しにくく(そして学者でさえ、記録を破るだけの資金を持っていることは希だ)、しかし逆にありふれすぎていると面白みがなく、次の機会を待つことになる。そこに時計の美しさが加われば、ハイエンドな収集品にとって完璧な条件が揃うことになる。これは今回紹介する3本すべてに言えることだろう。
Photo courtesy Phillips
フィリップスは、ふたつのシリーズにわたる既知のRef.2523のすべてを詳しく解説しているが、南米地図が描かれたバージョンがオークションに登場するのは今回が初めてであり、最後に目撃されたのは38年も前のことだ。とりわけ現在の市場においては、希少な時計がこれほど長く人目に触れずにいたこと自体、ほとんど一生に等しい時間と言えるだろう。Ref.2523はこれまでに推定25本から36本しか製造されていないが、パテック フィリップ・ミュージアムがそのうち4本を所蔵している。当時の製造が困難だったというよりは、何らかの理由で当時あまり人気がなかったのだが、それがその希少性を高める一因となっている。
ユーラシア大陸や北米大陸の地図はやや混雑した印象を与えるかもしれないが、ギヨシェ装飾をあしらったダイヤルは素晴らしいものの素朴だ。一方このモデルでは、南米大陸とそのすべての国々が、より小さく美しいさまざまな色調のエナメルで描かれており、外周には船や魚、波といった装飾もあしらわれている。もうひとつの個体は知られており、写真も撮影されているが(1997年発行の絶版本に掲載)、コレクターのあいだでは3本目となる南米地図が描かれたピンクゴールド(PG)製のRef.2523が存在するという噂がある(私も長年耳にしてきた噂だ)。もしそれが実在したら、一体いくらの値がつくのだろうか。2019年、ソリッドブルーエナメルとゴッビ・ミラノのサインが入ったPG仕様がアジアで販売された時計の最高額記録となる900万ドル(当時のレートで約9億8000万円)弱を記録した(市場のブームの前)。それを考えると、今回のバージョンは推定落札価格が500万スイスフラン(日本円で約10億円)以上だが、その価格をはるかに上回る可能性がある。
フィリップスは(当然のことながら)ケースから取り出したダイヤル、ムーブメント、ケース、そしてホールマークの写真を多数掲載しているが、これらはこのような時計を評価するうえで不可欠なものだ。なかでも最高の写真はエナメルの裏側を写したもので、そこにはムーブメント番号が金属に刻まれており、これがこの時計にふさわしい正しいダイヤルであることを保証している。繰り返しになるが、これほどの金額を費やすのであれば、必ず実物を見るか、信頼できる誰かに依頼して見てもらうべきだろう。ダイヤルは素晴らしい状態で、豊かなパティーナを備え、一部のクロワゾネダイヤルのインデックス付近に見られるような(よくある)明らかなひび割れは見当たらない。ケースはRef.2523に求められるダイナミックな形状を保っており、以前我々が取り上げたユーラシア大陸ダイヤルを備えたRef.2523よりも力強い印象を受ける。
ファーストシリーズのPG製パテック フィリップ Ref.2499/フィリップス 香港より
Photo courtesy Phillips
次に香港では、ヴィシェ社製ケースを持つファーストシリーズのPG製のRef.2499が、この地域で初めてオークションに出品される。製造されたRef.2499は全部で349本存在するが、特徴的なケースと、Ref.1518を彷彿とさせる角型プッシャーを備えた“ファーストシリーズ”は50本に満たない。そのうち、ヴィシェ社製ケースを持つPG製モデルはわずか4本のみだ。このケースはのちのウェンガー製ケースに比べて、より長く爪のようなラグ、より小さな直径、そしてフラットなケースバックを特徴としている。この個体は、2014年にクリスティーズで開催されたパテック フィリップ175周年記念オークションで最後に販売されたもので、ケースには英国のホールマークが刻印され、km表示のタキメーターと初期の外周にレイルウェイトラックを備えている。
Photo courtesy Phillips
Photo courtesy Phillips
Photo courtesy Phillips
それにしても、特にヴィシェ社製ケースを備えているファーストシリーズのRef.2499は、まさに芸術品だ。確かに直径は少し小さいが、そのラグは巨大できわめて複雑な造形をしている。ケースの色合いは、次に紹介する時計(もう1本のローズゴールド製パーペチュアルカレンダー・クロノグラフ)よりも少し赤みが薄いように感じるが、ホールマークはくっきりとしている。ダイヤルも素晴らしく、かなりシャープな印象だ。もし保護ラッカー層がクリーニングされていたとしても、ダイヤルにはまだ細かい質感があり、明らかなサテン仕上げや大きな欠けのある隆起したエナメルテキストも見当たらないので、それはかなり前に軽く行われたに違いない。推定落札価格は300万ドルから600万ドル(日本円で約4億7000万から9億5000万円)で、前回の約330万ドル(日本円で約5億2000万円)の落札価格と比較される。フィリップスの推定落札価格は常に(時には滑稽なほど)控えめであり、手数料込みの価格ではなくハンマープライスを基準に設定する傾向があるが、高額商品になるとより現実的な数字になってくる。個人的には、上限かそれを少し上回るあたりでの落札を予想するが、銀行口座にゼロがいくつも並ぶような人々の気まぐれは決して予測できないものだ。
ヴィシェ社製ケースを持つPG製のパテック フィリップ Ref.1518/フィリップス・ニューヨークより
最後に紹介するのは、ニューヨークで出品される(推定落札価格ではおそらく最も低い)オークション市場初登場のPG製Ref.1518だ。Ref.1518(世界初の量産型パーペチュアルカレンダー・クロノグラフ)は281本が製造されたが、そのうち18KPG製はわずか58本のみだった。そのうち15本は垂涎の的であるサーモンダイヤルとの組み合わせ“ピンク・オン・ピンク”だが、もし状態の良くないピンク・オン・ピンク(例えば、昨年のフィリップス“Decade One”オークションに出品された個体は個人的には好みではなかった)と、この個体のような“プレーン”なシルバーダイヤルを持つミュージアム品質の逸品を競うことになったら、私は迷わず後者を選ぶだろう。
オークション市場に初登場するパテック フィリップ Ref.1518。Photo courtesy Phillips
Ref.2499と同様、このケースもヴィシェ社製であり、素晴らしい出来栄えだ。実際に時計を見た人によると、ケースにはきわめて鮮明なホールマークが残っている。ケースのエッジ、とりわけラグは、長年の使用による細かな傷やへこみが見られるものの、きわめてシャープな状態を保っている。磨き直したくなる衝動に駆られたであろう年月を思えば、これは驚くべきことだ。ダイヤルは一見すると荒れているように見えるかもしれないが、(写真で見る限り)まったく手が加えられていないようだ。ここで注目すべきは、“GENÈVE”の“E”の上にあるグレイヴ・アクセントのような細部だけでなく、日付やインダイヤルの窓周りの切り込みといった目立つ部分のシャープさだ。それらはすべて鋭くクリーンであり、さらに言えば、角やエッジ、そしてダイヤル上の傷や小さなくぼみがある部分にはグレーやグリーンのような変色も見られる。
ステンレススティール製のパテック フィリップ Ref.1518、ムーブメント番号508'474(現存が確認されている4本のうちの2番目)。 Photo courtesy of the collector
これは、ステンレススティール製のRef.1518 “No.2”を彷彿とさせる。あの個体の銀メッキダイヤルは一見ひどい状態に見えるが、これは保護ラッカーにひび割れが生じ、その下の銀が(良くも悪くも)酸素によって酸化しているのだ。このことから、ダイヤルが手つかずの状態(あるいは少なくとも長期間触れられていない状態)であり、摩耗したり“クリーニング”されたりしていないことがわかる。比較すればその違いは明らかだろう。手つかずのRef.1518がどのようなものかを知りたければ、このフィリップス・ニューヨークに出品される時計は非常に優れた見本であり、120万ドルから240万ドル(日本円で約1億9000万から3億8000万円)という推定落札価格にふさわしいと感じる。
これらの時計に市場がどう反応するのか、非常に興味深い。これらは歴史的な権威を持ち、やや学術的な時計を好む、昔ながらのコレクター向けの時計だろう。市場のトレンドはインディペンデントブランド、特にF.P.ジュルヌへと向かっており、それは多くの点で理にかなっている。彼らは現役の時計師であり、入手が困難で、つながりを感じ、サポートできるという感覚がある。またポール・ニューマン デイトナのように、より広い世界に向けたわかりやすいステータスシンボルでもある。あなたの裕福な友人たちは、今やRef.1518よりもF.P.ジュルヌの方をよく知っているかもしれない。
だが、もしあなたが20世紀半ばのウォッチメイキングを代表するブルーチップを集め、自分だけの歴史的ミュージアムを築こうとしているのであれば、この3本のパテック フィリップは依然として最有力候補だ。
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