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春のオークションシーズンが、あっという間にやってくる。皮切りとなるのはサザビーズの香港オークション(カルティエが大量に出品される)で、モナコ・レジェンド・グループのオークションより1日早く開催される。しかし4月25日と26日に開催されるモナコ・レジェンド・グループの春季オークションは、今シーズンで最も興味深く、多彩なヴィンテージウォッチを中心とした内容になることが期待されている。もちろん、すべてがヴィンテージというわけではない。オークションは、バンフォードによるブラックアウト仕様のGMT(オークションハウスを運営するパルミジャーニ家が好んでいるようだ)、リシャール・ミルのRM 35-02 ラファエル・ナダル、F.P.ジュルヌのレペティション・スヴラン、そして数えきれないほどのパテック フィリップ Ref.5004が出品され、刺激的なラインナップで幕を開ける。
全288ロットが出品される。トップロットを取り上げるのは少し陳腐に感じられるかもしれない(誰もがそれらを羨望のまなざしで見つめ、入札できたらと願うからだ)が、市場のハイエンドを牽引しているのが何なのかを検証することはきわめて重要である。そして注意深く見ていないと、今回のトップロットを見逃してしまうかもしれない。一見するとロレックス コスモグラフ デイトナ、例えばタヒチ産マザー・オブ・パールダイヤルと通常の仕様とは異なるインデックスを備えたRef.116509のように見えるかもしれないが、まったくの別物だ。
オークションのロット78は、“FAB 4”デイトナのひとつだ。当時のロレックスCEOであったパトリック・ハイニガー(Patrick Heiniger)氏の指示により製作された4本のみ存在するユニークなプラチナ製ゼニス・デイトナであり、それぞれがハードストーンダイヤル(ターコイズ1本、ラピスラズリ1本、マザーオブパール2本)を備えている。それらはリファレンスがRef.16516であることが特徴で、ロレックスにおけるユニークピースがいかに希少かは周知のとおりだ。このタヒチ産マザー・オブ・パールダイヤルの個体は、フランスの小説家であり脚本家のロマン・サルドゥ(Romain Sardou)氏がフランチェスカ・ゴッビ(Francesca Gobbi)氏と結婚した際に、結婚祝いとして贈られたものだ。これはフランスへの輸入に際して正規販売店網を経由しており、厳密には市販品ということになる。
さらに6時位置のインダイヤルに目をやると、素材が異なるマザー・オブ・パールのスライスであるため、輝き方が違うことにも注目したい。この時計は来歴も明確で、箱と保証書が付属する。前回は2018年にサザビーズで約87万5000ドル(当時のレートで約9900万円)で落札された。今回の推定落札価格は150万〜300万ユーロ(日本円で約2億8000万~5億6000円)だ。そのほかの興味深いロレックスは、推定落札価格が28万〜56万ユーロ(日本円で約5200万~1億円)の“ステリーナ”ダイヤルを備えたRef.6062や、市場初登場のRef.6241 “ジョン・プレイヤー・スペシャル”が出品される。
1本の時計に多くの言葉を費やしてしまったので、ほかのトップロットは手短に見ていこう。私はパテック フィリップのRef.3448が大好きだ。その美学はRef.2497(これについては以前詳しく書いたことがある)よりもはるかに大胆でクリーンだと思う。現存が確認されているドレダイヤルを備えたRef.3448は3本のみで、モナコ・レジェンド・グループが出品するのはそのなかで唯一、夜光針と夜光インデックスを備えた個体だ。過去に何度かオークションに出品されており、着用されてきたものの手入れが行き届いている様子で、ダイヤルの状態も良好だ。予想落札価格は100万ユーロ(日本円で約1億8600万円)以上となっている。ほかのパテック フィリップでは、北米大陸の地図を描いたクロワゾネダイヤルを備えたワールドタイム懐中時計 Ref.605HUは必見であり、予想落札価格は40万〜80万ユーロ(日本円で約7400万~1億4900万円)となっている。
最近この種の時計はきわめて好調で、2024年にはアンティコルムでユニークピースが300万スイスフラン(当時のレートで約5億1600万円)以上で落札されたが、それはあくまでユニークピースだった。そしてもちろん、ステンレススティール製の“タスティ・トンディ”ことRef.1463は常に垂涎の的だ。今回の個体は、ブラウンがかったサーモンカラーへと変化した素晴らしい経年変化を見せるダイヤルを備え、ハゼマン&モナンで販売されたものだ(サインの状態は最高とは言えないものの)。予想落札価格は30万〜60万ユーロ(日本円で約5100万~1億1000万円)である。
そして(わずかに)手ごろで興味深いパテック フィリップとしては、マルコフスキー社製の素晴らしいケースを持つRef.2549/1 “タートル”(予想落札価格5万〜10万ユーロ/日本円で約930万~1800万円)や、ブラックダイヤルを備えたイエローゴールド製のRef.96がある。後者は(わずかに色褪せているが)エベラールのサインが入っている(予想落札価格1万5000〜3万ユーロ/日本円で約280万~560万円)。ケースのエッジはやや甘く、ダイヤルも完璧とは言えないが、それでもとても魅力的だ。
ここで少しカルティエに目を向けてみたい。今回のオークションには、著名なコレクションから重要な時計がいくつか出品されているからだ(サザビーズとは別のコレクションだ)。これは“ホワイト カルティエ”コレクション以来、最も重要なものだと私は考えている。ほかのオークションでの大量出品がカルティエ市場全体にどのような影響を与えるのかは興味深い。そのなかで私の目に留まったのは2本の時計だ。ひとつは1996年製のプラチナ製タンク ア ギシェで、その年に開催されたアンティコルムの“Magical Art of Cartier”オークションのために製作された3本のうちの1本である。
残りのうち1本はエリック・クー氏が所有している。これはオリジナルモデルではないが、この(12時位置にリューズがある)モデルの現代的な表現としては最高のものであり、昨年再発売されたモデルよりもはるかに希少だ。そのため、推定落札価格8万〜16万ユーロ(日本円で約1400万~2900万円)を大きく上回る結果が期待できるだろう。
ホワイトメタルのカルティエ(特にプラチナ製)は、私にとってトップ5に入る時計だ。この1930年代のタンク ノルマルは、オリジナルのプラチナ製9連ブレスレットが装着されており、信じられないほど素晴らしい。もっともオーナーが言っていたように、私の手首には少し小さいかもしれない。贅沢は言えませんよ、と私は彼に伝えた。ブレスレット付きのサントレを生涯で手に入れることはないだろうから、これで十分だ。歴史的な逸品を手に入れるには、あと5万ユーロから10万ユーロ(日本円で約930万~1800万円)ほど足りない。先ほど紹介した個体と本個体のダイヤルの状態(初期のカルティエのダイヤルは総じて状態があまり良くない)はさておき、ケースにエナメルを施したタンク オビュもきわめて興味深い。もう少し手ごろな価格帯では、ローマ数字とブレゲ風の数字を組み合わせた、ふたつのムーブメントを搭載したユニークなサントレ デュアルタイムもある。
ほかにも私の目に留まった高額な時計はいくつかある(ロット5のブレゲ ミニッツリピーター パーペチュアルカレンダーなど)。しかし、ここではいくつかのヴァシュロン・コンスタンタンに焦点を当てたい。このブランドでこれほど高い推定落札価格がつくことは珍しく、驚かされたからだ。コレクターに人気の“ショコラトーン”(チョコレートの一片に見えることからそう呼ばれる)の仕様の異なる2本が出品されている。ひとつは1958年製のトリプルカレンダーとムーンフェイズを搭載したモデルで、当時のヴァシュロン・コンスタンタンのカレンダーウォッチの究極版と言えるものだ(推定落札価格30万〜60万ユーロ/日本円で約5500万~1億1000万円)。
もうひとつはブレスレット仕様のシンプルなモデルで、サファイアインデックスが特徴だ(推定落札価格6万〜12万ユーロ/日本円で約1100万~2200万円)。そして最後に、これまで見たことがないという方もいるかもしれないが、モナコ・レジェンド・グループは1933年にジャガー・ルクルトの許可を得て製造された、おそらく5本しか存在しないヴァシュロン・コンスタンタンのレベルソのひとつを出品する。ヴィンテージのレベルソ全般に言えることだが、ダイヤルの状態は良好とは言えない。しかし、信じられないほど希少できわめてクールな1本だ(そして10万〜20万ユーロ/日本円で約1800万~3700万円と安くはない)。同ブランドは市場でまだ過小評価されているが、今年はいくつかの大物モデルが市場に出てくる予定なので、市場のトレンドを確認する良い機会となるだろう。
もし私が入札するなら、そのほかにも目に留まった風変わりな品々がある。安くはないが、この小さなパテック フィリップのカレ Ref.482はとても気に入っている。プラチナとゴールドのツートンケースに、ベゼルにはサファイアインデックスがセットされており、これもまたマルコフスキー社製だ。最近これをいくつか目にしたが、いつも本当に魅力的で、ラグをつなげるバーデザインが気に入っている。また、このオメガ コンステレーションには驚かされた。ホワイトゴールド製でダイヤモンドインデックスを備え、アラブ首長国連邦の初代大統領であるザーイド・ビン・スルターン・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン(Sheikh Zayed bin Sultan Al Nahyan)氏のサインが入っている。
これは昨年、Omega Forumsで取引されたもののようだ(同様の北朝鮮モデルと一緒だったというから驚きだ)。だが、それがどうしたというのだろう? そのときあなたは買わなかったのだ。今が5000〜1万ユーロ(日本円で約90~180万円)で手に入れる2度目のチャンスだ。また、“ショコラトーン”のアイデアは気に入ったがヴァシュロン・コンスタンタンには手が出ないという方には、オークションの序盤に、より小さなギュベリン製のモデルが出品される。プラチナ製でファンシーラグとダイヤモンドのバゲットインデックスを備え、8000〜1万6000ユーロ(日本円で約150万~300万円)だ。
モナコ・レジェンド・グループが開催する2026年春季オークションの詳細と登録については、こちらをご覧ください。
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