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2026年2月19日、東京国立博物館 表慶館で開催されたシャネル ハイエンドウォッチ コレクション 2026は、シャネルの招待客に向けたイベントとして行われ、HODINKEE JapanとRichesseの読者も特別に参加した。会場では展示鑑賞に加え、スイスにあるシャネルの自社工房G&Fシャトラン(G&F Chatelain)から来日した技術者によるセラミックについてのマスタークラスも行われた。
イベント会場となった東京国立博物館 表慶館。
1階会場。
2階にはドミノに見立てたモノリスが。
会場となった表慶館は、1909年に開館した日本初の本格的な美術館であり、現在は重要文化財に指定されている。当日ゲストは1階アトリウムのモノリス、螺旋階段のフォトコール、2階展示を順に巡りながらメイン会場へと向かった。今年のハイエンドウォッチコレクションのテーマのひとつに“ゲーム”を掲げており、会場演出もそれに合わせて構成。黒と白を基調とした空間には、ドミノに見立てた大きなモノリスやチェスボードケースが設けられ、そのなかに時計やジュエリーウォッチが収められる。音と光を組み合わせた演出も加わり、コレクションの世界観を空間全体で表現していた。
イベント後半には、このイベントのためにスイスから来日したセラミックエキスパートが登場し、進行にはHODINKEE Japan編集長の関口 優が加わった。トークは、酸化ジルコニウムを原料とするセラミックケースの製造工程をたどる内容からスタート。日本で調達した粉末と顔料を、ドイツでバインダーを加えて混合。その後スイスにあるメゾンの自社工房製造で成形、切削、焼結、仕上げへと進む流れが語られた。なかでも印象的だったのは、1400〜1600℃の高温で行う焼結の工程だ。この工程で素材が約30%収縮するため、その変化をどこまで精密に管理できるかがケース精度を左右するという。実際、シャネルではこの収縮率の誤差を0.01%のレベルでコントロールしているといい、素材開発から製造までを一貫して手がける体制の強みもうかがえた。
仕上げの工程も興味深かった。ブラックとホワイトのセラミックはバレル研磨で仕上げる一方、ブルーセラミックはマット仕上げのために工程が追加される。一部のモデルでは、表面をマットに仕上げたあと、さらにポリッシュのエッジ部分を手作業で整えるため、通常の仕上げの20倍もの時間がかかるという。
316Lスティールとセラミックの比較デモも実施。関口が両素材に傷をつけようと試みると、スティールには傷が残った一方、セラミックには目立つ跡がほとんど見られなかった。
続くQ&Aセッションでは、シャネルのセラミックが持つ色と仕上げの個性にも話題が及んだ。たとえばシャネルのホワイトセラミックは、一般的な不透明な白ではなくわずかに透けるような質感を持つ。これはデザイン上の特徴として意図されたものである一方、こうした表情を備えたホワイトセラミックで長期的に色の均一性を保つのは一般的には難しいという。トークでは、その点をシャネルの技術的な特徴として挙げ、20年前のホワイトセラミックと現在のものでも色が変わらないことにも触れていた。色の表現は容易ではなく、昨年発表されたブルーセラミックは開発に5年を要し、23種類の色味を比較した末に現在のトーンへたどり着いたとのこと。さらに、実現のハードルが高い色として、高温焼成の工程に顔料が耐えにくい赤が挙げられた。
今回のイベントで改めて伝わってきたのは、シャネルがセラミックを軽くて傷に強い素材として扱うだけでなく、メゾンのウォッチメイキング クリエイション スタジオ ディレクター、アルノー シャスタンのアイデアを具現化するべく色や質感、仕上げまで突き詰めていることだ。トークショーではその背景にある製造工程や素材開発にも光が当たり、展示されていた時計を見る視点も少し変わった。この夜は、シャネル ハイエンドウォッチの現在地を体感する場になっていた。
Photos by Keita Takahashi
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