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気温も上がり、NBAカンファレンス・ファイナルも、たとえ自分の応援するチームがすでに敗退してしまっていても、十分すぎるほど面白い展開になっている。そして7月4日の予定を立てるまでには、まだ1カ月ちょっと残されている。とはいえ、焦る必要はない。『Sprockets(編注;米国のコメディバライティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のコント)』のディーターの言葉を借りるなら、今こそHodinkeeで今市場に出ている掘り出し物を見るときだ。
先週取り上げたモデルの結果を振り返っておこう。モバード クロノプランは、まだ The Time Curator で販売中。パテック フィリップ ベータ21は2万6750ドル(日本円で約420万円)で落札された。そしてハミルトンのオークションは明日終了予定なので、気になっているならまだ間に合う(編注;オークションは23日に終了しており、1600ユーロ/日本円で約30万円で落札)。一方、ゼニス タイムコマンドは460ポンド(日本円で約9万8000円)で落札された。それでは、本編に移ろう。
番外編
ブシュロンのヴィンテージウォッチに魅力を感じ、もっと注目されるべきだと思っているのは、決して私ひとりではない。さらに説得するための材料が必要なら、このリフレは実に強力な一例となるだろう(編注;現在オークションは終了している)。このエニカ マンタグラフをよく見ると、ダイヤルにSwissの表記が存在せず、オリジナルのエニカボックス付きであるにもかかわらず、保証書はなぜかセイコー名義になっていることに気づくだろう。普通ならかなり怪しく、場合によっては不穏ですらある。しかし実際には、エニカ マンタグラフは本質的にセイコーの7016ムーブメントをリブランドしたモデルであり、そのムーブメント自体は十分に注目に値する存在なのだ。ヴィンテージのフライバッククロノグラフといえば、こちらのロンジン 13ZN モノプッシャーもある(編注;現在オークションは終了しており2100ユーロ/日本円で約38万8000円で落札)。そのダイヤルは、トロピカルダイヤルと単なるダメージのあるダイヤルとの境界線を試すかのように、時と状況によって評価が分かれるデザインになっている。それでも物足りないなら、同じくらい賛否を呼びそうなロレックス ダブルレッド シードゥエラーもある。そして最後に、14Kゴールド製のブリックリンクブレスレットを備えた14Kゴールドのユニバーサル・ジュネーブ トリコンパックスを紹介する(編注;現在オークションは終了しており3万2000ドル/日本円で約500万円で落札)。これについては、これ以上付け加える言葉が見つからない。
オメガ マリン クロノメーター Ref.398.0836
時計愛好家としての私の大きな欠点のひとつは、クォーツムーブメントについてほとんど考えてこなかったことだ。クォーツムーブメントを軽視しているわけではなく、開発や品質といった観点も含め、クォーツというカテゴリーそのものについて、本当に何も考えてこなかったのである。私が時計の世界に入ったのは時計師たちを通じて、そして彼らとともにだった。そのためかなり早い段階で、どれだけ見た目が格好いい時計でも、もし1石しか使われていないムーブメントだったら(ヴィンテージのシミエール スポーツクロノグラフ 、君のことだ)、その時計をオーバーホールしたいなどと言おうものなら、時計師たちから相当な不興を買うことになると学ばされた。
そして機械式ムーブメントと同様に、クォーツムーブメントのあいだにも大きな違いが存在する。もちろん、そんなことは皆とっくに理解していて、単に私の理解が遅かっただけなのだろう。だがもし、あなたも私と同じようにクォーツムーブメントを二元論的に捉えているなら、一緒にこのオメガ マリン クロノメーターについて考えてみようではないか(編注;現在オークションは終了しており2000スイスフラン/日本円で約40万円で落札)。
1974年に登場したマリン クロノメーターは、“海洋用クロノメーターとして認定を受けた史上初のクォーツウォッチ”だった。もちろん、その肩書には代償も伴った。当時、この時計の価格はスピードマスターの5倍に設定されていたのである(つまり、同時代のどのロレックスのスポーツモデルよりも、かなり高価だったということだ)。クォーツについて知っている人なら分かると思うが、クォーツウォッチは振動によって動作する。そして機械式時計と同じく、一般的には振動数が高いほど精度も高くなる。
参考までに、現代のクォーツウォッチは一般的に3万2768Hzです。私が知る限り最も精度の高いムーブメントであるシチズンの0100は、838万8608Hzで振動しており、これは標準的なクォーツの256倍に相当する。先週のパテック フィリップに搭載されていたベータ21ムーブメントは、8192Hzだ。
そしてオメガはこれを“メガクォーツ”と呼び、毎秒235万9296Hzで振動するCal.151を開発した(科学的な補足をしておくと、Hzとは物体が振動する頻度を示す単位だ)。当時としては驚異的な数値であり、一般的なクォーツの32768Hzを大きく上回っていた。そして、私が知る限り最も高精度なムーブメントであるシチズンのCal.0100は838万8608Hz、つまり標準的なクォーツの256倍で振動している。ちなみに、先週紹介したパテック フィリップ ベータ21のクォーツムーーブメントは8192Hzだった。
ここの個体は非常に良好な状態に見える。ケースにはオリジナルのサテン仕上げがしっかり残っており、ムーブメントのシリアルナンバーが刻まれたオリジナルのゴールド製プレートも健在で、ダイヤルと針の状態もかなりきれいだ。残念ながら、このモデルに本来付属していた天文台による認定書はないが、すべてが揃うとは限らない。なぜか執筆時点ではまだ入札が入っていないものの、これは27日にオークションへ出品される予定だ。もしこの時計があなたの“クォーツウォッチ欲”を刺激しないのであれば、同時代の素晴らしいジャガー・ルクルトのマスタークォーツもぜひ見て欲しい(編注;現在オークションは終了しており、1700ユーロ/日本円で約31万4000円で落札)。
それだけでも十分だが、オメガのマリン クロノメーターは側面にプッシャーが装備されており、着用者は1秒単位で時刻を調整できる(クロノメーターたる所以!)。またムーブメントには時針の独立調整機能も備わっているため、精度を損なうことなくタイムゾーンを変更できる。
ゼニス 2000 Cal.135
私がいつの時代も引かれてしまうのは、ミッドセンチュリー期の、ありふれたスティール製ダイヤルを備えた34〜36mmサイズのスティール製ウォッチだ。こうした時計の魅力はダイヤルのインデックス、針の形状、ベゼルの幅、ラグの角度や仕上げ、さらにはリューズのサイズといった一見すると些細に見えるディテールを、ほぼ完璧に調和させなければならない点にある。こうしたモデルは実に豊富にあるため、もしその気になれば、自分にとっての完璧とは何かを突き止めるべく、さまざまな選択肢を掘り下げて、長い時間をかけて探求し続けることができる。
つまり何が言いたいかというと、この時計は、搭載ムーブメントの話を持ち出すまでもなく、私にとってまさに理想的な逸品だったということだ。Sterling Vaultが販売しているこのゼニス 2000には、由緒あるCal.135が搭載されている。このムーブメントは、ほぼ間違いなく皆さんもご存じだろうし、しかもゼニスがわざわざ復活させる価値を見出したほどの存在だった。というのも、このムーブメントは“1950年から1954年にかけて、ヌーシャテル天文台のクロノメーター賞を5年連続受賞した”からである。
この時計を見ただけでは、ダイヤルの下にこれほどの時計技術の結晶が隠されているとは想像もつかないだろう。そしてこうしたタイプの時計で私が最も気に入っているのは、まさにこの点だ。私はアメリカ中西部出身だが、見せびらかしを嫌う文化で育っている。“if you know, you know(分かる人には分かる)”という言い回しの由来は分からないが、これは私が思いつく限り、最も中西部的な価値観を表した言葉だ。
そしてこのゼニス 2000は、まさに分かる人には分かる時計だ。確かにクロノメーター認定を受けているが、これを着けていても、周囲の誰にもその正体を気づかれないまま、あらゆる場所に入っていけるだろう。さらに、この個体は本当に素晴らしい状態だ。ケースは完璧で、リューズもオリジナルのままだ。ダイヤルには若干のシミがあるものの、全体の印象を損なうほどではない。オリジナルの箱と、ゼニスの刻印入りバックルが付属しているのは、まさにおまけのようなものだ。執筆時点では入札はゼロだが、この時計は5月28日に落札される予定だ(編注;現在オークションは終了している)。
マーヴィン オーシャン チーフ
時計は存在や実在、現実を扱う学問である存在論について、奇妙な教訓を与えてくれる。私にとってその最初の体験は、“プア マン ホイヤー(Poor Man Heuer)”について知ったときだった。ホイヤーが製造しながら、別会社の名義で販売されていた時計たちのことである。もちろん、こうした例はほかにも数多く存在する。たとえばスクワーレなどがすぐ思い浮かぶだろう。だが、今日取り上げるものは、それよりはるかに限定的で、少なくとも私にとっては、より奇妙で興味深い存在なのだ。
いまだに解けていない謎のひとつが、私が勝手に偉大なる凹面と呼ぶようになったものに関係している。ここで言っているのは本のことではなく、初期のブライトリング スーパーオーシャン 1004やグリュエン オーシャンチーフに見られるベゼル形状のことだ。確かに、ベゼルがクリスタルと接する部分が端部よりも低くなるように設計されたのには何らかの合理性があったのだろう。しかし私は、その理由をいまだに理解できていない。もちろん、理解できないからといって、そうした初期ダイバーズを楽しめないわけではない。実際、あれらは実に魅力的で装着感もよく、見た目も素晴らしい。
それでもやはり、あのベゼルについては謎のままである。
“偉大なる凹面”を持つもうひとつのモデルが、このマーヴィン オーシャンチーフだ。実際にはオーシャンチーフ名義のモデルではないのだが、ユゲニン・フレアー(Huguenin Frères製)のケースが、グリュエンで使われていたものと完全に同一であるため、そうした愛称で呼ばれている(ちなみに、初期のブライトリング スーパーオーシャン 1004のケースもグリュエンと同一だったのかどうかについては、議論や検証が続いているようだ)。今回出品されている個体は、ヴィンテージとしてかなり良好な状態に見える。夜光は焼けて濃い色味になっており、ケースには多少の傷も見られるが、それがむしろ“正しく”見えるのだ。使い込まれて愛されてきた時計でろう風合いがある。しかも当時としてはかなり大型で、ケース径は39mm。それでいて装着感は申し分ない。執筆時点での入札額は190ドル/日本円で約3万円、オークションは26日に開始される予定だ(編注;現在オークションは終了しており、1000ドル/日本円で約15万8000円で落札)。
ジャガー・ルクルト エトリエ
時計に夢中になって何年も経つ今となっては、私は妻からスマホの画面を隠したりはしない。ただ、私がスマホで時計を眺め続けている姿を妻に見られないようにしたいため、その頻度はできる限り抑えようとしている。別に恥ずかしいわけではないし、妻はこれ以上ないほど寛大で理解のある人だが、彼女は私たちのように“病”にはかかっていない。私が時計に夢中になって大騒ぎしていても、彼女はごく普通の人らしく冷静なままだ。
だからこそ、彼女がふとこちらを見て「それ何?」と尋ねてくる瞬間がたまらなく楽しい。そしてそのとき私が食い入るように眺めていたのが、このジャガー・ルクルト エトリエだった(編注;売却済み)。
この時計、あるいはそれに似たモデルを、皆さんはこれまで何度も目にしてきたことだろう。1930年代から70年代にかけて製造されたエトリエ(フランス語で“鐙”を意味する)という名称は、ジャガー・ルクルト精通した人物によると、ラグの形状に由来するそうだ。おそらく私と同じように、これまでずっとこれらの時計をルクルト エルメスの時計だと勘違いしていた方もいるだろう。上記のリンク先では、その誤解を解くための情報も提供されている。
Rare Birds が3500ユーロ(日本円で約64万7000円)で販売しているこの個体は、美しいだけでなく、サイズ感も魅力だ。28.5mmの時計を“ちゃんとしたサイズ感”と言うのは少々妙に聞こえるかもしれないが、このモデルの多くは20mm以下なのだ。しかも50年以上前のドレスウォッチであることを考えれば、このRare Birdsのエトリエは驚くほど素晴らしい状態に見える。ダイヤルはクリーンで表情豊か、ケースもきわめて丁寧に扱われてきたことが伝わってくる。
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