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Auctions ジュネーブ2026年春季オークション大プレビュー:クリスティーズとサザビーズで締めくくり(パート2)

クリスティーズは控えめながらも印象的なカタログを用意し、サザビーズは香港での大規模なオークションの勢いを維持しようとしている。


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今シーズンのオークションには、主要オークションハウス全体で1200点を超える時計が出品されている。だが、注目すべきなのはその数ではない。今回のクリスティーズとサザビーズには、これまでとは少し違う空気が漂っている。2020年代初頭の話題先行型の時計から離れ、純粋に魅力的で、意外性のある時計へと再び目が向き始めているように感じられる。前回はオークションプレビューのパート1を公開したが、今回はその締めくくりとなるパート2をお届けする。


クリスティーズ

 個人的にクリスティーズは毎回、最も控えめでありながら、きわめて印象的なカタログを揃えてくるオークションハウスのひとつだと思っている。今回も本当に素晴らしい時計が出品されており、まずはその最高額が予想されるものから見ていこう。

 私の友人であり、現在“Bring a Loupe”を執筆しているウェストン・カッターは、これを“思わず膝の力が抜けるような1本”と表現していたが、この時計を見るなら確かに座っていたほうがいいかもしれない。ロット134は、14Kピンクゴールド(PG)とスティール(SS)を組み合わせたツートンのユニークピース、オーデマ ピゲの“オブザーバトリースタイル”の時計だ。息を呑むほどゴージャスな1本である(どんな賛辞を並べても足りないほど)。搭載されるのは13リーニュのムーブメント Cal.13VZASで、これはタイムオンリーウォッチとして精度を追求するために大幅な改良が施された。9時位置には大きなスモールセコンド、3時位置には空のインダイヤルを備える。大胆なアラビア数字と力強いデザインは、初期の時計を収集している者なら夢見るような逸品だが、推定落札価格は5万〜10万スイスフラン(日本円で約1000万~2000万円)だ。正直、もっと高くなってもおかしくないだろう。

 それだけでは終わらない。今回のジュネーブ オークションで、私が最も気に入ったクロノグラフのひとつが、もう1本のユニークピースのオーデマ ピゲだ。ロット59として出品される、プラチナ製クッションケースを持つシングルプッシュボタン・クロノグラフで、オーデマ ピゲが製造した最初期のクロノグラフウォッチ3本のうちの1本にあたる。現存が確認されているのは、そのうち2本だけだという。この個体はブランドによって修復されているが、その来歴は明確で、きわめて興味深い。

 かつての所有者は、ニューヨークのラビ評議会の元会長であるラビ・マックス・シェンク(Rabbi Max Schenk)。その後、義理の息子であり、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の外科腫瘍医で、ハーバード大学医学部教授でもあるハーバート・ヘクトマン(Herbert Hechtman)博士へ受け継がれた。デザインはまさに1930年代のオーデマ ピゲを象徴するものだ。推定落札価格は20万〜40万スイスフラン(日本円で約4000万~8000万円)。当初の予想よりは控えめに感じたが、修復済みであること、そしてこうした特殊なオーデマ ピゲを求めるコレクター市場が比較的小さいことを考えれば、妥当だろう。

 実機はまだ見ていないが、ロット102のパテック フィリップ Ref.1436 スプリットセコンド クロノグラフは、カタログ上ではかなり興味深い存在だ。その背景にはいろいろな事情がある。これはRef.1436の第1世代だ(ヴィシェ社製ケースを持つ)だが、(一般的な研究では)1950年ごろまでには第2世代へ移行していたとされているため、この個体はやや異色の存在と言える。さらにダイヤルカラーはアーカイブ抄本に記載されておらず、インデックスの位置も揃っていないため、コレクターとしては追加情報を求めたいところだろう。実際、クリスティーズに確認したところ、このダイヤルは後年交換されたものであることがわかったが、その事実は(本稿執筆時点では)カタログには記載されていない。2024年のアンティコルムのオークションできわめて高い開始価格で流札しており、2023年にも(かなり厳しい結果に終わった)OAKコレクションのオークションで出品されている。こうした履歴が重なると、通常は再出品のたびに売却が難しくなっていく。一般的には、売却を狙うなら開始価格を下げて入札を促すものだ。しかし今回は、推定落札価格が40万〜60万スイスフラン(日本円で約8000万~1億2000万円)と、OAKコレクションのオークション時と同水準、そしてアンティコルムよりも高い。落札までの道のりはやや険しそうだが、もしかすると今回こそ、この時計に新しいオーナーが現れるのかもしれない。

Patek 1436

Photo courtesy Christie's

 もし、もう少し手の届きやすい価格帯で似た魅力をより手の届きやすい価格で楽しみたいなら、ロット100、ブラックダイヤルを備えたPG製のRef.96 第4世代をチェックしてみるといいだろう。アーカイブ抄本で詳細が確認されており、推定落札価格は1万2000〜2万5000スイスフランだ(日本円で約240万~500万円/しかしケースはやや研磨されているように見える)。

 そのほかにも、注目すべきロットが3つある。まず、このロレックス Ref.1680は驚くほど変わった存在だ。こういった特殊なベゼルとホワイトゴールド製ケースを備えた“プロトタイプ”仕様は3本知られているそうで、今回はロレックスで働いていた初代所有者の家族から出品されている。さらに、ブラックダイヤル仕様はこの1本だけだという。これが話題や注目を集めないはずがないが、一方で、一部で語られるように1970年代のロレックスが完璧な工業化体制を築いていたわけではなく、当時はさまざまな試作品がつくられていたことは確かだ。現在ではプロトタイプが社外に出ることは決してないだろうが、当時はそうではなかったのだ。

Rolex 1680

ロレックス Ref.1680Photo courtesy Christie's

Patek 96

Photo courtesy Christie'

AP Royal Oak

Photo courtesy Christie's

 よりわかりやすく魅力的なのは、サーモンダイヤルにエングレービングが施された立体的なハードエナメルのブレゲ数字を組み合わせた、SS製のパテック フィリップ Ref.96だ。写真や実物で見てきたRef.96のなかでも、個人的にはトップ5に入るほど印象的だ。さらに、ユニークな“フクロウ”デイデイト仕様のオーデマ ピゲ ロイヤル オーク Ref.25594STも出品されている。独特なダイヤルレイアウトを持つこの時計は、20世紀のオーデマ ピゲ史において重要な役割を果たした著名な時計師ジャン=モーリス・ゴレイ(Jean-Maurice Golay)の所有品だった。彼については、2018年に『Le Temps』でも紹介されている。

Markowski

Photo courtesy Christie's

Eska

Photo courtesy Christie's

 ここから先は高額ロット順ではなく、私がカタログPDFを見た順番で追っていこう。最初に目を引いたのはロット8、マルコフスキー社製の“デビルズホーン(悪魔の角)”ケースを持つパテック フィリップ Ref.2549だ。このモデルはパテックのタイムオンリーウォッチのなかでも特に大胆で印象的なデザイン(もちろんブラックダイヤルのほうがより人気がある)を持つが、推定落札価格は1万2000〜1万8000スイスフラン(日本円で約240万~360万円)で、少し安すぎるようにも感じる。私はこのモデルを15年近く見ていないが、それでも当時すでに3万5000ドル(日本円で約700万円)で落札されていた。また、ブラックの背景に南北アメリカ大陸の地図を描いたクロワゾネエナメルのエスカも素晴らしい。こうしたモデルの90%くらいはイタリアのあるコレクションに集まっている印象があるため、欲しいなら出てきたタイミングで狙うしかないだろう(私もウォッチリストに入れている)。その2ロット後には、ルイ・コティエ設計の機構を搭載したパテック フィリップ ワールドタイム Ref.605 HUも登場する。これは懐中時計だが、なかでも希少なモデルだ。人々は通常、モナコ・レジェンド・グループが75万4000ユーロ(日本円で約1億4000万円)で売却したようなクロワゾネ仕様に引かれるが、こちらの推定落札価格は5万〜10万スイスフラン(日本円で約1000万~2000万円)なので、中堅のパテックコレクターにとっては良い買い物になるかもしれない。

Rolex Tuxedo

Photo courtesy Christie's

 最初の11ロットのうち3本も取り上げてしまった。そろそろペースを上げようと思ったのだが、またロット14で立ち止まることになる。ここには、真鍮製ムーブメントのF.P.ジュルヌ トゥールビヨン・スヴラン・ア・“ルモントワール・デガリテ”が出品されているからだ。実物を比較することはできていないが、こちらのほうが推定落札価格は高い(50万〜100万スイスフラン/日本円で約1億~2億円)。オークションの後半に出てくるので、先に別の個体を狙ったあと、こちらに挑戦することもできるだろう。それからこのクールなレンガを積み上げたようなブレスレットが装着されている、タキシードダイヤルを備えたロレックスも見逃せない。

 オーデマ ピゲからは、ロット35、58、67、85といったクールな懐中時計がいくつか出品されている。まずはグランドコンプリケーションを搭載した美しい1955年製の懐中時計で、ケースには見事なパティーナが見られる。私の推測では、かなり長いあいだ引き出しのなかにしまわれていたのだろう。より希少で新しいものとしては、1986年製のグランドコンプリケーションがあり、イエローゴールド(YG)製ケースにパヴェダイヤモンドを敷き詰めたダイヤルが組み合わせられている。これらの推定落札価格は8万〜20万スイスフラン(日本円で約1600万~4000万円)だ。もう少し現実的な価格帯では、1941年製のこの美しいピンク・オン・ピンクのミニッツリピーターがある。ダイヤルにはイタリア・ジェノバの(めったに見られない)Chiappeの署名があり、推定落札価格は1万5000〜2万スイスフラン(日本円で約300万~400万円)だ。

Patek repeater

Photo courtesy Christie's

 リピーターといえば、うっかりロット63を飛ばしていた。カタログを眺めていると、2ロット進んで、1ロット戻るということがよくあるが、これは35mmと小ぶりなサイズ感の美しい限定モデル、パテック フィリップ Ref. 5029R ミニッツリピーターだ。ジュネーブのプラン・レ・ワットに新工場が完成した際の記念モデルで、ケースはあのジャン-ピエール・ハグマン(Jean-Pierre Hagmann)による素晴らしい“オフィサー”ケースを備えている。PG製はわずか10本しか存在しないが、そのうちの1本が4月下旬、サザビーズの香港オークションで約40万ドル(落札日のレートで約6300万円)で落札された(あのオークションは本当に異常な盛り上がりだった)。今回の25万〜55万スイスフラン(日本円で約5000万~1億1000万円)という価格は、推定落札価格帯の中間あたりで妥当に思える。とにかく見事な時計だ。

Patek 3970

Photo courtesy Christie's

 オークション中盤から終盤にかけては、さらに2本の注目作が登場する。まずロット114は、パテック フィリップ Ref.3970EP-047。21世紀を代表するパテックのVIP顧客のひとり、マイケル・スティーヴン・オーヴィッツ(Michael Steven Ovitz)氏のために製作された時計だ。オーヴィッツの好みが、この時計にもかなり反映されている。ブレゲ数字の“12”、夜光を塗布したインデックスと針、そして6時位置に入る“M.S.O.”のイニシャルである。最近、レマニア製キャリバーのパーペチュアルカレンダー・クロノグラフは驚くほど高騰しており、クリスティーズは昨年、この時計と対になるRef.5004Pを150万ドル(落札日のレートで約2億3300万円)で販売した。そのため、今回の推定落札価格も50万〜100万スイスフラン(日本円で約1億~2億円)に設定されている。そして最後になるが、“ノーチラス” Ref.3700/1G ジャンボも見逃せない。これは新たに発見されたハンジャールサイン入りのノーチラスであり、ハンジャールの上に王冠マークまで入っている。この仕様は確認されているものが3本のみで、さらに王冠がない4本目が存在する。クリスティーズのプレビューを締めくくる最後にして最大の推定落札価格は40万〜75万スイスフラン(日本円で約8000万~1億5000万円)だ。


サザビーズ

 クリスティーズだけでかなりの量になった。少し休憩して水を飲んで欲しい。準備ができたら、サザビーズを見ていこう。

 今年、サザビーズの香港オークションはかなり力が入っていた分、ジュネーブのオークションはやや控えめに見える。ロレックス デイトナ “ジョン・プレイヤー・スペシャル”に何か動きがあるようだ。今年出品されたほかの数本に加えて、サザビーズはジュネーブでブラックダイヤルを備えたYG製のポール・ニューマン デイトナを2本出品する。より高額なのは、ブレスレット付きの人気モデル Ref.6241(厳密にはJPSと呼ばれる)で、14Kゴールド製であることから、アメリカ市場向けの個体であることがわかる。推定落札価格は45万〜85万スイスフラン(日本円で約9000万~1億7000万円)だ。思わず“U-S-A!U-S-A!”と叫びたくなる気持ちを抑えながら、より興味深いのはもう1本のYG製のロレックス デイトナ “ポール・ニューマン” Ref.6239だろう。伝えられるところによると現存数は10本前後で、この個体は45年間ずっと引き出しのなかで眠っていたらしい(なんともったいない)。推定落札価格は30万〜60万スイスフラン(日本円で約6000万~1億2000万円)だ。

 真鍮ムーブメントのF.P.ジュルヌにまだ飽きていないなら、クロノメーター・レゾナンスもあるが、私が嬉しいのはオーデマ ピゲ ジョン・シェーファーのミニッツリピーター搭載ジャンピングアワーモデル(これについては以前、私が詳しく記事を書いた)が出品されていることだ(9万〜14万スイスフラン/日本円で約1800万~2800万円という価格はかなり印象的だ)。ティファニーサイン入りのパテック フィリップ Ref.3448も激しい競りになるだろう。一方、カレンダーウォッチでは、ヴァルジュー88を搭載したブレゲのトリプルカレンダー・クロノグラフが気になっている。友人が所有していて以前から羨ましく思っているのだが、この価格では、私はまだ羨ましく思い続けるしかなさそうだ。

 今回のオークションには、来歴の面でも非常に魅力的な時計が2点ある。最も高価な(そしておそらく最も風変わりな)のは、セネガルの初代大統領レオポール・セダール・サンゴール(Léopold Sédar Senghor)が所有していたパテック フィリップのドームクロックだ。ルネサンス様式のモチーフに、ふんだんに使われたYGに半透明のグリーンエナメルが組み合わされている。入札開始価格は26万スイスフラン(日本円で約5200万円)だ。ただ、個人的に本当に欲しいのはむしろ別の1本だ。伝説的な登山家であり探検家でもあるラインホルト・メスナー(Reinhold Messner)氏が、彼の遠征ロジスティクス担当者であるプリトヴィ・ラージ・チェトリ(Prithivi Raj Chettri)氏に贈ったロレックス エクスプローラーⅡ Ref.1655だ。チェトリ氏の息子がすべての来歴資料と、メスナー氏所有のアイスアックスまで出品している。推定落札価格は2万〜4万スイスフラン(日本円で約400万~800万円)だが、その価格に収まるとは到底思えない。

Rolex 1655

登山家ラインホルト・メスナー氏から贈られたロレックス エクスプローラーⅡ Ref.1655Photo courtesy Sotheby's

 すでに述べたように、サザビーズの香港オークションでのカルティエは私の認識とはかけ離れた、ほとんど現実離れした盛り上がりを見せた。しかしそれがコレクターの世界であり、私はその流れをただ眺めているだけなのだろう。今回のジュネーブでは、香港ほど突出した超高額のカルティエはないものの、気になる時計はいくつかある。

Cartier Santos

カルティエ サントス デュモンPhoto courtesy Sotheby's

 まずロット16のクッサン バンブーは、最近かなり人気があるようだ。この1980年製のラージモデルは推定落札価格5万〜10万スイスフラン(日本円で約1000万~2000万円)で、そのすぐ後には、はるか昔の1911年製の小さく愛らしいサントス デュモンが続く。これはおそらく生産初期のきわめて希少な1本だろう。ダイヤルには“Cartier Paris Bte S.G.D.G.”(Breveté Sans Garantie du Gouvernement、政府保証なしの特許取得済み)の文字が見られる(さらなる証拠として、こちらこちらの例を参照)。かなり小さいが、純粋に歴史的価値で買うのであれば、3万スイスフラン(日本円で約300万円)で開始する価値は十分にあるだろう。珍しいケースシェイプは、実にユニークで素晴らしい。

 ロット49には、ブレスレットだけで私の目を引く時計がある。1950年代のカルティエ パリで生産された時計は、私にとってまさに黄金時代で、スイートスポットだ。デザインは洗練され始めている一方で、コンディションが良い個体も比較的多い。“イーグルビーク”ラグを持つこのモデルはそれほど一般的ではない(だが、より大ぶりなモデルほど希少ではない)。確かにダイヤルは完璧ではないが、この時代の時計としてはごく普通のことだ。またブレスレットは90年代によく見られる後付けのものではなく、オリジナルに見える。3万〜5万スイスフラン(日本円で約600万~1000万円)の範囲内であれば、良い買い物のように感じる。前回のサザビーズのオークションでは、ロンドン製の珍しい1990年代のパラレログラムが60万ドル(日本円で約9400万円)で落札されたが、今回はパリ製のよりクラシックな1937年製の個体も出品されている。個人的にはこちらもかなり好みだ。

A. Lange & Söhne

Photo courtesy Sotheby's

A. Lange & Söhne

Photo courtesy Sotheby's

 懐中時計はいま、明らかに再評価の流れにあり、サザビーズもその流れをしっかり捉えている。サザビーズのダリン・シュニッパー(Daryn Schnipper)氏は“懐中時計の女王”であり、彼女とチームはいくつかの逸品を揃えてきた。ひとつ目は、グラスヒュッテ初期のウォッチメイキングを代表するような1916年製のA.ランゲ&ゾーネ グランドコンプリケーションだ。もはや博物館級と言っていい1本であり、初期の懐中時計に求められる要素が、ほとんどすべて詰め込まれている。パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーター、グランド&プチソヌリ、キーレスレバー(編注;鍵を使わずレバーで操作できる機構)、ムーンフェイズ、ダブルクロノグラフ、そしてレジスター表示。この個体はピゲ社製のエボーシュをベースにしつつ、ドイツで驚異的な仕上げが施された9本のうちの5本目だ。さらに、PG製のケースとしては最後の1本であり、1939年以来同じコレクションに収蔵されている。まさに“一生に一度”クラスの時計であり、価格もまた“一生に一度”級(70万〜120万スイスフラン/日本円で約1億4000万~2億4000万円)だ。同じくピゲ社製のベースムーブメントを搭載しながら、比較的シンプルなのが1928年製のA.ランゲ&ゾーネ トリプルコンプリケーションだ。過去20年ほどのあいだに2度市場へ出ているが、美しい時計であることに変わりはない。推定落札価格は15万〜30万スイスフラン(日本円で約3000万~6000万円)だ。

Patek Pocket Watch
Patek
Patek

 最後に、どうしても触れておきたいパテック フィリップの懐中時計が2本ある。連番に近い位置に並ぶロット137と139は、その内容は大きく異なるが、どちらも同じくらい興味深い。まず1本目は1951年製のRef.840で、SS製のスクリューバックケースとクロノグラフを備えた防水仕様の懐中時計だ。ケースはジャン・ヴァロン(Jean Vallon)製で、ムーブメントは腕時計のRef.130にも採用されたCal.13-130を搭載。この時計には6時位置に奇妙な固定式のペンダントリングがあり、信じられないほど美しいロングシグネチャー入りのブラックダイヤルを備えている。続くもう1本は、1898年製のミニッツリピーターだ。これはキーレス機構とふたつの輪列を備えた、トリップリピーター(編注;ボタン作動)式の懐中時計で、よりクラシックな外観だ。またトリップリピーターの製造は、きわめて複雑だ。通常、リピーターはスライドを動かすことでリピーターの動力供給と作動の両方が行われるが、ふたつの輪列を搭載している場合、その仕組みはリピーター用の動力を別に蓄え、ボタン操作によって作動させるようになっている。どちらも推定落札価格は、2万〜4万スイスフラン(日本円で約400万~800万円)だ。