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Hands-On セイコー プロスペックス スピードタイマー ソーラークロノグラフは注目すべき一本だ

クォーツムーブメント、電動バイク、そして業界破壊についてのストーリー。


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1969年、セイコーは自動巻きCal.6139を搭載した、5スポーツ スピードタイマーを発表した。この年、ゼニスやホイヤー(それぞれエル・プリメロ、Cal. 11を搭載)が独自の自動巻きクロノを発表していたのである。つまり、日本の、しかもスイスブランドではないセイコーが、フォンデュを愛し、チーズを食べるスイスの時計ブランドと同じように、自動巻きクロノグラフの王座につくことができたのだ。

 セイコーがこのような地位を占めているのは興味深い。というのも、セイコーは歴史的に、電池駆動の高精度なクォーツムーブメントを普及させ、スイスの時計市場を転覆させたことで知られているからだ。そう、“クォーツショック”と呼ばれる事態だ。

Seiko Solar Speedtimer

 セイコーは、70年代にクォーツウォッチで業界を席巻し、業界における永遠の強者としてその地位を確立した。昨年、セイコーはスピードタイマー クロノグラフの新作を発表したが、このモデルは機械式時計のレガシーを継承するものではない。その代わりに、70年代の奇抜でカラフルなデザインからインスピレーションを得て、最も破壊的なムーブメントのひとつであるクォーツ(しかもソーラー)を搭載しているのだ。

 今日ご紹介するのは、セイコー プロスペックス スピードタイマー ソーラークロノグラフ SBDL087である(一回だけ早口で言ってみて欲しい)。そして破壊の伝統を継続するために、現在の別の大きな産業、つまりガソリンエンジン搭載のバイクを近代化する道を歩んでいる別のブランドと組み合わせたら楽しいと考えた。ニューヨークのブルックリンを拠点とするターフォーム(Tarform)は、完全な電動バイクの製造に取り組んでいる新興ブランドで、革新的なサステナブル素材、つまりレザーを一切使用しないのが特徴だ。一見カーボンファイバーに見える部分も、実は亜麻とバイオ樹脂で構成されており、車体の多くは、無限にリサイクル可能な純アルミニウムで作られている。話が逸れてしまった。閑話休題。

Tarform Luna, Cafe Racer

 ブルックリンのネイビーヤードにあるブランド本社の近くで、タキメーターベゼルが付いた青と赤のファンキーなスピードタイマー ソーラークロノグラフを、ターフォームの創設者兼CEOのタラス・クラフチュク(Taras Kravtchouk)氏が腕につけているところを紹介しよう。この時計は1960年代から1960年代にかけてのヴィンテージの流れを汲んでいるが、バイクはより工業的な雰囲気で、レトロフューチャー(デコ・フューチャー)と1940年代のデザイン精神が融合したような美しさを持っている。

 セイコーがスイス時計にもたらしたように、ターフォームがバイク業界にもたらすものは何か、それはまだわからない。だが、このハンズオンのためにふたつを組み合わせることを止めなかった。

Seiko Solar Speedtimer on wrist

 1969年の発売後、スピードタイマーは大きな名声を得ることになった。特にペプシベゼル、イエローダイヤルのモデルは、1973年に宇宙飛行士ウィリアム・ポーグ(William Pogue)の腕に巻かれ、サターンIBロケットで宇宙へ行ったことで有名だ(彼の名前にちなんでポーグと呼ばれるようになった)。このモデルは長年にわたりセイコー 5スポーツの定番モデルであり続け、未来の時計コレクターの好みにまで影響を与えた。というのも、すでにご存じの方もいるかもしれないが、ダニエル・デイ・キム(Daniel Dae Kim)はTalking Watchesのエピソードで、父親がつけていたのと同じモデルであることから、スピードタイマーを愛用していると話している。デザイナーのジョン・エーデルマン(John Edelman)は、その臆面もないファンキーなデザインに引かれ、スピードタイマーを手に入れた。そして最近のTalking Watchesのゲスト、ロニー・チェン(Ronny Chieng)は前述のキムのアドバイスでスピードタイマーを手に入れた。歴史ある時計であると同時に、新進気鋭の時計でもあるのだ。

 昨年、セイコーが電池駆動のソーラーウォッチとしてスピードタイマーの新コレクションを発表したのは、ちょっとしたサプライズだった。自動巻きのルーツからは離れるものの、新モデルのデザイン、作り込みという点では勝利と言えるだろう。セイコーは今でも自動巻きのスピードタイマーを製造している。そして、ソーラーのバリエーションと並行してコレクションを発表しているが、それらのモデルには機能的で身につけられるデザインという点で、多くの不満が残されている。42.5mmという大きさもそうだが、プッシュボタンがやたらと高く、ヴィンテージのテレビアンテナのような雰囲気が漂っている。私が求めているのはヴィンテージではないのだ。

Seiko Solar Speedtimer flat lay

 それに対してソーラーコレクションは、よりウェアラブルな提案と、より正確なムーブメントを提供する。今回ご紹介するのは、ブルーダイヤルとペプシベゼルを備えた69年製のヴィンテージスピードタイマーに最もよく似たビジュアルを持つモデルだ。このモデルはペプシそのものではないが、青と赤のモチーフが広がって、完全にモダンなフォルムの時計となり、あちこちにレトロな装飾が施されて古いタイムピースとのつながりを強固にしている。

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 私がこの時計で気に入っているのは39mmというサイズ感だ。これは今日の時計の直径におけるスイートスポット、ゴルディロックスのお粥のように感じられる。さらにコンパクトなプッシャーによって、手首にしっくりと馴染むサイズになっているのだ。厚みは13.3mmと、決して薄くはないが、スポーティな雰囲気にぴったりで、自動巻きモデルより2mmほど薄くなっている。

Seiko Solar Speedtimer on wrist

 スピードタイマー ソーラークロノグラフのすべてのバリエーションを語ることはできないが(カラーバリエーョンは4種類)、この時計の魅力はなんといってもダイヤルだ。ただカラフルなだけではない。ブルーのダイヤルはマットで質感がありる。ダークな色合いだが、その分、ダイヤルのほかの要素が輝きを放っている。みっつのインダイヤルやダイヤルのマークなど盛りだくさんの内容だが、セイコーは ダイヤルをシンプルなブランドマークとプロスペックスのロゴにとどめ、旧モデルのように“Speedtimer”の文字をプリントすることはしなかった。副尺には、ちょっとしたマジックが施されている。よく見ると半透明になっているのだ。その下には太陽電池があり、これが時計を充電するために光を取り込む方法となっている。さらにクロノグラフ秒針と6時位置のインダイヤルにあしらわれた赤のビットがデザインを締め括っている。

Seiko Solar Speedtimer on wrist

 この深みと質感が、7万4800円(税込)という価格に付加価値を与えている。セイコーが非メカニカルな製品にこのような価格をつけたことに怒る前に、ここで得られるものを思い出して欲しい。

 形と感触の面では、この時計は、品質的には自動巻きの上位機種と同じように感じられる。ジェームズがA Week on the Wristでともに過ごしたSBDC101(海外版はSPB143) ダイバーや、SBDC107(海外版はSPB149)ベビー・アルピニストのような時計がそれだ。これらの時計は、ダイヤルのデザインもブレスレットの作りもすばらしいものだ。スピードタイマー ソーラークロノグラフは、そのすべてが頑丈な切削クラスプとツイントリガー展開システムを備えたスティールブレスレットに装備されている。さらに、クォーツのV192ソーラームーブメントにより、巻上げの必要なく月差±15秒の精度を実現したことで、この時計の本質的な価値が見えてくる(クォーツショックがどのように生まれたかは言うまでもない)。

Seiko Solar Speedtimer caseback
Seiko Solar Speedtimer clasp
Seiko Solar Speedtimer pushers

 本稿の写真に写っているバイクは、ターフォーム ルナ、カフェレーサーだ。最高速度は120mph(約193km)で、ゼロから60mph(約97km)まで3.8秒で到達することができる。スピードタイマー ソーラークロノグラフは、一定の距離を移動する物体の速度を追跡することができるタキメータースケールを備えた外部ベゼルを備えている。距離といえば、バイクに乗っているときでも非常に見やすいように、この時計にはカラーが使われているのだ。スケールの最初のセグメントは赤で、かつてのペプシベゼルを彷彿とさせる。このヴィンテージ感はダイヤルにも表れており、アプライドインデックスはほんのりとパティーナ色に染まっている。

Seiko Solar Speedtimer close up

 モータースポーツにちなんで、セイコーは6時位置のインダイヤルに小さな隠し要素を追加した。よく見ると、“F”と “E”の文字があり、これはフルとエンプティを意味する。このインジケーターにより、この時計がソーラーパワーを持っているかどうかを知ることができるのだ。満タンの場合、ソーラーエネルギーで約6ヵ月間駆動する。この針にはふたつの役割がある。クロノグラフをスタートさせるためにプッシュボタンを押すと、12時位置にジャンプし、ふたつ目の仕事を始める。クロノグラフの分を表示することだ。もし、あなたがこの時計で時間を計らないのなら、パーティーで誰かにこの時計を見せると、その人は時計好きになるかもしれない。

 セイコーは、デザインに遊び心があるときがいちばんおもしろいと思う。この時計はその理想を体現したものだ。このスピードタイマーは、昨年はあまり注目されなかったかもしれないが、私は最近のセイコーの作品のなかで最もおもしろいもののひとつだと思っている。このターフォームの電動バイクで装着されているのを見て、この時計のシリーズのモータースポーツでの出自を思い出すと同時に、スイス機械式時計業界の破壊者としてのセイコーの役割も再認識することができた。それに加えて、このモデルはとにかくカッコいいのだ。

Seiko Solar Speedtimer on wrist in front of Tarform bike

セイコー プロスペックス スピードタイマー ソーラークロノグラフ SBDL087(海外版はSSC815P1):39mmステンレススティールケース。セイコーCal.V192ソーラークォーツムーブメント、月差±15秒の高精度。プッシュボタン式三つ折れクラスプ。時間、分、秒表示、みっつのインダイヤル。5分の1秒単位の60分クロノグラフ、発電再開の表示。価格/7万4800円(税込)

Photos, Kasia Milton

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HODINKEEはセイコーウォッチの正規販売店です。コレクションはこちらでご覧いただけます。セイコーの詳細については、公式サイトをご覧ください。

ターフォームについては、同社のウェブサイトをご覧ください。