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Interview IWC. Curated.で手に入る極上のヴィンテージウォッチコレクション

スイス(シャフハウゼン)、イギリス(ロンドン・バタシー発電所)、ドバイ(ドバイモール)、そして日本(銀座)の限られたブティックでのみ出合える、IWC. Curated.の厳選されたヴィンテージウォッチコレクション。IWCミュージアム館長デイヴィッド・セイファー氏がその背景を語る。

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2022年、ロレックスが公式認定中古(CPO、Certified Pre-Owned)市場に参入するという衝撃的なニュースが発表されてから早3年。公式認定中古とは、つまりブランドが設けた厳格な基準に従い、ブランドが真正性や品質を保証した中古製品を新たに値付けをして再販する制度を指すが、いまや多くのブランドがこのCPOプログラムを始めている。そんななか、9月からIWC. Curated.という名のヒストリカルピースを提供するプログラムを同ブランドが開始した。

デイヴィッド・セイファー(David Seyffer)
1974年、ドイツ生まれ。歴史家、文学博士。IWCミュージアム館長。IWC. Curated.コレクションのスタートに伴い、時間を割き、我々のインタビューに対して真摯に答えてくれた。Courtesy of IWC

 一般的にCPOには大きくふたつの側面がある。ひとつは中古製品を再販して利益を得るという事業、そしてもうひとつはブランド自らが自社製品を収集、適切なメンテナンスを施して後世へ残す、ヘリテージ保存・保護の側面だ。IWC. Curated.は、後者の意味合いが強いとデイヴィッド・セイファー氏は語る。

 「Curated(厳選された)と称しているように、IWC. Curated.は、IWCミュージアムの専門家が特別な時計を選定、調達しています。選ばれるのは、主にブランドの歴史やウォッチメイキングにおける伝統を象徴する重要なモデルです。ミュージアムの専門家が選定や調達に携わりますが、ミュージアムに展示する時計とは異なります。私たちは国際博物館会議(ICOM、International Council of Museums)という組織に所属しており、そのICOMが定める基準やガイドラインでは、ミュージアムピースを取引することは認められていません」

 IWC. Curated.では、ブランドが誇る歴史的価値を持つ特別なコレクションが用意される。だが、それらは単に希少性や珍しさといった収集価値の高い時計ばかりが選ばれるわけではない。

インヂュニア SL Ref.1832 1019万4800円(税込)

ジェラルド・ジェンタが1970年代にデザインした一体型ブレスレットスタイルの初代インヂュニアSL。1976年から1983年にわたり製造されたが、ステンレススティール製モデルの製造数は598本だった。

 「ミュージアムピースとは選定、調達の視点が異なります。例えば、特定の時代に焦点を当てるといったことですね。IWC. Curated.のスタートに際して、インヂュニアのSSモデルを中心に用意しました。今年はインヂュニアを中心に新作を発表しましたし、銀座ブティック向けにヨットクラブ I Ref.1811(すでに販売済)を用意したのは、1960年代後半〜70年代に日本でとても人気があったことを知っているからです。つまり、そうしたローカルな歴史の一端を伝えるというようにストーリーテリングできるモデルや、市場に合わせた時計にスポットライトを当てています。販売が一義的な目的ではなく、お客様にブティックで現在販売されているコレクションの背景となる歴史、IWCを通じて伝えたい特別な物語を体験していただくことが目的なのです。もちろん収集価値の高いモデルが中心になりますが、お客様の好みや趣味はさまざまです。私たちとしては、いろいろな視点から価値のある時計を市場に届け、皆様の期待に応えたいと考えています」

インヂュニア Ref.666 AD 313万8080円(税込)

1955年にリリースされた初代インヂュニア。軟鉄製の耐磁ケースとダイヤルでムーブメントを覆うことで、パイロットウォッチのマーク11と同じ8万A/mの耐磁性能を確保した。まだ市場でも見かけることができるが、ブレスレットが伸びてしまっているなどコンディションのよいものは多くない。

ヨットクラブ I Ref.1811 202万4000円(税込)

1967年に誕生したヨットクラブのファーストモデル。二重耐震装置によって衝撃を吸収するCal.8541を採用したほか、高い堅牢性と10気圧の防水性能を備え、スポーティなモデルとして登場した。デザインは、のちにインヂュニア SLを手がけるジェラルド・ジェンタである。

 IWC. Curated.で扱うのは、1970年代までのいわゆるヴィンテージウォッチだけに限らないとセイファー氏は話す。

 「今回はインヂュニアにフォーカスしたため、その年代(1960〜70年代)の時計が中心になりましたが、ポルシェデザイン by IWCの時代(1978年〜97年)のクロノグラフ1やコンパスウォッチ、あるいはオーシャン 2000などもIWC. Curated.の対象になるでしょう。ほかにも1990年代のパーペチュアル カレンダーも取り上げたいと考えていますし、とてもユニークでIWCの歴史を語るような時計であれば、年代にはこだわりません。個人的には、2000年前後にとても人気が高かったGSTコレクション(G=Gold、S=Stainless Steel、T=Titaniumの頭文字を組み合わせたかつてのスポーツウォッチシリーズ)なども興味深い対象です。それに、これから時計をコレクションしようという方々には、単に収集して終わりではなく、日常的に着用して欲しいと考えています。やはりいい時計はぜひ着用してみんなに見せてもらいたい。ですからコンディションもきわめて重要です」

Courtesy of IWC

 セイファー氏が語るように、IWC. Curated.では現在販売されているコレクションと変わらない保証を提供する。つまりブランドが通常提供している購入から2年以内の国際保証に加えて、その期間内に購入後オーナーがMy IWC(国際保証延長プログラム)に登録することで、国際保証期間が2年からさらに6年間延長され、最大で8年になるというのだ。一般的なセカンダリーマーケットのヴィンテージウォッチの場合、保証が付くのは6ヵ月から長くても1年。これはIWC.Curated.ならではのメリットと言えよう。

 「最大8年の保証を提供しているため、その保証にふさわしいコンディションに修復することは、私たちが最も気をつけているところです。お客様に着用していただく際に、たとえヴィンテージウォッチであっても、まるで新品のように時を刻むこと。これが重要です。お客様にはIWCの時計をコレクションボックスに収めたまま、あるいは投資目的で購入するのではなく、ぜひ着用して楽しんでいただきたい。そのために時計として正常に動くことが第1条件になります。幸い、スペアパーツは純正品がたくさん残っていますし、修復の技術やノウハウも社内にあります。どうしても機能上の問題で、当時の純正品ではなく新しいものを使わざるを得ない場合を除いて、できる限りオリジナルパーツで修復を行っています。なぜなら、それが当時のコンディションに一番近い形に戻せると考えているからです」

Courtesy of IWC

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 可能な限りのオリジナルパーツを用いてメンテナンスされた個体を手に入れることができる。これは一般的なヴィンテージショップではなかなか実現が難しい、IWC. Curated.プログラムだからこその大きなアドバンテージだ。魅力はそれだけではない。IWC. Curated.で取り扱う商品は、修復が完了すると、その時計が本物であること、およびその出自を記載した公式認定書が発行され、その内容も充実している。

 「IWCでは製造年と販売年はイコールと定義されていますが、公式認定書には製造年(販売年)や販売場所など、できる限りの情報を盛り込んでいます。それだけではありません。たとえ記載がない場合であっても、お客様が知りたい情報に対してはできる限り何でもお答えするように努力します。それが一般的なヴィンテージウォッチとの違いです。IWCが製作したヴィンテージウォッチを購入したいとお考えの方にとって、ブティックに来店された後も販売スタッフと話ができ、そしてより詳細な質問にもお答えできるということです。こうした顧客関係の構築こそが、時計を購入するお客様にとって極めて重要な要素になると考えているからです」

 確かなヴィンテージウォッチを購入したいと考えている人にとって、きわめて魅力的なIWC. Curated.だが、取り扱う商品はどのように確保しているのだろうか?

Courtesy of IWC

 「本当にさまざまな入手先がありますね。ただし、オンラインオークションは難しい面があります。オークションではさまざまな関係者が時計を狙っていますから。私が本当に頼りにしているのは、IWCコレクターやIWC関係者、そしてミュージアム関係者との確固たるネットワークです。IWC. Curated.のコレクションは、そういった方々から入手しています。なぜなら、特定の時計を探しているわけではなくても偶然の出合いがあったりするからです。誰かが“この時計を所有しているけれど、あなたにとって価値があるもの?”と声をかけてくれるのです。私たちはとても恵まれた立場にあり、多くの人々が私たちに接触してくれる。これはミュージアム、IWC. Curated.双方にとって有益です。そうした方々は誰でもいいから売りたいと思っているわけではなく、自分が大切にしてきた時計はやはり同じように大切にしてくれる人に売りたいと思っています。時計が信頼できる人物の手に渡ったことを知ることができるというのは、きわめて重要なことなのです。つまり収集家から収集家へ、私たちが仲介役となるわけです」

1985年発表のダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー・クロノグラフ(Ref.3750)。クルト・クラウス設計による永久カレンダーを搭載したIWC初のモデル。参考商品。 Courtesy of IWC

マーク11。1948年から英国空軍(RAF)のパイロットや航法士向けに作られた時計。この時計のためにIWCはムーブメントを磁場から保護する軟鉄製インナーケースを初めて開発した。参考商品。 Courtesy of IWC

 IWC. Curated.のコレクションはきわめてエクスクルーシブな厳選されたごく少数のもので、多くても20〜30本ほどに留まるという。しかも展開する店舗は世界で4店舗。すなわちスイス(シャフハウゼン)、イギリス(ロンドン・バタシー発電所)、ドバイ(ドバイモール)、そして日本(東京・銀座)にある一部のブティックのみだ。購入できるブティックは限られるが、それはIWC. Curated.コレクションにおいても現行コレクションと同様、すべての顧客に共通した高い水準のサービスを提供するためだという。

Courtesy of  IWC

 そんなブランドの“特別”が詰まったIWC. Curated.コレクションだが、気になるのは価格である。他ブランドのCPOプログラムにおけるラインナップを見ていると、その多くは市場の価格相場からするときわめて高額になる。この点についても、セイファー氏はていねいに答えてくれた。

 「現在の市場価格や、希少性を加味したプレミアム価格などを基準にするのではなく、お客様と私たち双方にとって公平な価格設定を目指しています。IWC. Curated.は利益目的のプロジェクトではありません。ヴィンテージウォッチを完璧な状態に仕上げることで、IWCの持つ修復の技術力を訴求すること、そして歴史やIWCのブランド体験を通じて特別な物語を伝えることを大切にしているのです」

 そのほか、IWC. Curated.の詳細についてはこちらから。

特に記載のないものは、すべてPhotographs by Kyosuke Sato.