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アンティコルム ジュネーブ オークション ジャパンプレビューで見つけた注目ロット10選

11月8〜9日に開催されるアンティコルムの「Important Modern & Vintage Timepieces」オークションプレビューで見つけた、希少な時計の数々。

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 秋のオークションシーズンが到来し、明日からジュネーブではフィリップスとアンティコルムのオークションが開催される。それに先立ち、アンティコルムのオークションプレビューに訪れる機会を得た。

 アンティコルムのオークションは毎回膨大なロットが登場するのが特徴だが、11月8〜9日に開催される「Important Modern & Vintage Timepieces」オークションでも、実に600点を超える膨大なロットがカタログに掲載されている。そのすべてについて解説することはできないが、プレビューで得られた情報をもとに注目すべきロットやユニークなロットのいくつかを撮り下ろし写真と共に紹介しよう。もちろん、すべてのロットの詳細を知りたいという方は、オンラインカタログにじっくりと目を通していただきたい。

Lot 674

Lot 232

 今回のオークションカタログの表紙にも登場した、高額落札が期待される4ロットの詳細は後ほどしっかり解説するとして、今回のオークションに先立って行われたプレビューで見つけた注目すべき時計を紹介したい。それが、記事のトップでも掲載しているLot 674、ロレックスのGMTマスター Ref.1675/8だ。ご覧のとおり、ただの金無垢GMTではない。ダイヤル6時位置に金の鷹(クライシュの鷹)のエンブレムとシェイク・アル・マクトゥーム(Sheik Al Makt0um)の署名が入った、きわめて希少なモデルなのだ。

 カタログエッセイによると、この時計は最近中東で発見されたものだという。ダイヤルだけでなく、ケースバックに金の鷹の精巧なエングレーブが施され、さらにアラブ首長国連邦とシェイク・アル・マクトゥームの署名も刻まれている。この署名はシェイク・ラシッド・ビン・サイード・アル・マクトゥーム(Sheikh Rashid bin Saeed Al Maktoum, 1912-1990)を指している。UAE建国の父のひとりとして知られている人物で、1958年から1990年までドバイの統治者を務め、第1副大統領、第2首相を歴任するなど、ドバイを現在の世界的な経済大国へと発展させるために尽力した。

 ケースバックの署名は“Saad”となっているようで、本来であれば“Said/Saeed”が正しいそうだが、アンティコルムがこの理由について販売店であるアハメド・セディキ(“Seddiqui”の名が保証書と冊子に手書きで複数回記載されている)に確認したところ、同社のアーカイブにはこの時計が現地販売されたものとして登録されていることが確認されたが、同時にこの時計がシェイク・アル・マクトゥームに直接贈られたものではなかったことも判明している。1970年代のロレックスのこうした中東向けのモデルでは、刻印に文法的な誤りが見られることがしばしばあるそうで、それが贈られることがなかった理由なのではないかと推察されている。

 とはいえ、この時計はアハメド・セディキを通じて納入されたものであり(保証書と冊子の両方に記載)、この時計の来歴を裏付けている。付属のオリジナル保証書には、リファレンスとシリアルナンバーに加え、非常に珍しいことにキャリバー、ムーブメントナンバーも刻印されている。さらに保証書には、アンドレ=ジャン・ハイニガー(Andre-Jean Heiniger, 1964年から1998年までロレックスの取締役を務めた)の刻印と署名まで入っており、これはこの時計が本来はロレックス・ジュネーブから陛下へ直接贈呈される予定だったことを示唆しているのではないかと推察している。

 またオリジナルのボックスには、UAEアラブ首長国大学医学保健学部(CMHS/College of Medicine and Health Sciences, 1976年創立。時計が販売された1977年とほぼ同時期)の紋章と、カドゥケウスのシンボル(医療の象徴)があしらわれている。前出のシェイク・アル・マクトゥームは 1970年10月に保健医療局を設立し、教育と専門職研修に重点を置くことで、ドバイの医療を大きく発展させたことでも知られているほか、1972年に開院したジュメイラ(ドバイにある高級住宅街・リゾートエリア)初の医療施設であるイラン病院に土地を寄付した。こうした功績を讃えて贈呈される予定だったのではないかというのが、アンティコルムの見解であるようだ。

 いずれにせよ、このGMTマスター Ref.1675/8はこれまで発見された例はなく、きわめて珍しい時計であることは間違いない。その期待も反映しているのか、予想落札価格は、20万~40万スイスフラン(日本円で約3800万〜7600万円)と期待値は非常に高い。そのほか、ロットの詳細はこちらから。

 そしてもうひとつのGMTマスターも紹介しておこう。Lot 232はステンレススティール製のGMTマスター Ref.1675だ。こちらもただのGMTではなく、ダイヤル6時位置にサウディア(サウジアラビア航空)のロゴが施されている。1979年、パンナム航空とサウディアは、サウジアラビアの東部州に位置する都市ダーランとニューヨークを結ぶ共同運航を実施しており、このモデルはその際に要人への贈呈品として作られたのではないかとカタログエッセイでは考察されている。ただし、ケースバックのステッカーは擦り切れているほか、箱や保証書などもなく、時計単体での出品なのだが、予想落札価格は7万~14万スイスフラン(日本円で約1330万〜2660万円)とされており、希少な時計であることがうかがえる。そのほか、ロットの詳細はこちらから。

 さて、オークションカタログの表紙に登場した4モデルについても駆け足になるが紹介しよう。


Lot 290:パテック フィリップ Ref.3450 永久カレンダー

 1981〜1985年にかけて、Cal.27-460 QPBを搭載して244本が製造されたパテック フィリップのRef.3450 永久カレンダー。ピンクゴールド、ホワイトゴールドケースもごくわずかに作られたが、本個体は最も数の多いイエローゴールド製。Ref.3450は、細かく分類すると3つの世代に分けることができる。文字盤に設けた小窓からうるう年を赤色で表示するのが第1世代。第2世代はうるう年をアラビア数字で、第3世代はうるう年をローマ数字で表示する。この個体は1985年製の第3世代モデルとなる。同年はRef.3450の最終製造年で、この年を最後にディスコン。翌1986年にはより小型・薄型のRef.3940が発表された。

 Ref.3450は傷がつきやすい金無垢モデルゆえ、ケース全体に入った小傷がやや目立つ。とはいえ、同リファレンスは特にラグ部分が磨耗や研磨で薄くなる傾向にあるが、厚くて角張ったラグ、側面のふたつの深く鮮明なホールマーク、そしてケースバックのノッチの“18K”刻印も鮮明に残っており、その状態のよさがわかる。本個体は日本のコレクターからの出品だそうで、その状態からもていねいに扱われてきたことがうかがえる。

 予想落札価格は、12万~18万スイスフラン(日本円で約2280万〜3420万円)。そのほか、ロットの詳細はこちらから。


Lot 691:パテック フィリップ Ref.1463 “タスティトンディ”

 こちらはパテック フィリップの防水クロノグラフとして名高い、Ref.1463 “タスティトンディ”だ。最近イタリアで発見された個体だというが、同個体はYGでもPGでもなく、最も希少なステンレススティールケース仕様となっている。フランソワ・ボーゲル社の防水ケースを備えたこのクロノグラフは、1940年に登場し、1965年ごろまでラインナップに残っていたが、25年間で製造されたのはわずか750本程度。そのほとんどはYG製で、SS製はごくわずかだったと言われている。

 オーナーの家族から出品された個体で、1962年ごろに製造されたもの。ローマンインデックスとロングインデックスを組み合わせたオリジナルのダイヤルに、オリジナルのプッシャーとリューズを備える。生産終了間際となる製造年から、このモデルが1463シリーズの最終シリーズのひとつであることが分かる。保存状態は良好だったようで、販売された当初のディテールがうかがえるコンディションを保っているところは注目すべきだろう。

 予想落札価格は、10万~20万スイスフラン(日本円で約1900〜3800万円)。そのほか、ロットの詳細はこちらから。


Lot 233:ロレックス Ref.6241 コスモグラフ デイトナ “ポール・ニューマン”

 Ref.6241は、バルジューベースのCal.722-1、ブラックアクリルベゼル、ポンププッシャー、小さな6mmサイズの巻き上げリューズが特徴。1966〜69年(1965〜70年説もある)にかけて製造され、当時の推定製造数は約2000本。そのなかでもごく少数のみが、いわゆる“ポール・ニューマン”ダイヤルを備えていたとされている。同個体は“ポール・ニューマン”ダイヤルのなかでも、特に人気の高いブラックにホワイトのインダイヤル、そして赤巻き(文字盤外周の目盛りが赤い)を合わせた逆パンダダイヤル仕様。製造年はケースのシリアルナンバー(2041098)より1969年と推察され、1968年製の純正リベットブレスレット(7205/60)を合わせる。日本のコレクターからの出品で、夜光の脱落もなく、良好な状態をキープしている。 

 予想落札価格は、13万~19万スイスフラン(日本円で約2470万〜3610万円)。そのほか、ロットの詳細はこちらから。


Lot 673:ロレックス Ref.6264/6241 コスモグラフ デイトナ “ポール・ニューマン”

 手巻きのコスモグラフ デイトナのなかでも特に製造期間が短く、希少と言われるRef.6264の“ポール・ニューマン”だ。Ref.6262と共にポンププッシャーを備えた最後のリファレンスで、1970年の1年間のみ製造された。Ref.6264のSSモデルは、前出のRef.6241よりも少ない1700本程度と考えられている。Ref.6264自体も少ないが、やはりその希少性を高めているのは、言わずもがな、パンダの“ポール・ニューマン”ダイヤルだ。

 さらに注目すべきは、オークションに初めて登場する個体だという点だ。30年以上前に日本のコレクターが信頼の置ける人物から購入したもので、今回初めて市場に登場することとなった。リファレンスからすると、純正リベットブレスレット(7205/60)か、いわゆる“巻き”ブレスレット(7835/271)が付いていたはずだが、本個体は1968年製の前者のリベットブレスレットが付いている。さらに重要なのは、経年変化こそ見られるものの、針とダイヤルの夜光が残ったきわめてコンディションのいい個体ということである。

 予想落札価格は、13万~18万スイスフラン(日本円で約2470万〜3420万円)。そのほか、ロットの詳細はこちらから。


Extra

Lot 596
A.ランゲ&ゾーネ Ref.151.021 ランゲ(ウェレンドルフ製ブレスレット)。2000年代製。18Kイエローゴールドケース(38.5mm径)。予想落札価格は、2万5000〜3万5000スイスフラン(日本円で約475万〜665万円)。そのほか、ロットの詳細はこちらから。

Lot 615
ヴァシュロン・コンスタンタン Ref.4241、トリプルカレンダー。1940年代製。18Kピンクゴールドケース(36mm径)。予想落札価格は、1万〜1万5000スイスフラン(日本円で約190万〜285万円)。そのほか、ロットの詳細はこちらから。

Lot 620

オメガ Ref.2367-3 クロノメーター。1944年頃製造。ステンレススティールケース(36mm径)。予想落札価格は、2500〜4500スイスフラン(日本円で約48万〜76万円)。そのほか、ロットの詳細はこちらから。

Lot 669
オーデマ ピゲ Ref.57003ST/O/0789ST ロイヤル オーク25周年記念モデル。1997年製造(100本限定)。ステンレススティールケース(33mm径)。予想落札価格は、7000〜1万3000スイスフラン(日本円で約133万〜247万円)。そのほか、ロットの詳細はこちらから。

Photographs by Kyosuke Sato, Yusuke Mutagami.

掲載した時計は、11月8〜9日にジュネーブで開催される「Important Modern & Vintage Timepieces」オークションに出品されます。その他オークションの詳細は、アンティコルム公式サイトをご覧ください。

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