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私は「時計業界人」としての1年を迎えようとしているが、ようやく実機を十分に見て、頭のなかでリファレンス集を構築して、より見識を持って物事をふるいにかけるようになった。それでもまだ1年めなので、腕にはめたとき驚いてしまうことも多いが、「これだ!」というものを見つけるのはかなり上手になった。そして、私の目を輝かせ、金銭的に無謀にさせる傾向がある時計もわかってきた。
私はWatches & Wondersで自分の直感を試してみたが、概して以下のものを見分けるのが上手くなったと思う。A)一度つけたら気に入る時計、B)私向きではないが評価できる時計、C)ごく少数の熱烈的なファンに愛される時計(私は含まれない)。しかし、シャネルのブース(正直、Watches & Wondersの最大の驚きは、ブースがコミケのようなものではなく、実際にフルサイズの高級ブティックだったこと)にふらりと立ち寄り、J12 X-RAY レッド エディションを見つけたとき、まったく判断に困っている自分に気づいた。
J12 X-Ray レッド エディションのケースとブレスレットにはクリスタルサファイア(2020年のJ12 X-RAYで採用済み)が使用され、シースルーながら重厚感のある仕上がりとなっている。なるほど。18Kホワイトゴールドのベゼルには46個のルビーがぎっしりと詰まっていた。ほう。X-RAYの名の通り、かなり色々な角度から内部を覗くことができ、自社製ムーブメントCal.3.1のパーツがビュイーンと動くのを見ることができる。面白い!
少し考えれば、全体のパーツはある程度理解できるようになる。シャネルは以前にもこのムーブメントをX-RAYに搭載しており(キャリバー3ウォッチのCal.3ムーブメントをベースにしている)、プレートとブリッジはサファイアクリスタル製だ。そしてシャネルの新しい高級時計レッド エディション コレクションには、ルビーが使われている。赤はシャネルを代表する色のひとつであり(シャネルについての知識を深めたい方。ベージュ、黒、ゴールド、白もそこに含まれる)、ブランドの創始者と結びついている。ガブリエル・シャネルの有名な言葉(プレスリリースでも親切に教えてくれた)に、"悲しかったり失恋したときは、気分を高め、ドレスアップし、もっと口紅をつけて挑みなさい"とある。
この言葉はインスタグラムの自撮り写真のキャプションによく使われているだろうが、新しいJ12にも非常にふさわしいと思う。この時計は、姉妹機よりもかなりドレスアップされているように感じる。J12 X-RAYはシャネルが時計作りに真剣取り組んでいることを証明するためにデザインされ、ほかのJ12の時計は最高のセラミックを使用していることで知られているが、このモデルは、シャネルのさらに本格的ウォッチメイキング(セラミック、ボーイフレンド、前述のCal.3)と、時間を知らせる精巧な装飾品の境界線上にあるのだ。ムーブメントでは脇役に甘んじているルビー(注:もちろん外装で用いられるものとは別物)が、このモデルでは前面に出てきているのは、少しばかり小粋な感じがしないだろうか? しかも、すべてホワイトゴールドやクリスタルで作られているなかで。
しかし、それはすべて知的な訓練なのだ。私がこの時計で迷ったのは、この時計をどうつけるか、つけたらどう感じるかということだった。ビニールの透明サンダルに馴染んだ世代の私は、ノスタルジーに浸るミレニアル世代と同じように、シースルーのアクセサリーが大好きだと思われているだろう。透明な時計、特にブレスレットタイプの時計は、自分がその一部であるかのように感じられ、また時計が自分の一部であるかのように感じられるのだ。私がつけたのとティファニー・ウェイドがつけたのとでは、別のものに見えた。
実際に手に取ると、サファイアクリスタルが光と戯れてゴージャスな雰囲気だ。一瞬にして、透明なブレスレットが唯一の合理的な選択であることがわかる。アリゲーターストラップでは、この時計はまったく意味をなさない。
38mmというサイズは、私が望むより少し大きめだがモンスターという感じはしない(私の手首が太めなのは認める)。サファイアのおかげで、視覚的にも物理的にも軽く感じられる。つけて楽しく、見て楽しい。そして絶対に私の時計にはならないだろう。しかし、私がインスタグラムのアカウントを持たない、パーティー好きの「イットガール」になれる別の世界があるなら、この時計はあり得る。
この時計は、クラシックでグラマラスな赤いリップではない。大胆かつ意図的に、その存在と自分のグラマラスさをアピールする、反抗的なチークのひと塗りに近いものだ。シャネルが長年にわたって着実に積み上げてきた時計製造の証は、独自の方法でブランドに重要な地位を与えた。そっくりなスティール製ウォッチが溢れるなか、この時計はあえて他者と違う道を行き、真剣に扱われることを要求し、徹頭徹尾シャネルであることを主張しているのだ。
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Photos, Tiffany Wade
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詳細は、シャネルのサイトをご覧ください。