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Hands-On ミルコ Type-03、日本のマイクロブランドは色でストーリーを表現する

着物の色が時計に使われているのを見たことがあるだろうか。


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大手ブランドがようやく時計にひと通りの色を使う試みを始めたかと思えば、一歩先を行く日本のマイクロブランドがあった。以前にも取り上げたことのあるミルコが最近発表したType-03は、おそらくかつて時計に使われたことがない5つのカラーで展開されているのだ。

 この5色は、日本の伝統的な衣服である着物に多用されてきた色だ。和名は 胡桃染(くるみぞめ)、舛花色(ますはないろ)、茅色(かやいろ)、市紅茶(しこちゃ)、栗梅(くりうめ)。アースカラーのパステルとでも言うべき、渋く淡い色合いだ。

 ミルコの仕掛け人である平岡雅康氏は、“アルマイト”処理を施すことで、この珍しい色調を実現した。日本でのアルマイトは、他国では“アノダイズド”とも呼ばれている。Type-03のベゼルインサートのアルミニウムに見られるように、金属に酸化物の層を蒸着させることで腐食や磨耗から時計を保護するカラーコーティングができるのだ。このアプリケーションでは、ベゼルとダイヤルをマッチングさせ、統一されたカラーテーマを作り出すことができる。

 Type-03は時間表示のみで、ダイヤルは余分なディテールを排除している。6時位置にMircoのロゴが見えるが、そのほかはすっきりとさせ、ダイヤルカラーを際立たせている。バトン型のアプライドインデックスとスティックハンドは、セイコーの62MASのクラシックな美しさを彷彿とさせるが、セイコー初のダイバーズへのオマージュではないことは確かだ。Type-03は、モダンなミニマムダイバーデザインとして、独自の存在感を示している。

 ケース形状は“クッション”的なキャラクターを持つが、ラグはサブマリーナーのような位置にあり、ドクサのようなモデルとは少し違う。ケースデザインは、Type-02のがっしりとしたケースをベースに、70年代的と言うより、よりコンテンポラリーなデザインになるよう平岡氏が試行錯誤を重ねた結果生まれたものだ。42mmというサイズだが、この短くてがっしりしたラグは手首の細めの人にもよく馴染む。セイコーのSPB143を試着された方なら、Type-03のつけ心地はわかるはずだ。

 時計に付属している20mmの5リンクブレスレットは手首に感じられるくらいの重さを持っており、マリンスポーツ用にNATOストラップにつけ替えるのはすばらしい夏の戦略だが、うまく時計の重量バランスをとっていると思う。200m防水は、99%の人が手を出すものに対して十分な防水性だ。

 この時計に搭載されているのは、シチズン傘下のミヨタが手がける日本製のCal.9039だ。ミヨタのプレミアムラインに属するこのキャリバーは、デイト機能を搭載しないことをコンセプトにして作られている。リューズを引き出しても日付が表示される“ゴーストポジション”はなく、巻き上げと時刻合わせのふたつのポジションがあるだけだ。

 一般的に使われているCal.9015は日付機能を備えており、マイクロブランドでは日付機能を廃して時間表示のみの時計としてムーブメントを作り直すことも珍しくはない。ミルコは正しい選択をし、ミヨタのCal.9039を採用した。42時間という十分なパワーリザーブはもちろんのこと、メンテナンスも簡単だ。交換部品は広く出回っており、有能な時計職人であれば誰でも修理することができる。精度は日差-10/+30秒と報告されているが、調整すればもっといい精度が得られるだろう。

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 Type-03の大きな強みは、セイコーやシチズンのダイバーズウォッチのように優れた作りと信頼性、メンテナンス性を持ちながら、少しだけ違うということだ。ユビキタスではないのだ。現在、日本でこの時計が展示されている唯一の小売店は、ブランドの故郷であるさいたま市大宮区にある小さなサロンだけである。それ以外のミルコの時計は、eコマースショップで購入することができる。

 そのなかで私が選んだのは「胡桃染」モデルだ。英語では“walnut-dyed”と呼ばれ、16進数のカラーコードは「#9f7462」。この時計が魅力的だと思うのは、この色が時計製造に使われているのを見たことがないからだ。ミルコの創業者である平岡氏が、この5色は日本の文化にとって重要な色ですとメールで言っていたが、「胡桃染」の文化的応用について掘り下げてみたところ、そこにはすべての色彩論の世界が広がっていたのだ。

 ダニ・カヴァラロ(Dani Cavallaro)著「日本の美学とアニメ:The Influence of Tradition」のなかで著者は、「胡桃染」は日本の芸術史の黄金時代にまで遡る、極めて日本的な色彩の一部である多くの暖色系の色とともにアニメでよく使われていると述べている。「胡桃染」と一緒に使われる色には、「獅子色(ししいろ)」「洗朱(あらいしゅ)」「鴇柄茶(ときがらちゃ)」「黄土色(おうどいろ)」「朽葉色(くちばいろ)」「薄香(うすこう)」「洒落柿(しゃれがき)」などがある。時計はただの計時道具ではなく、異文化や歴史に触れることで新たな発見をもたらしてくれるものだということを、Type-03のような時計は何度も教えてくれる。

 各色100本ずつの限定生産で、価格は22万円(税込)だ。ミヨタ製のダイバーズウォッチとしては少し高価に思えるかもしれないが、私には合理的な価値提案に思える。このような時計を作るには何が必要なのか、パッケージ全体を考えてみてほしい。そしてヨーロッパやアメリカから無数のマイクロブランドが生まれ、そのすべてが非常に似たブランド視点を持っていることを考慮してみてほしい。日本のマイクロブランドは何社あるだろうか? ごくわずかだ。そのなかで最も人気があるのは同じくミヨタ製ムーブメントを採用しているクロノトウキョウだが、少し高めの価格を設定だ。

 Type-03は、ミヨタ製ムーブメントを採用した時計に対する我々のコミュニティの認識を変えることができるいい例だ。ミヨタのムーブメントは、必ずしも“格安の”時計にだけ使われているわけではなく、より大きなパッケージの一部として理にかなっている場合もあるのだ。ミルコの時計は優れたビルドクオリティが特徴で、セイコー プロスペックスのダイバーズのような時計の価格が着実に上昇しているなか、22万円(税込)という価格は価値ある選択肢だと思う。小さなブランドならではの魅力にあふれたデザインに、少しだけ余計にお金を払っていると言うことだ。

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ミルコの詳細については、公式ウェブサイトをご覧ください。