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2004年にウブロのCEOに就任したジャン-クロード・ビバー氏は、その熱意と飽くなき挑戦心でこの会社の経営を引き継いだ。そして、その年に発表されたビッグ・バンは、まさに衝撃的な出来事となった。宇宙創世を文字通りに表現すること以上に大きなことがあるのだろうか?
ビッグ・バンは、まるでスペースシャトルのようにウブロの名を世に知らしめた。特にヒップホップやスポーツシーンで、ウブロは憧れのような存在となった。しかし、経済的な成功やポップカルチャーでの知名度にもかかわらず、時計愛好家たちはビッグ・バンやそのブランドを鼻であしらうようになった。45mmを超えるケースサイズやファンキーなデザインに対し、ウブロを酷評するのが当たり前のこととなり、セラミックケースや超モダンなスケルトン文字盤を嘲笑うのだ。4時半位置の日付窓を嫌うのと同様に、このことは決まり文句のようになった。
誰もが同じものを愛用しなければならないという、画一的な世になりつつあったのだ。そのなかで、40mm以下の腕時計は、過去を思い起こさせる回顧デザインを代表するものだった。80年代のディスコのように、大きな時計は消えていった。しかし愛好家たちは、ビッグ・バンではなく、ビバーをまだ愛していたのだ。
だが、ウブロをこのように見ることは、全体像を見逃していることになる。ウブロが作る時計はビッグ・バンだけではない。確かに、この会社のタイムピースの多くは巨大なプロポーションを誇っている。しかし、ご存知だろうか、そうでないものもあるのだ。
実は私は、今年の初め、LVMH ウォッチウィークで一緒に過ごした42mmのクラシック・フュージョン クロノのことをよく思い出す。42mmというサイズは、私の手首に収まる限界の大きさだ。しかし、この時計は、ウブロがビバー以前の歴史を思い起こさせるようなシンプルな時計を作り続けていることを証明している。現代のコレクターたちは、この時計について語らないことにしているようだ。
クラシック・フュージョンシリーズには、さまざまなサイズのクロノグラフや3針モデルがあり、それぞれがラバーストラップを採用した最初のウブロモデル、クラシック・オリジナルへのオマージュを込めたモデルとなっている。
しかし最近、ある時計が私の強い興味の対象になった。38mmのクラシック・フュージョン チタニウムだ。街中の広告やブティックのポスターで見かけるような時計ではない。実際、このブランドのウェブサイトでそれを見つけるには、忍耐力が必要だ。この時計を見つけるには、クラシカルなプロポーションのウブロを見つけたいと思わなければならない。私はそうした……そして、見つけた。
最近、38mmのチタン製ウブロ クラシック・フュージョンと2週間をともにしたが、それは私がこのブランドと時計収集について知り、考えることすべてを変えてくれた。これを読めば、あなたも同じように感じるかもしれない。
では、この時計の何がそんなにクールなのか?
すべてだ。私は、これが伝統的な愛好家がウブロにやって欲しいことを体現していると思っている。クラシック・フュージョンラインは、オリジナルのウブロのデザインをリミックスしたようなものだ。このコレクションでは、特に3針のサブコレクションで、33mmから45mmまでのサイズが用意されている。
38mmのチタニウムを腕につけたとき、私はヴィンテージピースを身につけているような気がした。チタンの軽さ、シンプルな文字盤、そしてケースサイズが、まさに1970年代の腕時計を思わせるものだった。ロイヤル オークやノーチラスとのデザイン的な共通点は、時計の専門家でなくともわかるだろう。しかし、これらの時計は、頭金なしで家一軒買える価格で取引されているのだ。しかもキャッシュで。
これなら、大げさな表現ではなく、ヴィンテージのロイヤル オークをストラップでつけているような感覚を税込価格84万7000円で手に入れられる。もちろん、私の手首は約16cmだが、同じような手首のサイズでウブロに興味がありながら、すべての時計がまるでシカゴ風ピザのようなサイズだと思い込んでいる人は非常に多いのではと思う。
ほとんど重さを感じさせないこの時計を装着し、文字盤を見る。シンプルすぎるほどシンプルだ。サンレイ仕上げの黒い文字盤には、分表示のないアワーマーカーのみだ。3本の針と日付表示窓、そして2行のテキスト。夜光はない。
最近の「Hey, HODINKEE」のエピソードで、私はミニッツトラックのない時計に対して、「1時間ごと、あるいは5分ごとに時計をセットしようとしない限り、時刻合わせをするのは不可能だ」と非難した。私は今、オニキス文字盤を備えたヴィンテージのロレックス デイデイトのように、文字通りマーカーがない時計をフォーカスしていることを認めよう。このウブロにもミニッツマーカーがあればよかったと思うが、この時計はスタイルがすべてなので、このままでもいい。
ほかの面でも不完全な部分はある。船の舷窓をイメージしたベゼルデザイン(水中をテーマとした時計)なのにねじ込み式リューズではなく、防水性能50m。オリジナルモデルにはラバーストラップが付属していた。このモデルもラバーストラップだが、私が試着したのはレザーストラップ仕様だった。
水中使用に耐えうる機能をすべて備えていないにもかかわらず、なぜかこの時計は私の心を打つのだ。私がこの時計を見ると、自信に満ちた顔で見つめ返してくれる。この時計は、あなたがダイビングに連れて行ってくれないことなど気にしない。パテックやAPでダイビングをするだろうか? それはないだろう。そこがポイントだ。
ウブロは、高級スティール(またはチタン)製スポーツウォッチのパンテオンでもっと上位に位置づけられるべきなのに、見落とされてしまったのだ。ビバーは、ウブロをダメだと思ったから引き継いだのではない。彼は可能性を見いだし、彼のリーダーシップのもとで成功を収めたのだ。ただ、時計愛好家たちがそれに従おうとしなかっただけなのだ。
この時計で学んだことは、ノイズを排除し、好きなものだけを探そうとすると、意外な発見があるものだということだ。私はウブロに深く入り、そして次のことを見出した。これは、誰もが憧れ、手の届かない高級スポーツウォッチの20分の1の値段で、現代の時計製造の先見性に支えられた真のレガシーを持つ時計なのだ。時計コレクターは常に、見逃した隠れた名品や、ほんのわずかなお金で購入できたかもしれない製品を振り返り探している。友人やバーゲンハンターの皆さん、素晴らしい38mmのチタン製ウブロが、発見されるのを待っていますよ。