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Lead image, Seiko SBDC169.
ダイバーズウォッチというカテゴリーにおいて、セイコーほど密接な関係を持つ時計会社はないだろう。SKX007などの代表的なモデルや、スモー(SUMO)やモンスター(MONSTER)などの大物らしいニックネームを持つこれらの時計は、熟練のコレクターから初心者まで、あらゆる人を魅了する驚くほど普遍的な魅力を持っている。
しかし、アイコンを進化させることは難しいかもしれない。セイコーのダイバーズウォッチは毎年数え切れないほどの新作が発表されているが、まったく新しいデザインやコレクションに出合うことは、どれくらいの頻度であるだろうか。1990年代後半から2000年代前半のように、セイコーから予想外のまったく新しいケース形状を目にすることはなくなった。しかし、5年という短い期間で瞬く間に定番となったコレクションがある。
プロスペックスのSave The Ocean(STO)シリーズのことだ。2018年に初めて登場したこの特別仕様コレクションは、エキゾチックなダイビング旅行で出合うかもしれないさまざまな海洋生物にスポットを当て、古いセイコーのデザインを毎年更新している。これまで、ザトウクジラをイメージしたダイヤルのセイコー“タートル”、ペンギンの足跡をリフティングしたダイヤルのセイコー“モンスター”、さらにはマンタをダイヤル表面に映し出すセイコー“サムライ”が登場した。
このテーマ性のあるアプローチは、楽しいものでないとすれば、そう、ちょっと鼻につくし、偽善的と思われかねない。セイコーのSave The Oceanシリーズは、通常3桁ドル台半ばの価格で、私が毎年最も楽しみにしている夏のリリースのひとつとなっている。この5年間で2本購入しているので、自分がいかにその魅力に弱いかはよくわかっているのだ。セイコーのダイバーズウォッチと海洋生物の組み合わせは、間違いのないものだろう?
Save The Oceanウォッチの役割とは?
楽しむばかりではない。セイコーのSave The Oceanシリーズは、世界でも本当に素晴らしいことをしているのだ。
セイコーは、これまでにもファビアン・クストー(Fabien Cousteau)氏とパートナーシップを結び、数々の海洋保護プロジェクトに取り組んできたが、今回のコレクションは環境に関するさまざまな取り組みを伝えるプラットフォームとして活用された。Save The Oceanシリーズで集められた資金は、PADI AWARE財団のマリン・デブリス・プログラム(Marine Debris Program)、日本の国立極地研究所、ギリシャのフルノイ海底調査・発掘プロジェクトの支援に活用されている。
セイコー プロスペックスが支援するさまざまな海洋保護プログラムやプロジェクトについては、こちらで詳しく紹介している。
2018年:いいクジラの年
最初のSave The Oceanダイバーズは、2018年に登場した。Cal.4R35を搭載した“タートル” SRPC91と“サムライ” SRPC93だ。このペアは、ザトウクジラの下面に見られる目に見える隆起(科学的には腹部プリーツと呼ばれる)にインスパイアされたというグラデーションのブルーダイヤルを採用した。
タートルとサムライのメカニカルモデルに加え、セイコーのがっしりした“ツナ缶”ケースを採用したソーラー・クロノグラフ(SSC675)と、ブラックPVDのケースデザインを採用したツナ缶(SNE518)、タートル(SRPD11)、サムライ(SRPD09)があった。私の初めてのセイコー タートルとなるSRPC91は、発売された年に購入したが、今でも私のコレクションのなかで最も魅力的なダイバーズウォッチのひとつだと思う。ダイヤルの青から黒へのグラデーションは、発売当時500ドル以下だったSRPC91の、何倍もの値段の時計にふさわしいと思ったほどだ。
また、2018年の Save The Oceanに採用された特定のグラデーションダイヤル仕上げは、これまでのコレクションで最も繊細なアニマルモチーフであると言ってよいと思う。
2019年:「大きな手首が必要になりそう」な年
Save The Oceanシリーズの第2弾は2019年に登場し、タートルのSRPD21とサムライのSRPD23がデビューした。これらの時計のライトブルーのダイヤルには、波のようなレリーフ仕上げが施され、8時位置のアワーマーカーの横には小さなイースターエッグが隠されていた。波のあいだを泳ぐ1匹のサメのヒレが描かれているのだ。
この年もタートルとサムライを中心に、ソーラーパワーのクロノグラフ(SSC741)、STO初のモンスターケース採用モデル(SBDY045)、キングタートルシリーズの高級モデル(SRPE07)などが発表された。
私は再びこのコレクションに魅了され、結局このラインが最終的に2019年末に製造中止となる前に、サムライのSRPD23を手に入れた。実際にマリンスポーツをするときに身につける時計として、私の定番になっている。
2020年:セイコー、マンタマニアを取り込む
セイコーはここでSave The Oceanのデザインをより大胆なものへと舵を切り始めた。キングタートルとキングサムライの高級コレクションの一部として登場した2020年のSTOモデルは、軽いテクスチャーのブルーダイヤルにマンタ(そう、エイの仲間のこと!)が泳ぐシルエットが描かれたものだった。
過去2年間とは異なり、SRPE39とSBDY065のダイヤルは、まぎれもなくはっきりとマンタが描かれ、これはSave The Oceanコレクションにとって、これまでで最も直接的な動物学的インスピレーションだった。SRPE39とSBDY065はライトブルーダイヤルで発売されたが、それに続いてキングタートル(SRPF77)とキングサムライ(SBDY081)が、やや濃いブルーダイヤルで発売された。
2021年:氷上の鳥を紹介
昨年のSave The Oceanのバリエーションは少し設定が変わった。水中や水中の海洋生物を直接描写するのではなく、新作のホワイト/ライトブルーのグラデーションダイヤルでは南極の雪面を表現し、ペンギンの足跡がダイヤルに刻印されているのが特徴だった。2021年のSTOモデルには、モンスターケース(SRPG57)と、より小ぶりなベビーツナ缶ケース(SRPG59)の2種類が用意されていた。
RedBarのCEOであるキャサリン・マクギブニー(Kathleen McGivney)氏のInstagramでは、彼女のSRPG59を“Ice Chicken(アイスチキン)”と呼んでいる。このニックネームは、Save The Oceanコレクションの楽しさを際立たせる、とても素晴らしいものだと思う。
2022年:氷河のような滑らかさ
最新のSave The Oceanコレクションは、数ヵ月前に発表されたばかりだ。2022年の新作は、クラシックなセイコーダイバーの美学を取り入れたヴィンテージ風の“再解釈”モデルの角ばったモダンなケースデザインを飛び越え、当然価格も4桁ドル台と、これまでにないハイクラスモデルとなっている。
STOの新モデルは、氷河からインスピレーションを受け、氷をイメージした縦長のテクスチャーをホワイトとブルーの3つの色調で表現している。セイコー SBDC165(写真上)は1965年の62MAS スキンダイバーのデザインを踏襲し、SBDC167(写真下)は、1968年のオートマティックダイバー 300m ハイビート Ref.6159-7001で確立した美意識に新たな解釈を加えたものだ。
最後に、新しいSBDC169(Lead imageのモデル)は、セイコーのクラシカルなウィラードケースのデザインに最も意外性を持たせたモデルだろう。ダークマットなダイヤルから、魅力的なブルーベゼルインサートに囲まれたまぶしいほどのホワイトダイヤルのトーンに変更されている。3種のモデルすべてのムーブメントには自動巻きCal.6R35を搭載し、従来の4Rシリーズのムーブメントを搭載したSTOシリーズに比べ、よりグレードアップしたモデルとなっている。
次に来るものは?
ダイバーズウォッチは地球上で最も人気のある時計ジャンルだ。丈夫で見栄えもよく、しばしば価格も手ごろで、日常の憂鬱から自分を解放するための素晴らしい方法として役立っている。HODINKEEをご覧の皆さんは、少なくとも1本、もしかしたらそれ以上のダイバーズウォッチをお持ちかもしれない。しかし、そのなかで実際に海で泳ぐのにつけたものはいくつあるだろう? 時計がどの程度デスクダイバーであるか(またはコレクションであるか)、私はジャッジしないが、セイコーの Save The Oceanを購入することで、いつかこの時計を腕につけて訪れることのできる海があるのだと思うと、とても心強く感じる。
Images by author unless stated.