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ポロ選手の“競技中でもつけられる腕時計”のニーズに応えるために設計され、2021年に誕生から90周年を迎えたジャガー・ルクルトのレベルソ。ダイヤルと風防を保護するための反転ケースの裏面にあたる無地のケースバックは、特別なメッセージやイニシャル、アートなどをエングレービング装飾するキャンバスとなっています(我らがベン・クライマーのレベルソ・トリビュート 1931 USエディションをぜひチェックしてみてください)。
デザインは所有者のパーソナルなものだけではなく、ミュシャ、ゴッホ、クリムト、クールベといった芸術家たちの名画が、同社の職人たちの手作業によるエナメル細密画で表現されたモデルも限定で作られてきました。そのなかには浮世絵師・葛飾北斎の作品もあります。
葛飾北斎は日本の美術史において最も偉大な芸術家のひとりで、生涯3万点以上の作品を発表し、マネやゴッホなど西洋の近代美術にも大きな影響を与えた人物です。LIFE誌が1998年に発表した『The Life Millennium』の「この1000年、最も偉大な功績を残した100人」のなかで日本人として唯一選ばれました。
ジャガー・ルクルトが葛飾北斎の作品をモチーフにしたものは、ここでご紹介する新作を含めて3作品あります。1作目は、富士山が見える景観を描いたシリーズ『富嶽三十六景』の『神奈川沖浪裏』。2020年3月以降に発行される日本のパスポートの査証欄のデザインに使われていることでも話題になりましたね。
2作目は、北斎が日本各地を訪れて名瀑を題材に水の表現に挑戦した8枚揃いの木版画シリーズ『諸国瀧廻り』のなかの1枚『下野黒髪山きりふりの滝』。栃木県日光市男体山のふもとにあり、2段に分かれて落下するのが特徴的な滝です。
そして、今回新たに発表されたのは、前作と同じ『諸国瀧廻り』のもう1枚『木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧』です。岐阜県に位置する落差の大きな滝で、日本三霊山のひとつである白山を参拝する人々が現在も滝行を行う名所でもあります。
『木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧』を実際の滝の写真と見比べてみると興味深い違いに気づきます。落下する滝は正面からの視点で描かれているのに対して、滝の落ち口は上から見た様子が描かれています。複数の視点から見た物の形がひとつの絵のなかに表現されており、20世紀最大の芸術家ピカソの表現を連想させます。
オリジナルの版画が38cm × 25.9 cmであるのに対して、エナメル細密画はその10分の1以下のサイズでありながら、ほぼ忠実に再現されています。エナメル細密画は、複雑で非常に長い時間がかかる技法です。焼成する際に色が流れ出たり混ざり合ったりするのを防ぐため一色ずつペイントし、800℃の高温で合計12から15回ほど焼成が必要となります。完成までには何週間もの時間を要します。
前述のとおり『木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧』は木版画。オリジナルと同じように見せるために筆のタッチを残さずに描き出すなど工夫が凝らされています。木版画では絵の具の重なりで表現されるグラデーションは、エナメル細密画では難しいため独自の技法が開発されました(より詳しい内容は、記事「ジャガー・ルクルト 熟練を極める女性職人」をご覧ください)。うまく色が出せたとしても、焼成の際に損傷することがあれば、まるごと廃棄して振り出しに戻るのです。
完成したケースバックには、滝を一望できる崖上を陣取った3人の男性たちや滝口の観世水(かんぜみず)と呼ばれる伝統模様、落下する滝のなどが、細部まで生き生きと描かれています。もちろんカーボンコピーのように厳密に再現されているわけではありません。特に左上の題名の部分は、漢字ということもあり難しかったことが伺えます。
この時計の注目すべき点は、ケースバックだけではありません。技法は異なりますが、文字盤にもエナメルが用いられているのです。
まず、100年以上前の旋盤を使って、手作業で文字盤のベースに菱形のパターンを刻みます。文字盤に施された菱形パターンは60本の線で構成されており、この線を1本彫るためには、慎重に計算された角度で文字盤のプレートを持ち、旋盤で3回加工する必要があるうえ、この加工は全部で600回行われます。
旋盤加工で線を刻む際にパターンが完璧に対称となるよう、プレートを同じ角度で正確に保持する必要があります。この工程だけでも、約4時間を要する高い集中力が求められる作業です。
そのあと、濃いグリーンの半透明のグラン・フー エナメルを少なくとも6層重ねて、各エナメルを個別に焼成。最後の工程には、エナメル文字盤の完成後にレールウェイミニッツトラックの転写とインデックスの植字があります。インデックス用にエナメル文字盤の表面に小さな穴を開けなければなりませんが、ここで傷をつけてしてしまうと…。そう、皆さんご想像のとおり。
文字盤のエナメル装飾は複雑に光を捉えて、黒に近いグリーンから明るく深みのあるグリーンまで多彩な表情を持ちます。通常は文字盤側を表面とするところですが、この時計に関していえば、そのどちらを表とするのかは、迷ってしまいそうです。
ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・エナメル - 葛飾北斎『木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧』は、レベルソのエナメル工房の職人たちの卓越した芸術性と技術を証明する作品です。風防を保護するという当初の目的がほとんど失われた現在、ケースバックを芸術的な手工芸を表現するキャンバスにするというのは素晴らしいアイデアだと思います。
この時計に注がれた作業量と細部へのこだわりは、計りしれないものがあり、非常に高難度の技法が表にも裏にも施された本機の生産本数はわずか10本となっています。
基本情報
ブランド: ジャガー・ルクルト(Jaeger-LeCoultre )
モデル名: レベルソ・トリビュート・エナメル - 葛飾北斎『木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧』(Reverso Tribute Enamel Hokusai ‘Amida Falls’)
型番:Ref.Q39334T3
直径: 45.5mm×27.4mm
厚さ: 9.73mm
ケース素材: ホワイトゴールド
文字盤色: 菱形パターンのギヨシェ彫りに半透明なグリーンのグラン・フー エナメル
インデックス: アプライド
夜光: なし
防水性能: 3m
ストラップ/ブレスレット: ブラックアリゲーター
ムーブメント情報
キャリバー: 自社製Cal.822/2
機構: 時、分
直径: 20.2mm
厚さ: 2.94mm
パワーリザーブ: 42時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 19
クロノメーター認定: なし
価格 & 発売時期
価格: 予価9万5000ユーロ(約1300万円)
発売時期: 今すぐ
限定: 世界10本限定
詳細は、公式サイトへ。
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