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7月の蒸し暑い夜、街灯に集まるツルハムシのように我々はダイヤルの夜光に引き寄せられる。どうしようもないことなのだから、受け入れるしかない。この週末は時計界の輝きである夜光についての読み物をお届けしよう。
ラジウム塗料が発明された1908年当時、腕時計はまだ一般的ではなかった。しかし、ほんの数年のうちに腕時計は男女を問わず主流のアクセサリーとなったのである。そして、その初期の腕時計の一部に、夜光性のラジウム塗料が使われていた。我々は今でこそラジウム塗料の有害性や健康被害について知っているが、初期の頃は確かに夜光にダークサイドがあったのだ。ダイヤルを塗る「ラジウムガール」たちは大変な苦労をした。幸いなことに代替手段が登場したのである。
60年代に入り、我々はトリチウムの時代に入った。ラジウムよりも危険性は低いが、それでも低エネルギーベータ線放射体、つまりラジウムと同じような働きをする放射性物質と見なされているのだ。現在ではコーヒーのような色からカボチャのような色まで、トリチウム塗料の独特の美しい褪色はコレクターのあいだで珍重されている。パティーナブームは、光らない夜光でも時計にとって魅力的な要素であることを教えてくれるのだ。トリチウム塗料はもう使われていないが、トリチウムガスを圧縮した小さな(そして危険の少ない)ガラス管は今でも一部のツールウォッチに使われている。
それが今日に至っている。ルミノバとスーパールミノバの時代である。ルミノバは1993年に日本で誕生し、1998年にスイスの時計業界に供給するために、LumiNova AG Switzerlandが設立された。ルミノバは光を当てることで“それを集めて”発光する。セイコーのルミブライトも同じ仕組みだ。
夜光の進化に期待しつつ、我々は今スーパールミノバを配合したセラミックコンパウンドをマーカーや夜光そのものとして使用している。これによってスーパールミノバの塗料が不要になり、マーカーが光るようになった。以下、5つの記事で時計製造における夜光の素晴らしさについてご紹介しよう。
特集記事
ジャック・フォースターが夜光の技術的側面について深く掘り下げたクラシックな記事だ。 簡単に言えば、ジャックは時計記事分野における啓発者なのだ。彼は夜光塗料の技術的な側面に光を当てるという素晴らしいアイデアを思いついた。
スーパールミノバ使用のセラミックマーカーをダイヤルに採用し、有名なブラックベイラインに新しい表情を与えたチューダーの新作、ブラックベイ プロをジェームズ・ステイシーが紹介する。
シチズン プロマスター ダイバーズ オートマチック NY0155-58Xは夜光の面では絶対的な存在だ。この記事では地熱泉の底に持ち込んで、まだ光っているかどうかを確かめている。
マラソンは多くの時計にトリチウムを使用している。この36mmのアークティック MSARのIn-Depth記事では、米国原子力規制委員会によるトリチウムの使用方法と表示に関する詳細など、トリチウムダイヤルの技術的側面に迫っている。時計製造に使用される放射性物質に関する危険性の理解という点では、我々は長い道のりを歩んできたと言えるだろう。
ジャックは眼科医の帽子をかぶって、なぜ直視していないときに夜光が明るく見えるのかを説明している。
暗い場所で、ほかのすべての光が消えたとき、それがあなたにとっての光となりますように。
– J・R・R・トールキン『旅の仲間』