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Business News 不景気? 不況って何? 驚異的な成長を続けるスイス時計産業

そして、世界の消費国第一位はアメリカだ。

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スイスの時計産業で働くにはいい時代だ。

 少なくとも、公式の数字がそう示している。スイス時計協会(FH)は先週、2022年の上半期の輸出額が2021年の同時期と比較して約12%増加し、119億スイスフラン(約1兆6650億円)となったと報告した※1 (このFHの数字は、スイスの時計メーカーと国際的な小売パートナーのネットワークとのあいだの卸売活動のみを表している)。

A graph tracking Swiss Watch Exports between Jan-June 2022,

2022年上半期の市場別スイス時計輸出量(単位:百万スイスフラン)出典: スイス時計協会

 スイス時計業界の3大上場企業であるスウォッチ グループ、リシュモン、LVMHから、最近、さらに好調な中間決算報告が相次いでいる。世界最大の時計専業メーカーであるスウォッチ グループは、上半期に前年同期比7.4%の成長を達成した。リシュモンの時計専業部門(カルティエ、ヴァン クリーフ&アーペル、モンブランを含まない)は前年比10%増で、2022年1月から6月までに10億ユーロ※2の大台を突破した。

 LVMHのウォッチ & ジュエリー部門は、合計で22%の大幅な増収となったが、これはLVMHが2021年後半に行ったアメリカの宝飾店ティファニーの買収が明らかに影響しており、部門全体で50億ユーロ弱の6ヵ月間の売上を計上した。LVMHは、ウォッチ & ジュエリー部門全体の業績を報告しているだけであり、時計会社がこの期間にどれだけ好調だったかを正確に言うことは難しいが、LVMHはゼニスが6ヵ月間の受注で過去最高を記録したことを伝えている。

 ロレックス、パテック フィリップ、オーデマ ピゲなど、他の大手スイス時計メーカーは、現在もそれぞれの手に委ねられ、決算報告の義務はない。だが安心できる結果だろうと想定している。間違いないだろう。

 報告書の内容はすべて確認した。以下は、その内容である。

アメリカ市場はまだ飽和状態には至っていない

 アメリカ国民は、ガソリン代が1ガロン7ドルになったり、卵のパックが突然農家のコストになったりして、苦しんでいるかもしれない。しかし、インフレや利上げが叫ばれているにもかかわらず、この国の人々は時計を買い続けているのだ。

 米国へのスイス時計の輸出は、2021年の上半期に31.4%増加し、米国は現在、今年これまでのスイス時計の全輸出額の16%近くを占めている。イギリスも同様の割合で輸出額が増加し(31.8%増)、ドイツ(25.4%増)、フランス(36.5%増)、スペイン(41.8%増)などヨーロッパの多くの大国が輸出額を増やした。

Rolex GMT Master II

 しかし、北米とヨーロッパで市場が急拡大しているにもかかわらず、アジアはスイス時計の主要輸出地域であることに変わりはなく、今年に入ってからのスイス時計の輸出額のちょうど49%を占めている。スイスの現在の輸出先上位15ヵ国のうち、マイナス成長を記録したのは2ヵ国(香港と中国)のみである。そのうち11ヵ国は2桁の伸びを記録している。

 興味深いことに、FHの報告書では、「中国の流通が困難となった結果、特に米国市場が追加納入の恩恵を受けた」とわざわざ強調しているが、これは個人的にアメリカ全土の小売店やコレクターから聞いてきた話と一致している。

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中国がつまづき、ロシアが完全に降板

 中国(26.3%減)および香港(11.5%減)向けのスイス時計の輸出は、中国本土で年間を通じて発生し続けた大規模なCOVID-19のロックダウンや規制により、無数の小売店や流通センターが閉鎖され、中国人の国際観光が鈍ったことで大きな打撃を受けた。

 ウクライナ侵攻をめぐる国際的な反発の結果、スイスのロシア向け時計輸出(-64.3%)は自由落下を続けている。スウォッチ グループ、リシュモン、LVMH、ロレックス、パテック フィリップなど、ここ数ヵ月でロシアへの時計の販売や輸出を停止しているスイスの時計メーカーは数多くある。

 FHは報告書のなかで、ウクライナ紛争が始まって以来、ロシアへのスイス時計の輸出総額は98%以上減少していると指摘。2021年全体でのロシアへのスイス時計の輸出総額は2億6010万スイスフラン(約364億円)で、昨年はスイス時計産業にとって17番目に大きな市場であった。その金額の98%を取り除くと、かろうじて500万スイスフランを超える金額が残る。それは大体リシャール・ミル1本分の金額だ。

生産本数は少ないが、収益は増加

 高価格帯の時計が成長を牽引している。今年、個々の輸出価格が3000スイスフラン(約42万円)以上の時計の輸出総額は15%以上増加し、500スイスフラン(約7万円)未満の時計は19.1%減少した。

Patek Philippe Nautilus

 そのなかでFHは、輸出されるスイス時計の総数が「10年前の半分以下となり、過去最低の水準にある」と指摘する。これだけ輸出が好調であれば、在庫数と個々の価値に差があるのは意外な気がする。

 これだけ聞くと、2022年の上半期にスイスの時計メーカーが納品したすべての腕時計の輸出額の合計は、113億スイスフラン(約1兆5813億円)で、実際に1年間の上半期の輸出額として過去最高を記録していることがわかる。

 排他性というのは、本当に効果的なのだ。

※1 発表時の為替レートは、1スイスフラン=1.05米ドル。

※2 米ドルとユーロの為替レートも同様で1EUR=1.02USD。

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FHの公式レポートはこちらでご覧いただけます。主要な時計製造コングロマリットの収益報告書は、LVMHスウォッチ グループリシュモンの公式サイトで公開されています。

LVMH Luxury VenturesはHODINKEEの少数株主ですが、編集上の完全な独立性を維持しています。