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アラン・“ハマー”・ブロア(Alan “Hammer” Bloore)氏が時計を集め始めたのはまだ子供の時分からであり、最初の時計は貯金して買ったセイコーのダイバーズだったという。彼は生来のスポーツマンであったが、2000年代初頭にボート事故で腰から下が麻痺した。当時、彼はすでにヴィンテージのミリタリーウォッチやダイバーズウォッチのコレクターであり、“パネリスティ”のような初期のコレクターコミュニティの一員でもあった。そしてこの事故は、彼の時計への興味をさらに強固なものにした。
「これらの時計を手にするとき私が一番に考えるのは、今が何時かということではなく、その時計が語る物語についてです」と、ハマー氏は言う。「時計への愛がなかったら、私はどこに情熱を見出すことができたでしょうか。時計は私という人間を作り、世界中を巡り、私の人生を変えるような友情をもたらしてくれたのです」
そして今、ハマー氏が時計を売却する時が来た。現地時間の12月7日(木)にニューヨークのサザビーズで行われるセールを皮切りに、“ハマー コレクション”の時計約60点がオークションのハンマーにかけられる。
ハマーのコレクションの大部分はパネライとヴィンテージロレックスだが、サザビーズのライブ中継やオンラインカタログでは、パテックやインディーズブランド、その他のブランドも目にすることができる。
特に注目すべきは、オーストラリア海軍のために作られたハマー氏所有のビッグクラウン Ref.5510だ。彼はオーストラリア人であり、このビッグクラウンは、軍用時計としての実績を持つ素晴らしく真っ当なモデルである。さらに時計だけではなく、オーストラリア海軍の制服やフィールドノート、シガレットケースやノーズクリップまでついてくる。箱や書類のことは忘れよう。このセットは、“フルセット”という言葉にこれまでとは違った意味を与えてくれるものだ。
ハマーの膨大なパネライ コレクションのなかで、とりわけ注目すべきはRef.PAM21だろう。これは1997年に発表されたプラチナ製の限定モデルで、パネライによれば、第2次世界大戦でイタリアのフロッグマン(潜水士)が着用した伝説的なロレックス Ref.3646にインスパイアされたヴィンテージムーブメントを使用しているという。パネライがヴァンドーム(現リシュモン)に買収された直後に発表した最初のモデルで、60本すべてが数週間で完売した。
また、パネリスティの10周年を記念して限定発売されたパネライ Ref.PAM360もあり、これはハマーがデザインに携わった時計でもある。彼が持っている個体のシリアルは1/300で、裏蓋には“Hammer”と刻印されている。
時計自体のストーリーにとどまらず、ハマーに関するストーリーもまた、彼のコレクションの醍醐味なのである。ブロアは過去20年間、収集家のコミュニティに欠かせない存在だった。最近、彼は同じオーストラリア仲間であるフェリックス・ショルツ(Felix Scholz)氏とアンディ・グリーン(Andy Green)氏らとともにOT: The Podcastに出演し、彼のコレクターとしての軌跡を語った。 彼が2000年代初頭に事故に遭ったとき、世界中から100人以上のコレクターが彼を訪ねてきた。彼が言うには、これが最初の本格的な時計愛好家の集まりだったそうだ。彼の手首に“Paneristi.com”のタトゥーが彫られているほど、このコミュニティは彼にとって大きな意味を持つ。ハマーの話やヴィンテージウォッチに興味があるならば、全エピソードを聞く価値があるだろう。
ハマーは事故に遭ったのちも、常に前向きに生き続けてきた。それは、彼が20年以上にわたって関わってきたコレクターたちのコミュニティによるところが大きい。ハマーのストーリーは、時計収集の素晴らしさを思い出させてくれるものである。
ニューヨークで行われるオークションの模様は、今週末にお伝えする。
サザビーズ・ニューヨークのImportant Watchesオークションは現地時間で12月7日(木)午前10時から開催されます。高級時計のオンライン販売は12月12日まで。詳しくはサザビーズのWatchesページをご覧ください。