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HODINKEEのスタッフや友人に、なぜその時計が好きなのかを解説してもらうWatch of the Week。今週のコラムニストはグラミー賞受賞のミュージシャン、シンガーソングライター、レコードプロデューサーであるPJモートン氏。彼はマルーン5のメンバーでありながら、ソロでレコーディングやプロデュース活動も行っている。4月29日に発売された最新アルバム『Watch The Sun』には、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)、ナズ(Nas)、ジョジョ(JoJo)、ウェイル(Wale)などが参加している。本日は、そんな彼の特別なロレックス デイデイトの話を書いてもらった。
私の時計好きは父譲りだ。まだ背が低く、父が腕時計を保管している引き出しを見ることができなかったときのことを覚えている。父はいつもロレックスを持っていて、私はそのルックスに惚れ込んでしまったのだ。ロサンゼルスに引っ越してからはヴィンテージウォッチにはまり始めたが、私が本当に欲しい時計、デイデイトを買うことはできなかった。
私がヴィンテージウォッチについて考えるようになったのは、ちょうどマルーン5に加入した12年ほど前のことだ。父はいつも時計を新品で買っていたが、バンドメンバー、アダム・レヴィーンのヴィンテージウォッチについての話を聞き、「そうだ、自分が欲しいものを正確に手に入れられるんだ」と気づいたのだ。心のなかで、いつも新品のゴールドロレックスを買うものだと思っていたのだから。でもこの時計、80年代のデイデイトはそれ以上に私に語りかけてきた。
私が初めて買ったのは1958年製のデイトジャストで、その1本を誇らしげにつけていた。まだデイデイトを追いかけてはいたが、買うまでには至らなかった。ひとりで音楽活動をしていると、たくさんの投資をしなければならないことが多く、「よし、この時計にお金を使おう!」という気にはなれなかったのだ。グラミー賞の最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス賞を初めて受賞したとき、「時計を買うぞ! よし、時計を買おう」と意気込んだ。そして私はついに我が愛しの時計を家に連れて帰ったのだ。
この80年代の個体は私がずっと欲しかったもので、宝物にしたいと思っていた。何年も前からどんなデザインにしようかと考えていたのだ。アディダスのジョギングスーツのような80年代の雰囲気を醸し出していて、これを手にした今、ほかの時計は必要ないとさえ感じている。私はコレクターではない。この時計は私にとってとても大切なもので、自分が待ちわびていたものであることを思い出させてくれる。グラミー賞の受賞をきっかけに手にできたという事実が、長年の努力が報われたことを実感させてくれるのだ。
デイデイトは友人であるマルーン5のエンジニア、メールボックス(Noah “Mailbox” Passovoy)がつないでくれたヴィンテージディーラーから購入した。彼は大の時計コレクターで、私が彼に質問するまで、私の時計は手に入らなかったのだ。メールボックスもアダム・レヴィーンも大の時計好きだが両極端だ。メールボックスはレアな時計を買うと何年も何年も待って決断するが、アダムは違う決断をすることができる。「これは好きだ、よし買おう」というように。
この時計を持っていると、「よし、父さんがこの時計を持っていたあの時まで来たんだ」と、きづかせてくれるのだ。私はいつもそう思っている。そして、この時計は私の毎日に欠かせないものでもある。写真撮影用の時計でもなければ、イベント用に違うジュエリーを借りることもない。この時計はグラミー賞の連続受賞の際にも、ずっと身につけていた。
時計に目を落とすと、すべての年月が時計に刻まれている。私の成功はすべてメジャーレーベルでもなく、メジャーな後ろ盾もない独力でつかみ取ったもので、私はありがたく感じている。それは多くのサポートと愛と、可能な限り最高のものを作ろうとする姿勢がもたらしたものだ。だから自分の時計を見ては、「自分のやり方で、あのステージに立てたんだ」と思っている。
今、私が父とその時計を見ていたのと同じように、私の子供たちにもそれを見せ始めている。下の子はすでにジュエリーマニアで、私の子供たちのなかでも特に彼は大きくなったらヴィンテージウォッチを持ち、「パパがつけていた時計、覚えてるよ」と言うに違いないと思っている。
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