trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Bring a Loupe 史上最も重要なアメリカ製腕時計、ヴィアネイ・ハルターのジャンピングアワー、オメガ スピードマスター “ソユーズ”など

今週も、市場に出ている注目のヴィンテージウォッチを紹介しよう。

※本記事は2026年6月26日に執筆されたUS版の翻訳です。

皆さん、ハッピーフライデー! 今週も頑張ったことを祝おう。北半球では日が少しずつ短くなり始め、もし私と同じように花火が合法な州に住んでいるなら、おそらくこれから、騒がしく長い1週間になるだろう。だがその前に少しだけ立ち止まって、時計を楽しむ時間にしよう。

 さて先週紹介したピックアップの結果だが、ドゥゲナとマルコのクロノグラフはオークションが27日のため、まだ結果待ちだ(編注;現在オークションは終了し、ドゥゲナは420ユーロ/日本円で約7万8000円で落札)。一方で、ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6241は200万スイスフラン(日本円で約4700万円)で、パテック フィリップ 5960は3万4000スイスフラン(日本円で約680万円)で落札。エクセルシオール・パークのモンテカルロは流札。ロンジンは価格更新待ち(問い合わせ済み)で、タバンに関しても情報を待っている(6月25日に競売終了済み)。


番外編
bring a loupe

 モバードファンの皆さん、この懐中時計は素晴らしい出来栄えだ。もしこれに心を動かされないなら、こちらの金メッキのデュアルタイムはどうだろう。圧倒されるほど美しい。一方で、無銘のスキンダイバーズウォッチをおすすめしたいという私の衝動はどうやら一向に収まることがないようだ。今週のおすすめはこのアルティチュード。見た目も素晴らしく、それでいて落札価格は数万円に収まりそうだ。また優れたダイバーズウォッチといえば、リップのノーティック スキーも見逃せない。確かに1970年代のクォーツウォッチなので、多少のトラブルは覚悟しなければならない(出品情報によると、現在も動いているとのこと)。それでも私は最近、この後期型ピケレ(Piquerez)社製スーパーコンプレッサーケースにすっかり魅了されている。大型ベゼルとケースに埋め込まれたリューズの組み合わせが本当に魅力的だ。そして最後はこのエベルだが、完璧だ。誰かお願いだから買って欲しい。そうすれば、私が買うべきか悩み続けずに済む(編注;現在すべてのオークションは終了している)。

 本題の時計を紹介する前に、ひとつお断りしておきたいことがある。どれだけ頑張っても、紹介したいと思った時計が記事を書く前に売れてしまうという運命から逃れられないのだ。今週はBulang and Sonsが掲載していたパテック フィリップ Ref.6000を紹介したかったのだが、わずか約72時間で商談中となってしまった。そして先週はWind Vintageに掲載されていたパテック フィリップ Ref.5212Aがたった2日で売約。だが本当に頑張っているのだ。


ハミルトン マリンクロノメーター モデル21
bring a loupe

 マリンクロノメーター モデル21は、アメリカがこれまでに製造した時計のなかで最も重要な時計だ。この時計について、こう述べるだけでも十分なほどだろう。

 簡単な歴史を振り返ると、1939年にヨーロッパで戦争が勃発し、アメリカはマリンクロノメーターの供給が深刻な影響を受けることをすぐに認識した。衛星があれば大した問題ではないが、1939年という時代背景を考えると話は別だ。アメリカ海軍天文台は8つのアメリカの時計メーカーに書簡を送り、そのうちの1社にマリンクロノメーターの製造開始を要請した。これはもっともな判断ではあったが、同時に突飛な要求でもあった。というのも当時も今も、時計製造に不可欠な部品の多くはヨーロッパから供給されており、それまで必要とされていなかった機械部品の製造能力をアメリカ企業に急遽開発するよう求めるのはまさに途方もない要求だったのだ。最終的にこの要請に応えたのはハミルトンであり、同社は1942年11月までに、すべての艦船に不可欠なマリンクロノメーターを米軍に供給し始めた(この時計の重要性についてはこちらから。時計のデテントを製作した人物についての興味深い記事はこちらから)。マリンクロノメーターであることから想像できるように、この時計は整備とメンテナンスを行えばきわめて正確な時間を刻み、1日あたり平均1秒未満しか遅れない。

bring a loupe

 こうした歴史に心を動かされるかどうかは、人それぞれだろう。レイルロードウォッチもまた並外れて歴史的に重要なものだが、一般的には多くの時計愛好家からあくびを誘う。だが、この時計に関してはあくびを我慢して欲しい。実際にBring a Loupeを始めたときからまさにこのような例を待ち望んでいたし、ジョーンズ&ホランが今回紹介できる個体を出品してくれたことをうれしく思う。今回紹介する個体は、これ以上望めないほど素晴らしいコンディションだ。きれいなダイヤル、完全なマホガニーの内外箱、そして今も動いているきわめて見栄えのよいムーブメントを備えているのだ。

 マリンクロノメーターに詳しくない方のために説明すると、これらの時計は通常、ジンバル式のケースに収められていた。船が揺れても時計本体が水平を保てるように設計されており、ダイヤルは常に上を向いている(その理由は、精度を最大限に高めるためだ。ケースに収められ、ダイヤルが常に上を向いていれば、複数の姿勢差に合わせて調整する必要がない)。つまりこの時計を購入するということは、まさにアメリカの歴史の一部を手に入れるようなものだ。ダイヤルの丸で囲まれた“N”は、この時計が海軍天文台向けに製造されたことを示しているが、それはつまりアメリカの軍艦での使用を想定して作られたことを意味する。

 この時計は7月2日にオークションに出品されるが、よほどのことがない限り、2000ドル(日本円で約32万6000円)以下で落札されるだろう(編注;現在オークションは終了しており、4300ドル/日本円で約70万円で落札)。私にはそれが信じられない。これらのモデルを愛する者として、今なお手の届く価格で取引されていることはうれしいのだが、2000ドル(日本円で約32万6000円)とは驚きである。かつて当時のほぼあらゆる時計を凌ぐ精度を誇り、80年前、アメリカ海軍の全艦艇に不可欠だったモデルがこの価格で手に入るのだ。時計好きとして、これ以上何を望めるというのだろうか。


ヴィアネイ・ハルター ムーンフェイズ搭載のゴルトプファイル ジャンピングアワー
bring a loupe

 SNSでは、それぞれが自分専用に最適化されたアルゴリズムのなかで情報を得ている。だからこの数週間、ヴィアネイ・ハルター アンティコアの写真が一斉にタイムラインへ流れてきたという人もいれば、全く目にしなかったという人もいるだろう。実際、いくつかのアンティコアはさまざまな場所で販売され、そのなかにはニューヨークで開催されたフィリップスのオークションで58万4200ドル(当時のレートで約9300万円)で落札されたピンクゴールド製モデルも含まれている。この結果がハルターやアンティコア市場全体にどのような影響を与えるかは誰にもわからないが、フィリップスが2024年にイエローゴールドのアンティコアを20万3200スイスフラン(当時のレートで約3500万円)で、2015年にホワイトゴールドのアンティコアを6万4500ドル(当時のレートで約780万円)で販売したことは注目に値する。この数字をどう見るかは、読者に委ねたい。

 ヴィアネイ・ハルターについては、もはや説明不要だろう。彼の最も有名なモデルはアンティコアとオーパス3だ。彼の作品はしばしばスチームパンク的なデザインとして語られる。あるいはフィリップスが表現したように“発明家、マッドサイエンティスト、そしてタイムトラベラーが融合したような人物”という言葉が、その作風をよく表している。しかしこのムーンフェイズを搭載したゴルトプファイル ジャンピングアワーを数分間眺めていれば、たとえダイヤルに“Goldpfeil”という文字があり、いかにもスチームパンクらしい意匠が見当たらなかったとしても、この時計が紛れもなくハルターの作品だとわかるだろう。

bring a loupe

 2002年に108本限定で発売されたゴルトプファイル ジャンピングアワーはまさにヴィアネイ・ハルターらしい個性的で洗練された1本だ(編注;現在オークションは終了している)。左上の開口部には時表示、右側にはムーンフェイズが表示され、メインダイヤルには分針(大きな青い針)と秒針が配置されている。ホワイトゴールド製のケースに収められた本モデルは、2007年に発売されたトリオモデルの先駆け的存在、あるいはわずか1年後に発売されたオーパス3のさらに異質な親戚のような存在とも捉えられる。

 28日にオークションに出品されるこの時計は、きわめて良好な状態に見える。分・秒を表示する長方形ダイヤルの左下部分に、経年変化によるわずかな変色らしきものが見受けられる程度で、それ以外はダイヤルや針に特筆すべきダメージはない。また大型で独特なリューズ(そして距離計に着想を得たとされる)とオリジナルのレザーストラップもそのまま残っており、ケース前面には(おそらくハルター自身が施したとされる)手作業でのハンマリング跡が見られる。着用によるわずかな擦り傷を除けば、素晴らしい状態だ。これらのモデルはアンティコアの兄弟モデルとは異なり、比較的入手しやすい価格帯を維持しているようで、1万5000から2万5000ユーロ(日本円で約280万から460万円)という予想落札価格に落ち着くのではないだろうか。


オメガ スピードマスター “ソユーズ”
bring a loupe

 これはすごい1本だ。ようこそ、名品の世界へ。1975年7月、冷戦時代の二大強国であるアメリカとソビエト連邦は、アポロ・ソユーズテスト計画のために宇宙へ男たちを打ち上げた(もちろん、これは専門用語だ)。この計画では、アメリカとソ連の宇宙船が地球軌道上でドッキングし、両国の宇宙飛行士が共同で試験や実験を行った。もっとも「共同実験を行った」という穏やかな表現だけでは、この出来事の歴史的な重みは伝わらないかもしれない。互いにほとんど信頼関係のなかったふたつの国家がそれでも力を合わせて、工学的にも外交的にも前例のない偉業を成し遂げたのである。実に驚くべきことだ。

bring a loupe

 ミッション成功後、オメガは現在スピードマスター “ソユーズ”として知られる時計を製造したが、このモデルについて私がここで確実に断言できるのはおそらくそこまでだ。それ以降は、話が一気に複雑になっていく。『フィラデルフィアは今日も晴れ(It's Always Sunny in Philadelphia)』のチャーリーがタバコをくわえながら、壁一面に張り巡らせた赤い糸をつなげていく有名なミームをご存じだろうか。ソユーズについて調べてみると、あなたもまさにあの状態に陥るのだ。

 まず厄介なのは、オメガ ミュージアムに展示されていた(あるいは現在も展示されている)ソユーズモデルに本来とは異なる針が取り付けられていた可能性があるということだ。装着されているのは正しいスピードマスター プロフェッショナル用ではなく、明らかにスピードマスター マークII用の針なのだ。そしてさらに話をややこしくしているのが、スピードマスター “ソユーズ”自体が、1976年当時に購入できた通常のRef.145.022とほとんど見分けがつかないことだ。違いは、クロノグラフのプッシャーキャップが10%大きく(5mmではなく5.5mm)なっていること、そしてそれに合わせてミドルケースがわずかに変更されているだけだ。オメガが将来のコレクターたちの混乱や議論、さらには小競り合いまでほぼ確実に招くほど些細な物理的な変更を加えたのはほとんど残酷にさえ感じられる。そして今まさに私が言っているのは小競り合いのことであり、このオメガフォーラムのソユーズ専用のスレッドは16ページにも及び、さらにそれだけでは飽き足らず、Speedmaster101のウィリアムもオメガフォーラムに現存するすべてのモデルに関するデータを収集しようとするスレッドを立てている。

bring a loupe

 このモデルはコレクターのあいだできわめて人気が高い一方で、地雷原のような存在でもある。どれほど複雑な存在なのかと言うと、クリスティーズは2025年11月にシリアルナンバー100を2万5400スイスフラン(当時のレートで約490万円)で売却したが、フィリップスは2022年5月にシリアルナンバー76を11万3400スイスフラン(当時のレートで約1500万円)で売却したのだ。この価格差はこのモデルの来歴の曖昧さと、前述の論争や紆余曲折に起因している。

 そこで今回紹介するのが、6月30日に出品予定のこの個体だ(編注;現在オークションは終了しており、1万8000ユーロ/日本円で約330万円で落札)。まず本来このモデルに備わっているはずの5.5mm径プッシャーは見当たらないが、オリジナルボックスが付属している。さらにこの時計は元々2007年のアンティコルムの“Omegamaniaオークション”で販売されたもので、これはこの時計に対する信頼の証と言える。しかし先ほど触れたオメガフォーラムのスレッドを見ると、まさにこの個体についても議論されている。なぜならこの個体は、一般的に認められているソユーズモデルの範囲をはるかに超えたムーブメントを搭載しているからだ。

 この個体について言えるのは、とにかく判断が難しいということだ。購入を検討するのであれば、最大限の慎重さが求められる。とはいえ完全に正しい仕様で状態も優れたスピードマスター “ソユーズ”を10万ドル近い金額で入手できる可能性はほぼないと言っていいだろう。この個体自体にも疑問点は存在するが、このモデルは市場にめったに登場せず、コレクターが熱狂するため、今回の出品に触れないわけにはいかなかった。


ユニバーサル・ジュネーブ マスターテック ラトラパンテ
bring a loupe

 最後に、知る人ぞ知るネオヴィンテージの魅力をご紹介しよう。1990年代半ばに製造されたこのユニバーサル・ジュネーブ マスターテック ラトラパンテは、出品情報によると「スイスの老舗時計メーカーが誇る複雑機構の技術力を記念して」500本限定でリリースされたモデルだ(編注;現在オークションは終了している)。限定モデルを発売した理由は少々曖昧で説得力に欠けるが、その機能の豊富さで十分にそれを補っている。

 6時位置にパワーリザーブインジケーター、3時位置と9時位置にインダイヤル、そしてもちろんセンターのクロノグラフ針を一時停止できるスプリットセコンドクロノグラフを搭載。ムーブメントは手巻き式のユニバーサル・ジュネーブ 88で、ETA 77XX系をベースとしたムーブメントであることが見て取れるが、大幅な改良が加えられている。

bring a loupe

 ケース径は39mmだが、厚さは約15mmある。ムーブメントの構造とスプリットセコンド針に必要なスペースを考えると、それほど驚くことではない。とはいえ、この個体は状態がきわめてよさそうで、最低入札価格は1600ポンド(日本円で約34万円)でまだ入札がないため、検討する価値はあるだろう。