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Editors' Picks 手元から秋を始める。編集部おすすめのレザーストラップ

時計の印象を手軽に変え、手元に季節感を添えてくれるレザーストラップ。エディターたちが実際に愛用しているものから、この秋に試したい素材や色、仕立ての魅力が光るストラップをセレクトしました。熟練の職人技が息づく上質な一本から、デニムのような遊び心を持つモデルまで、秋の装いに合わせたい4本を紹介。

秋の装いに袖を通す頃になると、時計にもいつもとは違う表情を求めたくなります。そんなときに活躍するのが、表情豊かなレザーストラップです。素材や色、ステッチの違いによって、いつもの時計を端正でクラシックな雰囲気にも、リラックスしたカジュアルな表情にも変えてくれます。

 ブレスレットから付け換えるだけで、手元の印象を手軽に一新できるのも魅力。今回は、編集部員が実際に愛用しているものや、これからの季節におすすめしたいレザーストラップをセレクトしました。お気に入りの時計を秋らしく装う一本を見つけてみてください。


フレンチブランドらしい色彩、高い実用性が日本の秋に寄り添う
By Yusuke Mutagami

元来汗ばみやすい体質の僕は、時計といえば1年を通じて主にメタルブレスレットを愛用している。ただでさえそうなのに、夏を過ぎてもなお湿気を帯びた空気が居座る今年のような気候では革製品自体を持ち出す気になれず、最近新調した革靴すら下ろすタイミングを見失っている状態だ。だが朝夕の風に微かな涼気を覚えることになると、決まってこの時計だけはレザーストラップへ換装するようにしている。文字盤からインデックスまでシルバーで統一された、極めてプレーンなグランドセイコー SBGR251。主張が控えめな分、秋の訪れとともに装いを変えて楽しむのが毎年の恒例行事にようになっている。

 ただ、こうした端正なモデルに王道のブラックやネイビーを合わせると、途端に格式張って見えてしまう。ゆえに、トープやグレージュといったニュアンスカラーを好んで選んできた。そしてこうした中間色の表現は、フレンチブランドの得意とするところである(そもそもトープやグレージュといった言葉自体がフランス語だ)。1945年の創業以来、パテック フィリップやカルティエなど数々のトップメゾンを支えてきた名門、カミーユ・フォルネも例外ではない。今回手にしたのは、なめらかなスムースカーフ製のヴォーリス “ルカ”。ルカはグレーやブラウンに微かなパープルを交えたような、光の加減でシックにもつややかにも表情を変える奥深いカラーだ。複数の色が複雑に溶け合うこの絶妙なトーンは、多様な色彩がグラデーションを描く日本の秋の情景にも、不思議と通ずるものがある。

 ヴォーリスとは、フランス語のVeau(仔牛の革)とLisse(なめらか)を掛け合わせた名称だ。その名のとおり絹のような肌触りが特徴で、グランドセイコーの繊細なサンレイダイヤルと美しく調和する。そればかりか、このなめらかな質感が、ザラツ研磨による鋭い稜線をいっそう際立たせているように思えた。

 しかし表面の繊細さとは対照的に、構造は極めて実用的である。裏地にはラバーコーティングを施した牛革、カウチュを採用し、縫い目を裏面に出さないアンチ・スウェット仕様に仕立てられている。そのため、日中に暑さが残る初秋でも汗を気にせず着用できるのだ。また、業界に先駆けて導入したクイックチェンジシステムであるアビエ®の恩恵も大きい。工具を使わず瞬時に着脱できるため、こまめに外してケアをする際にも、ストラップ自体を傷めずに済むのだ。

 トップメゾンを支える誠実な作りと、エスプリの効いた色彩、そして日常使いのハードルを下げる実用性。総じて、日本の感性や気候に深く寄り添えるブランドだと思う。今回は目新しさからルカを選んだが、僕が好きなトープグレーの落ち着きと品格もやはり捨てがたい。なんにせよ今年の秋は、カミーユ・フォルネで時計の衣替えを楽しんでみようと思う。

価格: 1万円9800円(税込)。カミーユ・フォルネ ヴォーリス・ルカの詳細はカミーユ・フォルネ公式サイトへ。


まるでデニムのようなカーフストラップ
By Masaharu Wada

見出しの表現タイトルだけでは、いったい何のことを言っているのか分からないかもしれません。僕がおすすめするのは、見た目はもちろん、触れたときの質感までデニムそのものなのに、上質なカーフスキンで仕立てられたこのレザーストラップです。

 僕が初めてデニムのような質感を持つレザーストラップを目にしたのは、2024年のWatches & Wondersでした。パテック フィリップのブースで、新作のブルーダイヤルを備えたワールドタイム Ref.5330Gに装着されていたのが、このタイプのストラップです。ショーウィンドー越しに見たときは、パテック フィリップが若い世代にも訴求するため、ストラップにデニム素材を取り入れたのだと思いました。

 実際にブースで手に取るまで、それがカーフストラップだとは気づきませんでした。さらに、手に取ったあとも説明を受けなければ、本物のデニムを使っていると思っていたかもしれません。それほどまでに、織り目のような斜めのテクスチャがリアルに再現されていたのです。

 それから、このストラップがずっと気になっていました。しかし、パテック フィリップの腕時計に付属するものだったため、ストラップ単体で手に入れるのは難しい状況でした。そんななか、ジャン・ルソーから「デニムカーフレザー」を用いたストラップが発売されたのです。そこでさっそく手に入れました。

 ジャン・ルソーによればこのカーフレザーは、革の表面に斜め方向のテクスチャを機械的に施すことで、デニム特有のツイルの風合いを再現しています。もちろん、素材はあくまでカーフレザーなので、デニムのような見た目を持ちながら、革本来のしなやかさや耐久性を備えています。

 僕が選んだのは、やや厚みのある「クラシック3.5」モデルです。表面にはデニムのようなブルーの濃淡があり、そこに白いステッチが加わることで、よりカジュアルな雰囲気が強調されています。一方で、裏面には滑らかなレザーが使われ、手首に触れたときの感触はいつものジャン・ルソーのストラップの柔らかなレザーです。巻き込み仕上げによってストラップの端まで丁寧に処理されているため、近くで見ても高級感があります。

 デニムのリラックスした雰囲気と、レザーならではの品のよさ。そのふたつがうまく組み合わさっているのが、このストラップの魅力です。ドレスウォッチに合わせればほどよくドレスダウンできてカジュアルな装いにも合わせやすくなりますし、スポーツウォッチに合わせても、ブレスレットとは違った柔らかさを楽しめます。いつもの時計に少し新鮮な変化を加えたい人に、ぜひ試してみてほしい一本です。

価格: 2万3100円(税込)。詳細は、ジャン・ルソー公式サイトへ。


ヴィンテージライクな腕時計に映えるレザーストラップ
By Kyosuke Sato

筆者はレザーストラップで腕時計を着けることはあまりない。手持ちのコレクションにブレスレット仕様のものが多いということもあるが、スポーティなモデルやミリタリーテイストの腕時計が多く、アリゲーターなどの高級なエキゾチックレザーで端正に装うスタイルにあまり縁がないのだ。そのため、ストラップを使う際もレザーではなく、NATOストラップなどのファブリック製のものを選び、カジュアルに着けることがほとんどだ。

 そんな筆者が引かれているのが、韓国・ソウルを拠点にヴィンテージウォッチの販売とストラップ製作を手がけるNOSTIME(ノスタイム)のオリジナルレザーストラップである。同ブランドのものづくりの出発点には、自分のコレクションに似合い、心から満足して着けられるストラップを作りたいという思いがあるそうで、そうしたエピソードも、筆者が興味を持った理由のひとつだ。加えて、ノスタイムはヴィンテージウォッチとの相性をストラップづくりの核に据えているが、そのようなストラップブランドは筆者の知る限りそう多くない。

 同社が、ストラップの完成時の美しさだけでなく、使ううちに色やつやがどう変わり、どのような表情に育つかまで考えて素材を選んでいるという点も興味深い。長い時間を経て味わいを増した腕時計、あるいはそのようなヴィンテージテイストのものに合わせるなら、ストラップにも同じように時間を楽しめる余地があってほしい。そういう考え方は、ヴィンテージウォッチやその雰囲気を受け継ぐ時計が好きな自分にしっくりくる。

 素材の顔ぶれもユニークで、レッドウィングへのレザー供給で知られるS.B. Footのヌバックや、ホーウィンのクロムエクセルなどを用いたストラップもある。カスタムメイドでは、1943年製のA-2フライトジャケットのレザーを用いて好みのストラップに仕立てることもできる。ほかではあまり見かけない選択肢は、見ているだけでも楽しい。何より気に入っているのは、筆者が好きなミリタリーテイストの腕時計とも好相性で、普段のカジュアルな装いにも自然に取り入れられそうなところだ。

 なかでもおすすめしたいのが、新作のミュージアムストラップ(THE MUSEUM STRAP)だ。ブランド初期の「TYPE 1」を発展させたコレクションで、ステッチを抑えたすっきりしたデザインが特徴。筆者が選んだのはスエード・サンドタンだが、スエード・エスプレッソには、英国のチャールズ・F・ステッド(編注;1895年ごろに英国・リーズで創業した、上質なスエードで知られる老舗タンナー)のレザーを採用しており、理想のカラーを実現するために素材を使い分けるこだわりがうかがえる。また、厚さはラグ側で2.5mm、剣先側で2.2mmと薄く、手縫い・手仕上げで製作されているほか、レザーの質感を生かす細部の作り込みに、腕時計を引き立てようとする姿勢が感じられる。

 手に取って特に気に入ったのは、薄さと、着けてすぐに手首になじむ感覚だ。気負わずにレザーストラップを楽しめる雰囲気も筆者の好みに合っている。いつもの腕時計に合わせても、急によそ行きの顔になりすぎず、ほどよく落ち着いた雰囲気を添えてくれる。この距離感は、ブレスレットやNATOストラップが好きな自分にはちょうどよく感じられるのだ。

 ミュージアムストラップ以外にも、ノスタイムでは普段使いの腕時計に似合うカジュアルなレザーストラップが多くラインナップされているので、そうしたものを探している人は、ぜひ一度手に取ってほしい。袖口にレザーの温もりを少し加え、その風合いが育つ様子を腕時計とともに楽しむ。ノスタイムは、そんな秋の時計との付き合い方を思い描かせてくれる。

価格:2万2000円(税込)。詳細は5W ONLINE SHOP(日本公式)へ。


秋の袖口にマットなグレーを
By Yuki Matsumoto

暑さが和らぎ、袖口からのぞく時計にも秋の気配を取り入れたくなる季節。秋のレザーストラップとしてまず思い浮かぶのはブラウンだが、今回私が選んだのは、ヒルシュのボローニャ グレーである。

 ヒルシュは、1765年にオーストリアで皮革工房として始まったブランドだ。時計ストラップの製造は1945年にスタートし、現在は自社製品に加えて時計ブランドのOEM生産も手がけている。モデル名のボローニャはイタリアの都市名を冠したモデルで、表材にはイタリアンカーフを用いる。

 このストラップは、表面に革本来の表情を生かした細かな凹凸があり、仕上げはマット。どうやら革を熱と回転を加えながら樽の中で揉みほぐすミリング加工を施すことで、繊維を柔らかくし、しなやかな風合いを引き出しているという。華やかなつやを加えるのではなく、革の表情をそのまま楽しめるところに引かれた。

 グレーは黒ほど強く引き締まりすぎず、ブラウンほど暖かな印象に寄らない。フランネルのシャツやニットの袖口からのぞかせても、装いに自然になじみそうだ。色の主張が穏やかなぶん、文字盤やケースのデザインを選びにくく、いつもの時計に落ち着いた変化を加えられる。

 裏材にはヒルシュのシルクグラブレザーを採用。フラットなデザインで、厚さは2.5mmと薄手。アビエ(クイックリリース式のバネ棒)付きなので、ストラップを付け換えたいときにも扱いやすい。ボローニャはグレーのほかにも7色が揃い、計8色で展開されている。秋らしいブラウン系の色を選ぶのもいいが、今回はあえてグレーに。季節感を前面に出しすぎず、手元を少し違った印象を加えたいときに選びたい一本だ。

価格: 2万5300円(税込)。詳細は、ヒルシュ公式サイトへ。