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90年代ウィークへようこそ。この特集では直近10年間で最も魅力的な(そして最も過小評価されている)時計と、20世紀末を特徴付けたトレンドとイノベーションを再考していく。ダイヤルアップ接続を行い、クリスタルペプシ(無色透明のコーラ)を手に取って欲しい。今週はずっとこのテーマを扱う。
『ダブル・チーム』は、ミッキー・ローク(Mickey Rourke)、ジャン=クロード・ヴァン・ダム(Jean-Claude Van Damme)、デニス・ロッドマン(Dennis Rodman)が出演した1997年の映画だ。筋書きを話すと、あなたは私を許さないし立ち直れないだろうから、話すことはできない。この映画について知っておくべきことは、デニス・ロッドマンのキャラクターがスウォッチのクロノグラフ、正確には1996年のクロノ スウォッチ クール パックを着用しているということだ。午後いっぱい、時には実際に本で調べてくれたローガン・エドワーズ(Logan Edwards)と、確認してくれたスウォッチに感謝する。
90年代生まれ、あるいは当時は若すぎてNBAに関心がなかった人たちにとって(あるいはマドンナやカルメン・エレクトラ/Carmen Electraが誰とデートしたか、結婚したか、婚約破棄したかに関心があった人)、デニス・ロッドマンはプロバスケットボール界のリベラーチェ(Liberace, 編註:派手なコスチュームプレイで人気を博したピアニスト)、ビョーク(Björk)、クッキーモンスターのような存在だった。彼はおそらく史上最高のリバウンダーであり、2度のNBA最優秀守備選手賞を受賞したが、スポーツマンシップに欠ける行動がスポーツでの活躍に影を投げかけた。カメラマンを蹴ったこともあれば、審判に頭突きをしたこともある。
コートの外における、ある種の贅沢なニヒリズムを含んだ彼の特徴的な動きは、奇妙で反抗的だった。本のプロモーションのためにウェディングドレスを着て“自分と結婚した”と言い、1998年のNBAファイナル第3戦に勝利した翌日、シカゴ・ブルズでの練習をサボってWCWの『マンデー・ナイトロ』に出演し、ダイヤモンド・ダラス・ペイジ(Diamond Dallas Page)を椅子で殴りつけた。
スウォッチとデニス・ロッドマンはまさに天国のような組み合わせだ。スウォッチは抽象的でカラフルな幾何学模様のデザインが特徴で、そのフェイスはロッドマンのヘアアートによく似ている。90年代初頭に発表されたこのスウォッチは、クロノグラフという機能を搭載することで、よりセレブリティにふさわしい時計に仕上がっている。パテックには遠く及ばないが、少なくとも際立った特徴を持っている。この時計は、ロッドマンが常に目指していたパンクロック的な要素を備えている。また、彼が(偉大なボールプレーヤーであることに加えて)2000年代にほとんど、以前よりもわずかに公にされない程度に、しらふでいようとするありふれた中毒者であったときに望んでいたものも持っている。
ロッドマンはともかく(『ダブル・チーム』で彼が演じたヤズという“派手な武器商人”も)、1990年代のスウォッチのクロノグラフは、私がぜひ手に入れたい時計だ。まさに、その時代を象徴するような時計なのだ。芸術を装った悪趣味、技術の進歩のわずかなヒントに対する大げさな興奮、目立つブランドを通じて粗野で無遠慮に表現された個性。スウォッチのクロノグラフウォッチは、かなりおもしろい。なぜ、最も顕著な特徴がくだらなさ、楽しさ、騒々しさであるものに、このような洗練された機能が搭載されているのだろうか? デニス・ロッドマンは、そんな存在でありながら、なぜバスケットボールが得意だったのだろうか?