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Bring a Loupe ホイヤー ダト 12、ロレックス “ボンベイ”、そしてF.P.ジュルヌ エレガント?

今市場に出ている掘り出し物のヴィンテージウォッチをお届けしよう。

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Bring A Loupeへようこそ、そしておかえりなさい。

 本コラムを担当して最初の2週間のスコアカードを少しご紹介しよう。ゼニス ダイバーズウォッチ S.58 マークⅣはタイトルに“Hodinkee Featured”と表示され、翻訳時点で3900スイスフラン(日本円で約78万円)で落札、バールウッドダイヤルを備えたデイトジャストはまだ購入可能だ。一方、ウォルサム 100は(おそらく200ドル/日本円で約3万円の希望価格近くで)売れ、チューダー Ref.4453は480ポンド(23%のプレミアムは含まず、日本円で約10万円)で落札された。興味深いことに、先週の“購入注意”としたオメガ コンステレーションを掘り出し物だと考えた人がいたようだ。eBayで2476ドル(当時のレートで約38万5000円)で売れたのだ。購入者の方、どなたかは存じ上げないが、もしよろしければ時計が届いたら連絡が欲しい。その前の週に紹介した時計では、シーボード ヨット クロノグラフが6000ドル(25%のプレミアムは含まず、当時のレートで約94万5000円)というかなり見事な価格で、ジン EZM1はプレミアム込みで3200ポンド(当時のレートで約67万7000円)で落札された。正直なところ、これらの結果をどう受け止めたらいいのかわからない。しかし、みんなさんは私が考える市場動向についての駄話を聞きに来たわけではないだろう。興味深い時計を見に来たはずだ。さあ、先へ進もう。


スティール製のホイヤー カレラ ダト 12
Heuer Dato 12

 初代ホイヤー ダトは1966年から67年にかけて89.50ドル(当時のレートで3万2000円)で販売された。つまり、現在オークションに出品されているこの時計は約60年前のものということになる。デイト表示が9時位置ではなく12時位置にあることから、これが第2世代ではなく第1世代モデルであることがわかる。搭載されているランデロン製のクロノグラフムーブメント Cal.189は45分積算計を備えている。オリジナルカレラの2レジスターモデルも45分積算計を特徴としていたという点を除けば、実用面では特に意味はない(これは1970年にRef.7753が導入され、分積算計が30分に切り替わると変更された)。

Heuer Dato 12

 この個体は実に素晴らしい。クリーンなダイヤル、ダイヤルと針の両方に良好な状態の夜光、正しい(サインなしの)リューズ、そしてかなりシャープに見えるケースを備えている。おまけに、この時計は2025年にメンテナンスを受けている。eBayで“サービス済み”と謳われているようなものではなく、正真正銘、領収書付きのサービスだ。

Bring a Loupe

 ホイヤーについて客観的であろうとするのは、私にとって少々難しい。私が時計にのめり込み始めたころ、ホイヤーは最高にクールな時計であり、その価格の上昇はエキサイティングであると同時に戸惑いも感じさせた。私は決して市場の専門家ではないが、ホイヤー市場は2017年11月にフィリップスが開催した“ホイヤーパレード”以降、少し熱が冷めたように思える。残念なことだ。ヴィンテージホイヤーは今でも最高に格好いい時計のひとつであることに変わりはない。この個体の予想落札価格は3000から4000ユーロ(日本円で約54万から73万円)だ。また、このオークションにはかなり素敵なモバード Ref.19068も出品されている。


F.P.ジュルヌ エレガント 48mm Titalyt®
FPJourne

 私の知る最高の時計師は、クォーツウォッチはおもちゃだと冗談を言うのが好きで、私も概ねその意見に同意してきた。それ自体は悪いことではない。G-SHOCKが必要な時と場所があるだけでなく、地下室の棚にラジコンカーを喜んで置いている成人男性として、私にとって“おもちゃ”であることは決して軽蔑的な言葉ではないのだ(ラジコンボートもあり、これはぜひ購入をおすすめしたい)。しかしドノヴァン(Donovan、その優秀な時計師)氏は、F.P.ジュルヌのエレガントを手に取ったことがないのだ。

 読者の皆さんも、HODINKEEのライターでさえ少し頭が混乱するような時計が紹介され、まるで“不気味の谷”のような感覚を覚えたとき、深く心を動かされた経験があるかもしれない。私自身がそうした瞬間を経験したのは22年の夏だ。エレガントを手に取り、自分の手のなかにあるものが何なのか、まるで信じられなかったのだ。私は機械式時計の細部をすべて理解しているわけではないが、その仕組みは概ね理解している。ゼンマイがゆっくりとほどけ、ムーブメントに動力を供給し、さまざまな歯車を駆動する、というように。

FP Journe

 しかしエレガントは、スマートフォンと同様の不可解な魔法のように感じられた。私が到底完全に理解できないレベルで、ほぼ完璧に機能するのだ。その価値や精度の高さを考えると信じられないほど軽いにもかかわらず、その両方を兼ね備えている。期待どおりに最高級の仕上げが施されたCal.1210は、興味深く巧妙である。時計が35分間動かないとセンサーが作動する。するとキャリバーは針を停止させるが、時刻の計測は続け、次に時計が手に取られると、針は正しい時刻に自動的に調整される。その際、時計回りと反時計回りのうち、短い方の経路で動くのだ。

 この時計が提供する機械的な驚異に加え、チタリット(Titalyt®)加工を施したグレード5チタン製のケースと、全面に夜光塗料が施されたダイヤルも特徴だ。実は、この特定の構成は現在入手できない。しかしこの時計ができること、そしてその感触(とても軽い!信じられないほど軽いのだ!)はきわめて魅力的で、私のような人間にとっては、その外観はほとんど重要でなくなるほどだ。

FPJourne

 このエレガントはHairspringにて13万5000ドル(日本円で約2125万円)で販売されている。そう、大金だ。この時計の価格は過去1年、特にこの半年で急騰した。F.P.ジュルヌの最も手頃なモデル(しかも機械式ですらない)であることを考えると、きわめて異常な事態だ。とはいえ時計が何を表すにせよ、それは誰かの熱意と、意図的な配慮の現れでもある。ハイエンドなインディペンデントウォッチが今、脚光を浴びている理由のひとつは、まさにそこにあると思う。メニューを徹底的に考え抜いたシェフが作る料理を食べるのがスリリングであるのと同じように、途方もなく手間暇をかけて考え抜かれたオブジェには、どこか安堵感のようなものがある。私たちはこうしたモノに慰められ、それを手に入れるためにお金を稼ぐ努力が、無駄な時間ではなかったと感じさせてくれるのだ。エレガントはほかの何はともあれ、100%途方もなく手間暇をかけて考え抜かれた時計であり、私がおもちゃという言葉から想像する最もかけ離れた存在なのである。


14Kゴールド製のロレックス “ボンベ” Ref.1010
Rolex Bombe

 想像できる限り最も“おじいちゃん”っぽいロレックスに光を当てるという、私の探求の旅を続けるとしよう。ここに、ボンベケースに収められた、信じられないほど美しいタイムオンリーウォッチがある。Ref.1010は1959年に発表されたが、今回紹介する個体はその洗練された控えめなダイヤルと、同時代の15XXや16XXモデルに見られる標準的なレクタンギュラーハンドから判断すると、おそらく60年代か70年代のものだろう。

Rolex Bombe

 そして、このコンディションは素晴らしい。ケースは並外れて美しく(裏蓋のホールマークや側面の水平方向のサテン仕上げも含む)、見事だ。ジャック・ギルバート(Jack Gilbert)は、完璧な詩『A Brief For the Defense』のなかで、“我々は快楽なしでやっていけるが、喜びなしではやっていけない(We can do without pleasure, / but not delight)”と書いている。そして私は、想定外のロレックスにこそ最大の喜びを見出すのだ。このブランドの歴史におけるヘビー級のモデルたちはどれも理にかなっており、ほとんど引力のようなものを感じさせる(ポール・ニューマン デイトナを一度手に取ってみて欲しい。めまいがするほどだ)。しかしこの数日間、私が何度も立ち返ったのは、このカーブしたラグを持つチャーミングな時計だった。それは純粋に喜びを与えてくれる。

Rolex Bombé

 この記事を書いている時点では、まだ誰も4000ドル(当時のレートで約62万円)の開始価格で入札していない(編注;3/2に5400ドル/当時のレート約84万9000円で落札)。私は間違いなく、この動向を注意深く見守るつもりだ。


オメガ スピードマスター “チュートニック” Ref.145.0040

 読者の皆さんは、今ごろ私が、風変わりさやユニークさという理由だけで奇妙なものを好むタイプの人間ではないかと疑い始めているかもしれない。私自身はそういう人間ではないと思っているが、今週取り上げたモデル、“ジュルヌ唯一のクォーツウォッチ”や、“ボンベケースのロレックス”は、確かに特定のイメージを描き出すだろう。

Omega Teutonic

 では、これはどうだろう。オメガのスピードマスター “チュートニック(Teutonic)”だ。初めてこれを見たとき、好みでなかった。心底、苦手意識を抱いていた。10年前に初めて目にしたとき、チュートニックのケースは趣味の悪い冗談のように思えた。なぜならスピードマスターにはクラシックなケースがあるじゃないか。当時、私は竪琴ラグ派だったので、スピードマスターにとってそれ以外のものは基本的に冒涜だった。スピードマスター “チュートニック”のケースに施されたサンドブラスト仕上げは、クラシックなプロフェッショナルケースが持つ洗練さのすべてを欠いている。さらに悪いことに、チュートニックはスナップオン式の裏蓋しかなく、標準的なスピードマスターが持つ防水性も備えていない。確かにダイヤルと針は見覚えがあるものだが、この時計は、まるでうまくいかなかったAI生成画像のようだ。

Omega

 しかし今ではチュートニックが本当に大好きだと認めざるを得ないのだ。理由はわからない。単に由緒あるCal.861を搭載し、ほかのどのスピードマスターとも違う外観だからだろうか? わからないが、実際、先月にはホワイトダイヤルを備えた個体に入札した。今回も入札するかもしれない。非論理的であることはわかっているが、この時計は“さまざまな”意味で80年代を叫んでいるのだ(丸みを帯びたプッシャーキャップなんて、まったく!)。しかしここにはどうしても振り払えない、控えめながらも魅力的な何かがある。

 現在325ポンド(日本円で約6万8000円)で入札されているが、私もあなたと競り合うことになるかもしれない。そしてチュートニックに魅力を感じないという方のために、同じオークションに、バーガンディベゼルを備えた1990年代製のユニバーサル・ジュネーブ コンパックスも出品されていることをお伝えする。これもまた、クラシックモデルのアップデート版だ。