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Bring a Loupe ゼニスのヴィンテージダイバーズ、宝石をちりばめたウォルサム、ロレックスの逸品、そして買い手は要注意の1本

今市場に出ている掘り出し物のヴィンテージウォッチをお届けしよう。

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Bring A Loupeにようこそ。愛用のルーペを取り出し、よだれが出そうな時計に空想の資金を投じる時間だ(もちろん実際に購入するのもよいが、結果には個人差があるだろう)。最新記事でこのコラムの担当として初めて登場した私に、皆さんから温かい歓迎の言葉をいただき感謝している。前回紹介した時計のうち、これまでに売れたのはゴールド製のオメガ コンステレーションだけで、3400ドル(25%のバイヤーズプレミアム込み/落札日のレートで52万7000円)で落札された。既知の選択肢に安住するのではなく、新しい時計を探しに行こうではないか。

 今回取り上げるのはダイバーズウォッチ、デイトジャスト、1940年代のチューダー、そして1960年代のウォッチメイキング界で起こった“石数の戦い(Jewel Wars)”を象徴する時計のひとつだ。さあ、素晴らしい時計たちを見ていこう!


私の密かなお気に入り: ゼニス ダイバーズウォッチ S.58 マークⅣ
Zenith Diver

 誰にでも、まるで“自分だけが知っている”かのような時計があるのではないだろうか。秘密の時計というわけではないが、一般的ではなく、ほかの時計愛好家でさえ知らないため、個人的なものに感じられるのだ。ブレイクして欲しいような、して欲しくないような、バンドを応援する気持ちに少し似ている。長いあいだ、私にとって究極のプライベートウォッチはファーブル・ルーバのディープブルーで、これはのちにディープ・レイダーとして復刻されている。そしてもうひとつの私のお気に入りが、常にこのゼニス ダイバーズウォッチ S.58 マークⅣだった。この時計についてはまだ知られていないことが多い。こちらに初期の情報がまとめられた素晴らしいスレッドがあり、元HODINKEEのリッチ・フォードンがRescapementで本モデルを取り上げた記事はこちらだ。ゼニスの誰かがこのモデルの歴史のすべてを明らかにしてくれたらおもしろいだろうが、それは重要ではない。そのミステリーが、時計の魅力を左右することはないからだ。

Zenith Diver

 今回紹介するこの個体は、Omega Forums(編注;主にオメガのファンやコレクターが集うオンラインコミュニティ)の個人出品者からのものだ。見つけられるなかで最も状態のよいもののひとつであり、私が見つけたいかなるS.58 マークⅣよりもよい価格設定がされている。マークIVに備わったブラックダイヤルはきわめてクリーンに見え、針と夜光塗料も素晴らしい。ケースには60年以上前のスポーツウォッチとしては、驚くほどわずかな摩耗が見られるだけだ。正直なところ、この時計がまだ売れていないことに少し驚いている。これを買うために手持ちのものを売らずに済むよう、自分のためにも早く売れてくれることを願っている。


ウォルサム 100

 あまり語られることはないし、馬鹿げているように聞こえるかもしれないが、ほかの業界で繰り広げられた(コカ・コーラ対ペプシのような)“戦い”と同じように、20世紀半ば、機械式時計の世界には“石数の戦い(Jewel Wars)”が存在した。

 当時、ムーブメントの石数にはシンプルなゼロ石や1石のムーブメント(特にキッズ用時計に多かった)から、7石、そしておなじみの17石、23石、25石のムーブメントまで、はるかに多様な選択肢があった。機械式ムーブメントの石数は、車の馬力や、美顔器のLEDの数と同じような役割を持つと理解されていたのかもしれない。つまり、多ければ多いほどよいと思われていたのだろう(実際には必ずしもそうではなかったし、今もそうではないのだが)。

Waltham 100

 私の知る限り、石数の戦いが繰り広げられた時代、最も果敢に突き進んだブランドはウォルサムだ。事態は烈火のごとくエスカレートしていき、1958年、ウォルサムは30石の時計を発表。1959年には49石、53石、65石のムーブメントから選べるようになり、ついには1960年に、ウォルサムは創業100周年を記念して、100石を備えたセンテニアルを発表した。

 ウォルサムだけが、このように余分な石を詰め込んでいたとは思わないで欲しい。シチズンのグランプリ100も100石を使用しており、クリントンは110石の時計をリリースしている。しかし基本的にこれらの事例は、石数がマーケティング上の策略だった。1960年のセンテニアルの広告では“100個の作動する石”を持つ時計として宣伝したが、1962年の広告では同じ時計が“100個の機能的な石”を持つと記されている。

Waltham 100

 実際には、センテニアルに搭載されていたムーブメントはCal.AS 1700/01であり、それに83個の石をちりばめたローターリングを追加して石数を増やし、きりのよい100石に到達させていた。ウォルサムはこの事実を伏せていたが、広告の文言がそのからくりを物語っている。確かにムーブメントには100個の石があったが、それらの石が作動しているのか、機能的なのか、あるいは単なる策略以外の何物でもないのかを主張することはやがて困難になった。最終的に1974年、国際規定のISO 1112:2009が制定され、企業が顧客を欺くためにムーブメントに過剰な石を詰め込むことを禁止し、石数の戦いは終結した。

Waltham 100

 この時計が「(A)何よりも珍品であること」、そして「(B)時計だけでなく、スマートフォン、クルマ、スウェットパンツといったあらゆる製品を改良し進歩させるとき、思慮深さの重要性を思い出させてくれる存在であること」を私は全面的に認めたい。ここで紹介する個体はeBayで200ドル(日本円で約3万円)の即決価格で出品(編注;現在、本品はすでに売却済み)されており、ラグのエッジがはっきりと残り、比較的珍しいステンレススティール(SS)製ケース、ねじ込み式のケースバック、クリーンなダイヤルを備え、そして素晴らしい状態を保っている。ウォルサム 100は奇妙な時計だ。同社が、真実をごまかそうとしていたことに気づかずにはいられない一方で、あなた(少なくとも私)は、その“思い切ってやってしまおう”という大胆さに感心せずにはいられない。


魅力的で小さなチューダー Ref.4453

 Sterling Vault Auctioneersが2月24日に開催したオークションに出品されたのは、ブライトリング Ref.2005、2本のスピードマスター(ロリポップ針のRef.2998と、箱と保証書付きのRef.2915-2)、そしてヴィンテージのエベラール スカフォグラフなど手ごわいラインナップだ。どれも注目に値するが、私はこの31mmのチューダーに何度も引きつけられた。

Tudor 4453

 この時計はおそらく、チューダーで“破壊テスト(Trial of Destruction)”が行われていた時代の少し前のものだろうが、ブランドに「我々の時計を越えてみよ」と言わせるほどの自信を与えたモデルだった。Ref.4453は、英国海軍北グリーンランド遠征探検隊で使用されたリファレンスではない(そちらはRef.7808かRef.7809)。しかし、当時製造されていた多くのチューダーに見られた、ケースの片側(リューズ側とは反対側)にしかラグ穴がないという、私にとって最も魅力的な特徴のひとつを備えている。片側にしかないラグ穴を楽しむことに、論理的な理由は何もないのだが、私はそれをとても気に入っている。どういうわけかそのほうがよいと主張し続けた、頑固なエンジニアの姿が目に浮かぶようだ。

Tudor 4453

 この時計は小さく、かなりシンプルな手巻きムーブメントを搭載している。過去数日間、この時計を何度も思い出してしまう理由を説明するとすれば、ブルースティール針と美しいダイヤルを挙げるしかない。ダイヤルの2時位置に若干の剥がれがあるものの、私にとっては、その欠点を乗り越えるだけの魅力がほかの部分にある。開始価格は240ポンド(オークション開催日のレートで約5万円/編注;現在は終了している)と手頃な価格だった。


1989年製のロレックス デイトジャスト Ref.16234/バールウッドダイヤル を備えたSS×ホワイトゴールド製

 時計が持ち主やそれを欲する人の価値観を映し出すものである以上、このコラムの第2回でデイトジャストを選ぶことに少し緊張している。デイトジャストは、取り立ててセクシーな時計ではないからだ。それはまるで、好きなミュージシャンにディーン・マーティン(Dean Martin)を挙げるようなものだ。しかし理由はよくわからないが、私が“時計”を思うとき、頭のなかで思い浮かべるのはほとんどいつもデイトジャストなのだ。サブマリーナーやデイトナ、GMTマスターのほうが人気があるかもしれないため、それらを自然と好きになれたのなら、自分としては気楽で、格好もついただろう。しかしある時点で私は、このありふれた、誰もが手にできるデイトジャストに魅了されてしまったのだ。

Burl wood Datejust

 しかしジョージ・オーウェル(George Orwell)の言葉を借りれば、“一部のデイトジャストはほかのモデルより優れている”のである。その特定の1本はMomentum Dubaiで販売されているもので、絶対的な逸品だ。ケースは完璧に見え、ブレスレットも素晴らしいが、この時計の主役はなんといってもダイヤルだ。バールウッドダイヤルのロレックスは、時計の世界におけるパクチーのような存在ではないだろうか。ある人にとっては美味しく、ある人にとっては不快なもの。いずれにせよ、私にとってバールウッドダイヤルは“大歓迎”の存在だ。しかしこのような個体で4万7000ドル(日本円で約730万円)となると、私がこのような時計を賞賛し、実際に着用する人間になるまでには、もうしばらく時間が必要だろう。


疑わしいオメガ コンステレーションにはご注意を

 前回、ヴィンテージのオメガ コンステレーションが危険地帯であることに触れたが、今回はそれを求める人を待ち構えている好例を紹介しよう。おそらくRef.14381だと思われるこのコンステレーションは、ケースは(65年以上前の時計にしては)まずまずの状態に見え、一見するとダイヤルも問題なさそうだ。しかし見れば見るほど、再塗装(リダン)されているのではないかという感覚を拭いきれない。

Omega Constellation

 55分から5分にかけてのミニッツマーカーがわずかにずれているように見え、垂直のクロスヘアラインは“Automatic”の“O”の中心にないように思える。これらは写真の写りが悪いか、風防が摩耗しているせいだろうと言えるかもしれないが、リューズが交換されているという事実がある(本来は10角形のリューズであるべきだ)。私の見立てでは、このダイヤルは再塗布されている可能性が高い。しかし読者の皆さんがこの個体についてどう思うか、ぜひ聞いてみたい。オークションは2月24日に終了し、2476ドル(落札日のレートで約38万5000円)で売却された。