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時計デザインの世界には、両極端な要素が多く存在する。その程度はデザインによって異なるが、多くの要素がグループになって存在している。おかげで我々のPoint/Counterpoint記事の小さなシリーズが長続きするというものである。今日はダニー・ミルトン(Danny Milton)と私とで、時計のデザイン要素のなかでも特に二極化が進んでいると思われるシースルーバック(ガラス張りの裏蓋)について考えてみよう。ダニーの主張は「自社製ムーブメントや優れたムーブメントを搭載した時計にのみシースルーバックにすべき」というものであり、それに対して私は「地味な量産品や供給品のムーブメント(エボーシュ)にも輝く時があるべき」という反論をするつもりである。そしていつものように、ドン・ヴィト・コルレオーネ(Don Vito Corleone)がバージル、“ザ・ターク”・ソロッツォ(Virgil, "The Turk" Sollozzo)に言った不滅の言葉を借りれば、私には私の理由があるのだ。
シースルーバックの存在そのものが興味深い現象である。500年前、ヨーロッパで最初の時計によって文明が大きく動き出して以来、時計のメカニズムが時計学者や一般人を魅了してきたことは確かだが、ムーブメントの動きを見ることができるケースに時計を収納するというのは、かなり新しい展開であることも事実である。懐中時計の時代には、ウォルサムのような量産メーカーが裏蓋をガラス張りにして小売店に出すことがあったが、これは販売用ではなく、“デモンストレーション”、“セールスマン用”と呼ばれるモデルであった。
ガラス製、あるいは後年にはプラスチック製のシースルーバックでは強度が不足するため、耐久性と実用性の観点から腕時計にはシースルーバックが採用されなかった。そのため、ムーブメントがどんなに美しいデザインと仕上げであっても、それが所有者の目に触れることはなかった。ジョージ・ダニエルズ(George Daniels)が『Watchmaking(ウォッチメイキング)』のなかで、イギリスの高級懐中時計の典型的な顧客は紳士であり、ムーブメントに興味を持つのは職人のすることであり、自分の品位に反することだと考えていたと書いているのは有名である。
私が確認した限りでは、最初のシースルーバックの腕時計は、裏蓋がアクリル製のドーム型のオメガ シーマスター クリアバックである。その後、シースルーバックは非常にニッチな生産品であり続けた。そして、クォーツショックの到来である。
機械式時計産業は消滅したわけではないが、自らを再発明し、突如として時計内部の機構(クォーツ計時装置や電池とは異なる)が差別化されるようになったのだ。クロノスイスの創業者であるゲルト・R・ラング(Gerd R. Lang)は、「Faszination der Mechanik(力学の魅力)」をモットーに、腕時計にシースルーバックを採用したパイオニアのひとりである。機械式時計をわざわざ買うのなら、なかの機械が見えるほうがいいということで、シースルーバックは珍しいものから、どこにでもあるものになった(2002年にはセイコー5でも採用された)。最も注目すべき例外はロレックスであり、現在でもほとんどの腕時計にがっしりとした裏蓋を採用し続けている。
腕時計のシースルーバックに実用上の問題があるわけではない。耐久性の問題はとっくに解決されているのだ。唯一残された論点は、伝統と美意識の問題である。シースルーバック反対論にはふたつの要素があり、ひとつは、ムーブメントの仕上げが良くなければシースルーバックにしてはいけないということ、もうひとつは、ムーブメントが自社製でないとシースルーバックにしてはいけないということである。
両者の要点は、どういうわけか、あるムーブメントがシースルーバックを採用するに“値する”必要があるということだ。
この議論に対する私の考えは、私自身の体験からきている。私が初めて買った機械式時計はセイコー5で、シースルーバックであった。実際、自動巻きでスイス製のものは買えなかったのだ。しかし、75ドル(約7500円)で機械式ムーブメントを所有し、見ることができるという楽しみを与えてくれたセイコーへの感謝の気持ちを失ったことはない。そしてそれが、プロとしてどこに進むべきかという判断を誤るきっかけとなり、よくも悪くも今の私があるのだ。私は、腕時計にいくらお金をかけることになるにせよ、誰もが歯車やテンプや脱進機がどのように動いているかを見ることができるようになるべきだと考えている。
最も説得力があるのは、頑丈な裏蓋のほうが伝統的であるという意見で、私のなかの偏狭なクラシック主義者はこれを非常に魅力的に感じている。しかしそれに対して、機械式時計のムーブメントはどこを見ればいいのかさえわかればおもしろいというのが、私の反論である。反故にしている。まさにFaszination der Mechanik(力学の魅力)だ。
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