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我々が知っていること
遠目でも、誰がつくった時計かすぐにわかることがある。H. モーザーの時計は、特徴的なケースやダイヤルがそうしたアイデンティティを放っており、なかでも、デザインに対する自信を最も体現しているのがエンデバー・コンセプトだ。このモデルをご存じない方のために説明すると、モーザーはエンデバーケースにブランドロゴをはじめ、すべてのブランディングを排している。ロゴもブランド名も何もない。あるのは、シグネチャーであるリーフ型針と、大きなダイヤルのみだ。
もちろん、単なるクールなストーリーというだけでなく、これにはきちんとした理由がある。多くのエンデバー・コンセプトのモデルは、ベンタブラックによる深淵のようなブラックやアベンチュリンガラスによる星空のようなダイヤルなど、何かしら興味深い特徴を備えており、ブランディングを排することでその魅力を存分に引き立てているのである。なかでも私のお気に入りは、フュメ仕上げを施したグラン・フー エナメルダイヤルであり、今年のWatches & Wondersではモーザーがエナメル装飾に焦点を当てたふたつの新しいコンセプトモデルを発表した。
最初に紹介するのは、シンプルながら決して単純ではないエンデバー・センターセコンド コンセプト パープルエナメルである。40mmのステンレススティール製ケースは、彫刻的な側面とコントラストの効いた仕上げを備え、フレッシュなパープルエナメルダイヤルを引き立てる舞台となっている。モーザーはまずホワイトゴールド製のダイヤルベースを用意し、そこにハンマー仕上げを施すことで透け感のあるエナメルの下地となるテクスチャーをつくり出す。そのあとパープルダイヤル特有のグラデーション効果を生むために必要な6色のエナメル顔料を洗浄し、粉砕したうえで個別に塗り重ねていく。顔料が塗布されるたびにダイヤルは複数回焼成され、さまざまな色調のエナメルが固定されていくことで、“パープルヘイズ”ダイヤルが完成する。ダイヤル上にはいかなるブランド表記もないため、エナメルによる職人技が余すところなく際立っている。
パープルの秒針はダイヤルと美しく調和し、自社製Cal.HMC 201によって駆動する。この最新の自動巻きムーブメントは現在ブランドの多くのモデルに順次搭載され始めている。ムーブメントには、部分的にスケルトナイズされたブリッジが備わり、ダークアンスラサイト仕上げが施されており、そのほかのパーツとのコントラストが美しい。数年前に登場したライムグリーンモデルと同様、ブランド独自のダブルヘアスプリングを備えたテンプブリッジはヒートブルー仕上げとなっている。パープルのクーズーレザーストラップを組み合わせたエンデバー・センターセコンド コンセプト パープルエナメルの価格は482万9000円(税込予価)だ。
エンデバー・コンセプト第2弾はエンデバー・トゥールビヨン コンセプト ターコイズ エナメルであり、エンデバーにおいてトゥールビヨン専用モデルがグラン・フー エナメルダイヤルを備えるのはこれが初となる。40mmの5Nレッドゴールド製ケースには、パープルのエナメル・エンデバーと同様ハンマー仕上げのWG製ベースの上に焼成された、鮮やかなターコイズブルーのフュメエナメルダイヤルが収められている。この仕上げにより、レッドゴールドの強い温かみとは対照的にトロピカルで冷涼感のある表情を与えている。一般的にはあまり見かけないカラーコンビネーションだが、そこにこそモーザーらしさが余すところなく表れている。
この時計に搭載されるのは、自動巻きのトゥールビヨンムーブメントであるHMC 805だ。文字盤側の開口部から見えるワンミニッツフライングトゥールビヨンには、ブランドの象徴であるダブルヘアスプリングが搭載されており、ダイヤル側にもわずかにスケルトナイズが施されている。これはコンセプトダイヤルならではの広大な余白を生かした、巧みなデザインとなっている。RG製のフォールディングクラスプとオーストリッチレザーストラップが組み合わされたエンデバー・トゥールビヨン コンセプト ターコイズ エナメルの価格は1342万円(税込予価)である。
我々の考え
これら2本のエンデバー・コンセプトは、コンセプト自体としては必ずしも目新しいものではない(言葉遊びはさておき)。しかし、モーザーのコレクションにこれほどまでにグラン・フー エナメルの技術が採り入れられていることが純粋にうれしい。困難な工程を経て生み出される、この鮮やかな色彩やグラデーションは、モーザーのビジュアルスタイルと驚くほど相性がいい。たしかにこのスタイルのエナメル装飾といえば真っ先に思い浮かぶのはアンオーダインなのだが、モーザーもこの技術を自らの価格帯において確固たるものにしている。
パープルダイヤルを備えた新センターセコンド・エンデバーについて知ったとき、まず気になったのは3年間にわたって好評を博してきたライムグリーンモデルが廃盤になるのかという点だった。ライムグリーンはスケルトナイズされるより前の古いムーブメント構造を採用しているため、この新しいパープルバージョンが後継機になるものと考えていた。実際には両モデルとも、少なくとも現時点では生産が継続されるとのことだ。今後の生産体制を考えるとグリーンエナメルダイヤルにもさりげないアップデートを加え、新しいHMC 201ムーブメントに移行するのではないかと予想している。というのも、古いキャリバーは時計技術的には同等であるものの、201キャリバーの持つビジュアルの華やかさと比べるとどうしても控えめに映ってしまうからだ。
Watches & Wondersの続報は今後数日にわたってお届けするので、ぜひ注目して欲しい。新作情報はすべて、ここでチェックできる。
基本情報
ブランド: H.モーザー(H. Moser & Cie.)
モデル名: エンデバー・センターセコンド コンセプト パープルエナメル(Endeavour Centre Seconds Concept Purple Enamel)/エンデバー・トゥールビヨン コンセプト ターコイズ エナメル(Endeavour Tourbillon Concept Turquoise Enamel)
型番: 1201-1200(センターセコンド)/1805-0400(トゥールビヨン)
直径: 40mm
厚さ: 11.2mm
ケース素材: ステンレススティール(センターセコンド)/5Nレッドゴールド(トゥールビヨン)
文字盤: パープルヘイズ(センターセコンド)/ターコイズ(トゥールビヨン)
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: クーズー(センターセコンド)/オーストリッチ(トゥールビヨン)
ムーブメント情報
キャリバー: HMC 201(センターセコンド)/HMC 805(トゥールビヨン)
機能: 時・分表示、センターセコンド(センターセコンド)/時・分表示、ワンミニッツトゥールビヨン(トゥールビヨン)
直径: 32mm
厚さ: 5.5mm
パワーリザーブ: 約3日間(センターセコンド)/約90時間(トゥールビヨン)
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
価格 & 発売時期
価格: エンデバー・センターセコンド コンセプト パープルエナメルは482万9000円/エンデバー・トゥールビヨン コンセプト ターコイズ エナメル1342万円。共に税込予価
発売時期: 発売中
限定: なし
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