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Hands-On ショパール L.U.C 1860 フライング トゥールビヨンは28年を費やし完成したタイムピースだ

オリジナルのL.U.Cコレクションと同じコンパクトなケースに収められた、世界最小のフライング トゥールビヨン。

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1996年、ショパールは初の自社製Cal.1.96を発表した。翌年、このキャリバーはL.U.C 1860に搭載され、ジュネーブシールとCOSC認定を受けたマイクロローターキャリバーとして、ショパールのフルリエ工房で製造された。

chopard luc 1860 tourbillon gold

ショパール L.U.C 1860 フライング トゥールビヨン

 私が執筆したオリジナルL.U.Cコレクションのコレクターズガイドにも記したように、ショパールのオーナーであるカール-フリードリッヒ・ショイフレ(Karl-Friedrich Scheufele)氏がブランド初の自社製キャリバーに求めた条件のひとつは、“将来的に複雑機構を搭載できるだけの強度と、平均を上回るパワーリザーブを備えること”だった。この技術的な要件に対する彼のこだわりは、28年の歳月を経て、私が目にしたモダントゥールビヨンのなかでも最も美しい一本とも言えるショパール L.U.C 1860 フライング トゥールビヨンの誕生へと結実した。

chopard luc 1860 flying tourbillon

 新しいフライング トゥールビヨンは、オリジナルのショパール L.U.C 1860と同じケースサイズで設計されており、そのサイズは36.5mm×8.2mmだ。このことにより、世界で最も小さいフライング トゥールビヨンであるだけでなく、ジュネーブシールとCOSC認定の両方を備えた唯一のモデルにもなっている。このモデルには、2019年に発売された、より大きな“フライング T”モデルのために設計されたCal.L.U.C 96.24-Lが搭載されている。さらに同ムーブメントは、数年後Revolution(レボリューション)によって、ホワイトゴールドとサーモンカラーの美しい限定版としてより小型の1860ケースに収められた。

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Cal.96.24-Lは、ヒンジ付きハンターケースバックの下からのぞける。

 本作は価格が12万7500スイスフラン(日本円で約2230万円)と高額であるが、わずか10本しか生産されないため、すでに完売していることだろう。18Kイエローゴールド製のケースがゴールドの文字盤と調和し、時計に温かみを与えている。これはかつてのパテック フィリップなどの“ドレ(doré、ゴールドに仕上げられたという意味)”文字盤で見られたような、ヴィンテージ特有の上品さに通じるものだ。この文字盤はショパールが数年前に買収した製造メーカー、メタレム(Metalem)社によってつくられている。ショパールは長年メタレムを採用しており、オリジナルのL.U.C 1860の文字盤も彼らの製作である。あのデュフォー シンプリシティもメタレム社製の文字盤を用いたことは有名な話だ。ゴールドの文字盤には手作業でギヨシェが施されており、これが生産速度を自然に抑える要因のひとつであるとショパールは述べている(昨年のルーセントスティール™製L.U.C 1860も、同様の理由により製造がゆっくり進んでいた)。さらに、アウターインデックスと6時位置のトゥールビヨンにもギヨシェ装飾が施されている。ロジウム加工されたインデックスとドフィーヌ針は、YGダイヤルとケースに対して控えめなコントラストを添えているが、私としてはインデックスと針も全面ゴールドで仕上げて欲しかったと思う(些細な不満ではあるが)。

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 このフライング トゥールビヨンムーブメントは、シンプルな時刻表示専用のマイクロローターキャリバーを基に設計。サイズは27.4mm×3.3mmと、こちらも“世界最小クラス”を誇っている。ツインバレルにより約65時間のパワーリザーブを備え、また技術的な特徴として近年では多くのブランドが取り入れなくなったようなディテールが揃っている。ブレゲひげゼンマイ、スワンネック緩急針、ジュネーブストライプ、手作業によるアングラージュ(面取り)などがその例だ。さらにハック機能を備えた数少ないフライング トゥールビヨンでもある。ハンターケースバックを開けると、サファイアガラス越しにCal.L.U.C 96-24-Lを鑑賞できるようになっている。

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 ショパール L.U.C 1860 フライング トゥールビヨンは、まさに完璧なドレスウォッチトゥールビヨンといえるだろう。スリムで装着しやすく、その高度な技術力を強調することなく控えめに存在感を放つが、その技術はショパールと同規模のほかのメーカーをはるかに凌駕している。だがこの時計が単に美しいだけではないことも特筆すべきだ。28年前、カール-フリードリッヒ・ショイフレ氏がCal.1.96を開発する際、こだわり抜いた技術革新があったからこそ、これほどまでに完成度の高い時計が実現したのである。

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 今回のフライング トゥールビヨンや、昨年のルーセントスティール™製L.U.C 1860、あるいはアルパイン イーグル XPSなどのリリースをきっかけに、ショパールのL.U.Cコレクションがいかに秀逸であるかを理解し始めたコレクターが増えてきている。L.U.Cコレクションは、ラグジュアリーな時計とジュエリーを幅広く手がけるショパールのなかでも、まさに自社製造による高級時計製造の砦である。そしてムーブメント製造に伴う制約から、ショパールが年間に製造するL.U.Cウォッチの数は数千本程度に限られる。この規模はパテックやジャガー・ルクルトよりもランゲに近いといえるだろう。

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L.U.C 1860 フライング トゥールビヨンを着用するカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏。

 正直に言って、L.U.Cコレクションのなかにはまだ大きすぎたり、デザインが少し無機質に感じるモデルもある。ただ昨年も書いたように、ルーセントスティール™製のL.U.C 1860は、このカテゴリーで私が最も好きなモダンウォッチのひとつだ。そして今では、このL.U.C 1860 フライング トゥールビヨンにも同じ愛着を感じている。

ショパール L.U.C 1860 フライング トゥールビヨン。36.5mm×8.2mmのエシカルイエローゴールドケース。自動巻きCal.L.U.C 96.24-L搭載、COSC認定とジュネーブシール取得済、マイクロローターと189の部品で構成され、サイズは27.4×3.3mm。ツインバレルによりパワーリザーブは約65時間。ゴールド文字盤に手彫りのギヨシェ装飾、ロジウム加工のインデックスと針。価格は12万7500スイスフラン(日本円で約2230万円)。世界限定10本のシリアルナンバー付き。詳しくはショパール公式サイトをご覧ください。