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Photos by Mark Kauzlarich
2019年の誕生以来、アルパイン イーグルは内外ともに幾度となく変化を遂げてきたコレクションだ。これまでショパールは、イエローゴールドケースにフルジェムセッティング、高振動ムーブメントの搭載やクロノグラフの実装、さらには超薄型ケースにサーモンダイヤルの組み合わせなど、さまざまなアルパイン イーグルを発表してきた。
先に取り上げた昨年のXPSは、大成功を収めた。それ以来、私の同僚たちはSlackの#watchtalkチャンネルで、その超薄型フォルムの素晴らしさを喧伝し続けている。アルパイン イーグルに新たな上位機種を誕生させる道を、XPSがハイビートキャリバーを搭載したケイデンス 8HFによって切り開いたのだ。
そして今年、アルパイン イーグル 41 XP TTがラインナップに加わった。ここであなた(そして私自身)のために、時計における"Semantics 101”(言語学やコンピュータサイエンスの文脈で使用されるフレーズ。これらの領域における基本的な概念や原則を導入するための初歩的なコースや講義を指す)を少し振り返りつつ、注意喚起していこう。まず、(タイトルで言及しているが)この時計の文字盤をスケルトンダイヤルと呼んではいけない。なぜなら、ショパールはこれをスケルトン(実際そうなってはいない)でもオープンワーク(これは非常に明確だ)でもなく、“L.U.C 96.17-Sの複雑な機械的機構全体が視認できる新しい超薄型タイムピース”としてはっきり説明しているのだから。非常に工業的な外観を持つXP TTをよく観察してみれば、なんとなく納得がいくのではないか。実は正直なところ(失礼、どうしようもなかった)、スケルトン文字盤とオープンワーク文字盤の違いについて30秒ほど考えなければならなかった。技術的にはこの文字盤はオープンワークと言えるのだろうが、オーデマ ピゲやヴァシュロン・コンスタンタンのような高価格帯の高級時計のそれとは異なる種類のものである。
なぜショパールがこのモデルを“オープンワーク”モデルとして発表しないのか、その理由を包み隠さずお伝えする前に、簡単に情報を整理しておこう。モデル名のXPは、eXtra-Plat(超薄型)の略だ。この時計のムーブメントであるL.U.C 96.17-Sの薄さは3.3mmで、ケース全体の厚みは8mmと非常にスリムになっている。総じて、かなり薄いと言えるだろう。そしてTTはテクニカルチタニウム(Technical Titanium)の略であり、したがってこの時計はメインコレクションのアルパイン イーグルよりもかなり軽量である。XP TTの直径は41mmだがベゼルは薄く、基本的なプロポーションとは少し異なっている。これは、この“オール・グッズ・オン・ディスプレイ(すべての要素が一覧できる状態)”の文字盤をより広く見せるためのものだろう。地板とブリッジにはケース開口部の曲線に沿うようにオープンワークが施され、ムーブメントの中心を囲む同心円状の空間を作り出している。地板の仕上げがないため、ある種インダストリアルな印象を与えるとも言えるし、皮肉な言い方をすれば、少し素っ気なく見えるとも取れる。それでも、ここにはまだまだ美的な要素がふんだんに盛り込まれている。サンドブラスト仕上げの地板とブリッジはブラックロジウム仕上げで、金メッキの歯車列と“L.U.C”のエングレービングが施された22Kゴールドのオフセンターマイクロローターを際立たせる見事なコントラストを生み出している。地板の仕上げに物足りなさを感じるのであれば、巻き上げ機構に施された面取りや、細部まで磨き上げられたビスなど、まさにL.U.Cにふさわしいディテールへのこだわりにも注目して欲しい。
2012年に初めて採用されたL.U.C 96.17-Sは、ショパール初の自社製スケルトン/オープンワークのムーブメントである。そう、XP TTをスケルトンモデルと呼ぶなと私は言ったが、2012年当時、彼らはオープンワークを施した斬新なモデルをLUC XP スケルテックと名付けていた。このムーブメントを最後に使用したのは(今年以前では)、2021年のLUC XP スケルテック限定モデルである。このムーブメントを搭載した時計は、すべてではないにせよ、そのほとんどの地板にジュネーブストライプがあしらわれていた。これまでのスケルテックには、L.U.Cラインに期待されるように、もう少しトラディショナルな装飾が施されていたのだ。まず私が思うに、XT PPの地板は、アルパイン イーグルのケースのサンドブラスト仕上げと調和するようにデザインされているのではないだろうか。少なくとも、このブラスト仕上げの地板はショパールが意図的に施したものであることは明らかだ。個人的には、より開放的なオープンワークを施したムーブメントが発表されてもよかったと思う。控えめな仕上げのL.U.Cムーブメントというのは、パラドックスを抱えていて少々滑稽でおもしろい。しかしおそらく、これはよりリーズナブルな価格(正確には税込392万7000円)でオープンワークのプロダクトを生み出す試みの一環なのだろう。そして私は、時計分野における民主主義を支持している!
この時計はグレード5のチタン製だ。しかし正直に言うと、私は軽い素材にさほどこだわりがあるわけではない。実際、私はゴールドの時計が何よりも好きなので、このチタン製の時計を手首にはめたときにどう感じるかについて、役に立つ意見を述べることはできない。言いにくいのだが、チタン製の時計はどれも同じような感覚で、「うわぁ、信じられないほど軽い時計だ!」という一般的な反応を呼び起こしたのちに、すぐに次の時計に目移りしてしまう。しかし今回のモデルには俄然好奇心が湧いて、試着するに至った。41mm径のチタン製“オープンワーク”スポーツウォッチなんていかにも私の好みじゃなさそうなのだけれど、その見た目が気に入ったのだ。実物を見る前から、その外観に引かれていた。だから私は、いまここでこの時計について書いているのだ。そして、私がヴィンテージのサンモリッツ スケルトンにちょっとした こだわりを持っていることも、好奇心が刺激される要因となった。新作のチタンウォッチかヴィンテージのサンモリッツか、私がどちらを選ぶかの答えはもうお分かりだろう。しかし、今日は近代的な時計の購買層について考え、彼らが近代的なアルパイン イーグルに何を求めているかを考察してみたいと思った。そしてどうやら、軽量性こそが求められているようなのだ!
より軽さを求めているというのなら、この特徴的なアルパイン イーグルのブレスレットはチタン製でとても快適だ。また、ショパール独自のルーセントスティール™製トリプルフォールディングクラスプが採用され、新型のセーフティプッシュボタンも配されている。ダニーの紹介記事によると、クラスプのセーフティプッシャーは手首からの取り外しを容易にするためのもので、間もなくアルパイン イーグルの全モデルに導入される予定だそうだ。ケースと同様に、このチタン製ブレスレットもステンレススティールのそれより少し黒っぽい色をしている。ちょっと光沢が控えめで、よりラギッドな印象だ。
アルパイン イーグル 41 XP TTは、アルパインが“ポピュラー”な腕時計へと踏み出すための次のステップとしては合理的で、完璧に理にかなっている。ここで言うポピュラーな時計とはブレスレット一体型のスポーツウォッチのことで、時計コレクターのコミュニティがドレッシーで一風変わった時計を賞賛するようになる一方で、大衆はこうした時計を貪欲に消費し続けている。しかし、これは決して事業拡大のための展開ではない。“オーデマ ピゲが売れているようだから、オープンワークのラグジュアリースポーツウォッチを作ろう”というコンセプトではないことは確かだ。第1に、XP TTにはサンモリッツ スケルトンという先代モデルがある。そして第2に、XP TTはショパールのスポーツモデルを、時計愛好家の世界においてショパールがこれまで標榜してきたスタイルへと導くものだ。つまり、真のドレスウォッチとしてのエレガンスである。ショパールはこのコンセプトについて“究極の古典主義的表現”とでも言うだろうが、それは間違いではないだろう。80年代と90年代における超薄型モデルを見れば、スリムなベゼルとケースが過去何十年にもわたってショパールの得意分野であったことがわかるはずだ。
すべてのコレクションにおいて、ショパールは可能な限り最高級の仕上げを追求している。カリテ フルリエの新作は、L.U.Cの水準をはるかに超えている。コアコレクションであるL.U.Cのドレスウォッチは、万人の好み(あるいは懐事情)にはそぐわないかもしれない。だが、アルパイン イーグルにこれらの高級ムーブメントを引き続き採用することで、ショパールが重視する高い仕上げを、より身につけやすいものへと昇華させている。これは審美的な反発ではなく、汎用性の追求なのだ。
ショパール アルパイン イーグル 41 XP TT。直径41mm、グレード5チタン製、ブレスレット一体型ケース。透かし彫りダイアル。ムーブメントはL.U.C 96.17-S、パワーリザーブ65時間。100m防水。価格は392万7000円(税込)で現在発売中。
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