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2023年のWatches & Wondersで大ヒットとなったのは、サーモンダイヤルを持つショパールのL.U.C 1860 ルーセントスティール™である。L.U.Cの世界にまだ染まっていない人(もしそうであればトニーの記事を読んでほしい)にとって、このサーモンは瞬く間に、多くの人々に同コレクションとショパールの素晴らしさを知らしめた。またこのモデルは小売店で手に入れるのが難しい。アメリカでは今のところ、ごく少数しか入荷していないと聞いている。そのような状況であれば、ブランドの類似製品を見て同じ魅力を持つかどうかを確認するのがよい。そこで今年のWatches & Wondersでは、価格帯の異なるふたつのL.U.Cの新作に注目した。36.5mmケースを持つ1860と比べて、ともに39mm径と40mm径というサイズでありその点は大きく異なるが、それでも一見の価値がある。まず最初はフォレストグリーンのセクターダイヤルを持つL.U.C XPSについてだ。
新しいL.U.C XPSは、ルーセントスティール™ケースのなかでおそらく最も大胆なダイヤルオプションであり、かつ最も手頃な価格である。直径40mm、厚さ7.2mmというサイズは、ドレスウォッチに求めるすべての条件を満たしている。この薄さは(XPSという名前からもわかるとおり)、薄い時計がいかに贅沢であるかを改めて思い起こさせる。前置きが長くなってしまった。PVD加工によるフォレストグリーンカラーは多くのドレスウォッチよりも大胆かもしれないが、ショパールはサンバーストダイヤルにサーキュラーサテン仕上げのインダイヤルを備えたセクターダイヤルデザインを採用しているため、驚くほどクラシックな雰囲気を保っている。ダイヤル以外で最も現代的な部分は、ステップがついたロジウム仕上げ針だろう。ショパールはこれをドフィーヌ針と呼んでいる。私が通常考える伝統的なドフィーヌデザインとは少し異なるが、一見するとその形に少し溶け込んでいる。
もう一方のL.U.C カリテ フルリエ(Qualité Fleurier、以下QF)は、非常に高価な300万3000円で提供され、L.U.C 1860の371万8000円(ともに税込)に迫る価格帯となっている。その価格上昇には理由があり、それについてはムーブメントの話に移る際詳しく説明する。しかしある意味では、このふたつの時計の選択は価格よりもサイズの好みによるものだと考えている。新しいQFは1860より2.5mm大きく、XPSより1.5mm厚い、39mm径×8.9mm厚である。私は小さくて薄い時計も好んでつけるが、39mmは現在のドレスウォッチの標準サイズと言える。その一方で1860には、見事なサーモンギヨシェダイヤルが備わっている。これが唯一の違いではないが、非常に際立ったデザインなのは確かだ。
QFには、ツートンメタルのダイヤルの上にロジウム仕上げのクサビ形インデックスが配され、その外側にはスーパールミノバを塗布している。針にもスーパールミノバが使用されており、“ドフィーヌとシリンジ”が融合したような形状をしている。ダイヤル外周はサーキュラーサテン仕上げが施され、内側部分にはXPSと同様のバースト仕上げを採用。またXPSと同様、QFにも1段窪んだスモールセコンドダイヤルがあるが、秒針はXPSの針のようにデザイン全体と調和していない。これがQFの特徴的な部分であり、おそらく最も意見がわかれるデザイン要素である。
XPSでは、ラグがミドルケースへとシームレスに一体化している。非常に滑らかでエレガントな外観を持っていた昨年のL.U.C 1860とは異なり、わずかにフラットな段差がある。この平らな部分は横からよりも上から見た方が目立つが、ケースが単なる量産デザインではないことを示す工夫のようにも感じられる。
一方、QFはサイズ変更されたリューズとミドルケースから突き出したホーン形のラグを特徴としている。これは大胆なデザインであり、人によって好き嫌いが分かれるだろう。個人的にはあまり気に入っていない。ケース、ダイヤル、ラグの要素がXPSや1860ほど一体感を持っていないように感じるのだ。QFにおいてはこれらの要素をすべて組み合わせたセクターツートン文字盤のほうが、モノトーンのデザイン&ケース形状によく合う可能性もある(誰にも分からないが)。とはいえ、ダイヤルとケースの比較だけで終わると、これらの時計の本質的な違いを見逃してしまうかもしれない。
表面的には、両方の時計は驚くほどよく似たキャリバーを搭載している。L.U.C XPSに搭載されているL.U.C 96.12-Lマイクロロータームーブメントと、QFに搭載されたL.U.C 96.09-Lマイクロロータームーブメントは、COSC認定キャリバーであり、ふたつの香箱を積み重ねたツインバレル(積載式二重香箱)で約65時間のパワーリザーブを確保する。ムーブメントの輪列は基本的に同じで、どちらのムーブメントも(1860も含めて)27.4mm径×3.3mm厚のサイズ。両者の違いは、精度、品質、仕上げに関する認証にある。
L.U.C XPSはほかのキャリバーほど、より高級な仕上げやテストを受けていないため、最も手頃な選択肢となっている。L.U.C 1860は、ジュネーブ・シール(Poinçon de Genève)認定の時計であり、ジュネーブ州内で組み立て、調整、ケーシングが行われている。ジュネーブ・シールの認証には精度、防水性、パワーリザーブ、そして総合的な機能性が考慮されるが、同認証は主に仕上げに重点が置かれている。なおギヨシェダイヤルを組み合わせることで、このシールは1860の大幅な価格上昇を意味する。一方、今手元にある時計について言えば、XPSの仕上げも悪くはないが、面取りからストライピング(コート・ド・ジュネーブ)、さらにはレタリングに至るまで、すべてL.U.C QFのほうが明らかに優れている。
あまり聞き慣れないかもしれないが、カリテ・フルリエとは複数の認証を統合したようなものだ。カリテ・フルリエ財団は2004年に設立され、スイス山間の町フルリエに位置する。L.U.C カリテ フルリエのムーブメントにある“L.U. Chopard”の下に、正方形のQFスタンプが刻印されているのが見える。このスタンプを得るために、L.U.C QFは100%スイス製で、COSC認定を受け、Chronofiable®(クロノフィアブル)テストに合格し、高水準の仕上げが施されていなければならない。読者にとって最もなじみのない要素はおそらくChronofiable®テストだろうが、これが最も重要なテストかもしれない。このテストは時計の寿命と経年変化に焦点を当てたものだ。もし短期間だけうまく動いて、その後のサービスに耐えられなかった時計を使ったことがあるなら、このテストを受けていたら…と思うことだろう。
ほかにもQFの平ひげヒゲゼンマイが使用されているといった違いがある。しかし、L.U.C XPSがQFと比較してどれほど優れているかは注目に値すると思う。多くのブランドが“お手頃”な時計をリリースする際、大抵劣ることが多いが、ショパールは価格に見合う素晴らしい仕上げを提供していることを、ディープな時計愛好家はよく知っている。特に1860の仕上げには多くの称賛が集まっているが、XPSではその価格の半分以下で堅実な仕上げが手に入る。そして再度注目すべきは、その薄さである。
手首に装着すると、L.U.C QFに対する多くの不満が消えた。実際腕につけるとデザインがより一体感を持ち、気に入らなかった個々のパーツについて心配することはなくなった。これは非常に完成度の高いデザインであり、初めて高品質なショパールを購入する人にとって、これはカリテ フルリエの素晴らしいエントリーモデルとなるだろう。
しかし価格で考えると、L.U.C XPSに勝るものはない。その薄さと、より強力なダイヤルデザインが特徴だ。ブランドの“お手頃”モデルで不満を感じていた人にとって、XPSはその考えを変えるかもしれない。1860と比較するとどうだろうか。ある意味では比較するのが難しい。どの時計も、おそらく異なるユーザーを対象としているからだ。
ショパール L.U.C XPS “フォレストグリーン”。Ref.168629-3001。直径40mm、厚さ7.2mmのルーセントスティール™製ケース、30m防水。フォレストグリーンセクターダイヤル、ロジウム仕上げの針とインデックス。自動巻きのL.U.C 96.12-Lマイクロロータームーブメント搭載、時・分・スモールセコンド、COSC認定キャリバー、ツインバレル、コート・ド・ジュネーブ仕上げ、平ひげヒゲゼンマイ、約65時間パワーリザーブ。ブラウンのカーフスキンレザーストラップ、エクリュのハンドステッチ、スティール製ピンバックル。価格は174万9000円(税込)
ショパール L.U.C カリテ フルリエ。Ref. 168631-3001。直径39mm、厚さ8.9mmのルーセントスティール™製ケース、30m防水。シルバーのサンバーストとサテン仕上げのセンター、サーキュラーサテン仕上げのチャプターリング。ロジウム仕上げの針とインデックス(スーパールミノバ塗布)。自動巻きのL.U.C 96.09-Lマイクロロータームーブメント搭載、時・分・スモールセコンド、COSC認定キャリバー、ツインバレル、コート・ド・ジュネーブ仕上げ、平ひげヒゲゼンマイ、カリテ・フルリエ認証、約65時間パワーリザーブ。ブラウンのカーフスキンレザーストラップ、ベージュのブライドルステッチ、スティール製ピンバックル。価格は300万3000円(税込)
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