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我々が知っていること
2024年6月に初めて発表されたアノマは、いい意味で多くの時計愛好家の注目を集めた。そのデザインは確かに常識の枠を超えており、コレクターたちの関心を引いた。カルティエ クラッシュやジルベール・アルベールが手がけたパテック フィリップのリファレンスといったヴィンテージモデルの流れを受け、アノマの美学はまさに時計業界が昨年求めていたものだった。オークションで8桁台に突入するような時計を手にできるのはごく一部のコレクターに限られるが、“シェイプウォッチ(特殊な形状の時計)”と呼ばれるカテゴリーはより幅広い層に開かれたものであることをアノマは証明した。通常、この手の時計を手に入れるにはブランドとの関係構築や長年の待機が必要となることが多い。しかしアノマのA1は、1カ月間のシンプルな先行予約販売によって、誰にでも手に入れる機会が与えられたのだ。
“ラグ・トゥ・ラグは何ミリ?”という世界の外にいるアノマのA1は、横幅38mm、高さ39mmの三角形ケースを特徴としている。ケースの厚さは9.45mmと比較的控えめで、ラグがないことやバネ棒の配置が巧みであることから、数値以上に快適な装着感を実現している。レザーストラップの時計を私のようにタイトにつけるのが好みなら、A1のケースバック全体が手首にぴったりフィットし、快適に着用できることに気づくだろう。
A1 スレートのダイヤルは、前作とは異なるアプローチをとっている。初代アノマはツートーンダイヤルを採用しており、ネイビーともロイヤルブルーとも言い難い独特の青色が特徴であった。しかし、2025年モデルではA1 スレートと名付けられた。このダイヤルは縦方向のサテン仕上げが施された三層ラッカー構造となっており、そのツートーン効果によって光の加減で黒にも深いグレーにも、あるいはその両方のようにも見える。実際に両モデルを手に取って比較すると、A1 スレートのカラーリングは3分割されたセクター風のダイヤルデザインと特に相性がいいことがわかる。またケースとダイヤルの配置には15%のズレがあり、それが幾何学的なフォルムにさらなる非対称性をもたらしている。この特徴は変更されずにそのまま継承された。さらに12時位置にあったロゴが排除され、クロスヘアのディテールが微調整されたことで視認性も向上。誇張されたリーフ型の針も、デザイン全体に見事に調和している。
セリタ製SW100がアノマ A1を駆動し、フルローターの自動巻き機構によって約38時間のパワーリザーブを実現している。SW100にはデイト機能が搭載されているため、リューズを引いて時間を調整する際いわゆるゴーストデイトポジションが存在する。これはネット上の時計愛好家たちがしばしば指摘するポイントだ。将来的にこのデイトポジションが排除されると理想的ではあるが、リューズに中間位置があること自体はそこまで大きな問題ではないと感じる。特にA1ではリューズがケースに埋め込まれているため、わずかに引いてゴーストデイト位置を経由し、さらにもう一段引いて時間を設定するという操作はそれほど煩わしくない。表現するのは難しいが、通常のリューズを備えた時計に比べると、この“ゴースト”なポジションはそれほど気にならない仕様となっている。
アノマ A1 スレートは3月10日午前9時(米東部時間)より発売される。生産数に制限はなく、シリアルナンバーも付与されない。価格は1800ポンド(日本円で約35万円)。納品は2025年6月を予定している。
我々の考え
今日発表されたアノマ A1 スレートは、シンプルにダイヤルのカラーが変更されたモデルだ。この事実を誤魔化すことはできない。しかし新興ブランドであるアノマの場合、時計業界では常に大きな関心が寄せられるものだ。発表時にはHODINKEEをはじめとするメディアで取り上げられ話題となる。そして顧客の手元に時計が届き、SNSでの投稿や口コミが広がることで再び注目を集める。ブルーダイヤルのA1に関して言えば、2025年1月に友人たちが手にしたころには、購入のチャンスはとうに過ぎ去っていた。だがA1 スレートならもう1度チャンスがあるのだ。
正直に言うと、昨年アノマの最初の時計が発表されたとき、私はかなり懐疑的だった。控えめに言って、だ。もしかするとそれは単に私自身の悲観的な見方の表れだったのかもしれない。私の最初の反応は、すべてがあまりにも見え透いているというものだった。特にセカンダリーマーケットのトレンドに敏感な立場としては、こうしたシェイプデザインの新興ブランドが流行に便乗しようとしているように思えたのだ。
とはいえ、アノマの創業者であるマッテオ・ヴィオレ・ヴィアネッロ(Matteo Violet Vianello)氏の考えを深く知り、実際にA1を手に取ってみたことで、自分の最初の反応は少し過剰だったと気づいた。確かに、市場がこの方向へとトレンドを形成していなかったらアノマが成功できたかどうかはわからない。しかしアノマの本質は、市場に乗じて時計をつくれば売れるだろうと考える創業者の話ではない。むしろ自分が本当に信じるプロジェクトを、市場の追い風を受けながらも大胆に進めた創業者の物語なのだ。我々が本当に求めているのはこうした情熱を持ったブランドであり、“とりあえず流行に乗って時計を作れば売れる”という姿勢のブランドではない。
時計業界は“新しい”デザインに飢えている。個人的には、またひとつ手ごろな価格帯のサブマリーナーやエクスプローラーのバリエーションを見るよりも、A1のような挑戦的な時計を支持したいと思う。アノマはブランドの立ち上げ時から時計デザインを常に前進させ、ラウンドケースにとらわれないアプローチを追求すると約束していた。A1 スレートは、シャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand)のテーブル、ジルベール・アルベール、そしてハミルトン ベンチュラからの影響を色濃く受けた、新たなA1シリーズのダイヤルバリエーションだ。もちろんニューシェイプを期待していた人もいるかもしれない。しかしこの若いブランドには、時間と成長の余地を与えてその期待を裏切られる機会を待ってみてはどうだろうか。少なくとも、私の最初の悲観的な見方はA1によっていい意味で裏切られたことをうれしく思っている。
基本情報
ブランド: アノマウォッチ(Anoma Watch)
モデル名: A1
直径: 39mm×38mm
厚さ: 9.45mm
ケース素材: 316Lステンレススティール
文字盤: ツートンラッカーブラック
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ラグ幅18mmのグレインイタリアンレザー(グレー)
ムーブメント情報
キャリバー: セリタ製SW100
機能: 時・分表示
直径: 17.2mm
厚さ: 4.8mm
パワーリザーブ: 約38時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 25
追加情報: すべての時計に2年間の保証が付属
価格 & 発売時期
価格: 1800ポンド(日本円で約35万円)
発売時期: 3月10日午前9時(米東部時間)発売、納品は2025年6月予定
限定: なし
詳細および予約注文はアノマウォッチ公式サイトをご覧ください。