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Photos by Mark Kauzlarich
昨年、ニューヨークのアーモリーで行われたトランクショーで、私はようやく飛田直哉さんと彼のチームにお会いすることができた。アーモリーはこの種のショーおなじみだが、特に香港とニューヨークの店舗では、最高のテーラリングとメンズウェアを提供している。熱心な時計コレクターであるマーク・チョー(Mark Cho)氏の指揮のもと、アーモリーは著名コレクターを夢中にさせているこのジャパンマイクロブランドウォッチを見る(そして注文する)ことができる、数少ない場所のひとつにもなっている。
以前、エリック・クー(Eric Ku)氏による飛田直哉氏のインタビューを掲載した(アーモリーとのコラボモデルや昨年登場したスポーティなTYPE 4Aも含む)。とはいえ、高く感じられる価格の割には、それに見合う価値があるかよく分からなかったため、自分の目で確かめる必要があった。だが実際に見て、その魅力に心を奪われた。これらの時計は、プレス写真よりも実物のほうがはるかに魅力的だ。写真を否定するものではないが、デザインと仕上げのレベルを理解するためには、実物を見なければならないと感じる。だからこそ、先週チームが再びニューヨークにやってきたとき、新作をチェックしに行きたかったのだ。また時計は抽選申し込みでしか入手できず、抽選は5月13日から5月16日までとなっているので、事前に情報を発信することが重要だった。
ナオヤ ヒダ&コー(Naoya Hida & Co.)が今年発表した新作のなかで、最もドラマチックなのがTYPE 5Aだ。これまでのコレクションの時計は比較的クラシックなサイズのラウンドケースが採用されてきた。これらの時計は一貫して直径約37mmであり、インスピレーションの源となっているヴィンテージウォッチの“ジャンボ”バージョンだが、現代の基準からすると小さい。TYPE 5Aも同様で、長さ33mm、幅26mm、厚さ9.1mmのステンレススティール製ケースを備えたレクタンギュラーのフォルムを持つ。またラグが43.5mmと長めなので、手首に装着したときのつけ心地が少しモダンになる。ただほかの飛田氏の作品がそうであるように、美しさが主なセールスポイントであり、細部に至るまで考え抜かれていた。
風防をデザイン要素として取り上げるのは初めてかもしれないが、TYPE 5Aは上下から中央にかけてドーム状になった、ふたつに別れた3次元のボックスクリスタルを備えている。これはヴィンテージのアール・デコモデルに用いていたカットガラスクリスタルを思い起こさせるもので、時計の全体的な美学にフィットしている。小さなツーピースケースは、飛田氏いわく、設計とサプライヤーを見つけるのに大変な労力を要したという。
ほかの時計と同様、この文字盤も手彫りされており、今回はふたつのパーツからなるジャーマンシルバーダイヤルとなっている(6時位置のインダイヤルに段差が見えるだろう)。エングレーバーの加納圭介氏は、飛田さんのデザインを見事に解釈した。このデザインは明らかに、1940年代の比較的珍しい防水ケースを持つカルティエのエタンシュ・ア・ダブル・ボワティエにインスパイアされている。アプライド数字の代わりに、インデックスは手作業で何度も切り出され、美しい浮き彫りがつくられる。針は凹状にカットされ、中央に細いラインが走っている。
30mの防水性能(公正に言えばエタンシュ・ア・ダブル・ボワティエよりも防水性はあるが、それ以上の深さで使うことはないだろう)を備えているのだが、これはおそらくナオヤ ヒダ&コー史上初のシースルーバックによるものだろう。ここに関しては残念ながら私にとって疑問が残るところだ。
ナオヤ ヒダ&コーに対する批判のひとつは価格だ。新型TYPE 5Aの価格は330万円(税込)であり、過去のモデルと同様に動力(香箱)、脱進機、輪列は外部のサプライヤーから調達している。この手巻き角型ムーブメント、Cal.2524SSは、地板、ブリッジ、ネジ、ラチェットのデザインを一新したプゾー 7001を流用している。飛田氏は、私が撮影したプロトタイプの仕上げは完璧ではないと言った。彼の話によると、チームはまだコート・ド・ジュネーブ仕上げのスタイルを模索中で、機械で面取りされたエッジをマッチさせるべく努力しているとのことだ(より優れたネジの研磨なども同様)。プロトタイプに基づいて判断するのは難しいし、また不公平かもしれないが、現在の仕上げレベル(特にブリッジ)は、製品全体の一貫性と比較すると粗く感じられ、彼らがこれを改善することを期待している。
繰り返しになるが、この時計のほかの部分はすべて飛田氏が自身のブランドで達成しようとしていることと一致しており、とてもよく考え抜かれ一貫性を持っている。次に私が日本に行く際は、ラルフローレンやF.P.ジュルヌで働いた長年の経験に加え、古いものと新しいものを融合させるためにインスピレーションを得るべく使っている蔵書を見てみないかと、彼らの社屋まで招待してくれた。そうした小さなことが大きな影響力を持つようになり、新しいDバックルに至るまでラインナップのすべての時計にアフターセールスオプションが用意されることになった。
飛田氏にとっては、新しい時計(およびキャリバー)はどれも重要なものだ。ブランドが設立されてからの6年間で、彼らはわずか243本の時計しか生産しておらず(その内訳は公式サイトで見ることができる)、このモデルは今後1年で10本しか生産されないと予定している。限られた生産体制(チームは現在、時計氏ひとりと彫金師ひとりで構成されているほか、新たな彫金師を育成中である)のため、今回のTYPE 5Aなどの追加により、TYPE 1D-1、TYPE 2C、TYPE 2C-1 “レターカッター”モデルの製造が中止されることになる。これだけ生産量が限られていても、飛田氏なら新しいTYPE 5Aの顧客を見つけられると思うが、私はいつかTYPE 2Cが復活するのを期待している。
ナオヤ ヒダ&コー NH TYPE 5A。縦33mm×横26mm、ラグからラグまで43.5mm、厚さ9.1mmのステンレススティールケース、30m防水。手彫りアラビア・トライアングルインデックスを施した2分割構造のジャーマンシルバーダイヤル、立体ボックスサファイアクリスタル、凹型ドーフィン針。手巻きのCal.2524SS搭載、時・分・スモールセコンド、パワーリザーブ約38時間。2024年~2025年に10本程度を生産予定。価格は330万円(税込)
TYPE 1D-3およびTYPE 3B-1のアップデート版
飛田氏と彼のチームによるそのほかの新作は、完全な新作ではなく、ラインナップの主力となったアイテムのアップデート版である。それぞれを深く掘り下げるのではなく、ラインナップの更新について簡単に概要をお伝えしよう。最初のモデルは、直径37mm、厚さ10.7mmのねじ込み式SSケースにムーンフェイズを搭載した2針のムーンフェイズである。今回、18Kローズゴールドのベゼルが採用されたことで、さらにパンチが加わった。しかしそれだけではない。
文字盤をよく見ると、手彫りのローマ数字(過去にリリースされたTYPE 3と同じ)だけでなく、手彫りのムーンフェイズのディスクにはラピスラズリの空が描かれているのがわかる。これらの変更により、標準的なSSのTYPE 3Bの330万円から、新しいTYPE 3B-1の418万円(ともに税込)へと価格が上昇した。クラシックなデザインのツートンメンズウォッチは現代では手に入りにくく、今後2年間で5本しか製造されないため、販売に苦労することはないだろう。
ナオヤ ヒダ&コー NH TYPE 3B-1。直径37mm、厚さ10.7mmのねじ込み式SSケース、18KRGベゼル、50m防水。文字盤は手彫りローマ数字、18KRG針、ラピスラズリ製のムーンフェイズディスク。手巻きのCal.3021LU搭載、時・分、ムーンフェイズ、2万8800振動/時、パワーリザーブ約45時間。2024年~2025年に5本程度を生産予定。価格は418万円(税込)
TYPE 1D-2とTYPE 1D-2、イエローゴールドのふたつの新しいオプション
もうひとつの、そしておそらく最も定番となる主力モデルは、3針に9時位置のスモールセコンドを備えたTYPE 1Dである。個人的には“6時位置の秒針”が好みだが、TYPE 1Dの手彫りのブレゲ風数字の魅力に勝るものはない。今回このコレクションにナオヤ ヒダ&コーにとって初の試みとなる、18KYGケースが2種類登場した。下の写真がその2本なのだが、どうだろう?
ご覧のとおり、この時計にはTYPE 1D-2とTYPE 1D-3のふたつのバリエーションがあり、後者にはケース側面とラグのあいだのエッジに手彫りの装飾が施されている点で区別できる。文字盤の彫刻を担当している加納圭介氏がこのケースの彫刻も担当しており、ひとつのケースにつき3~4週間の時間を要するという。そのため、今後2年間でおよそ3本しか製造されない予定である。
文字盤には63個のパーツがあり、新しい銀摩擦メッキ仕上げを施したジャーマンシルバー文字盤のミニッツトラックには、イエローゴールドのドットが施されている。この文字盤に見られるドットはプロトタイプであり、最終製品ではない。最終製品では仕上げが完璧になる。きっとだ。
ケースのエングレービングは、ブレゲのコインエッジとラルフローレンのエングレービングを組み合わせたウエスタンウォッチをほうふつとさせる、手作業で仕上げられたより大胆な仕上げを連想させる。万人向けではないが、彼らの生産数を考えればそうである必要はない。
それ以外の部分はほとんど変わらず、18KYG製のスクリューバック式だ。ブランドが使っているYGの色合いは、オーデマ ピゲの新しいサンドゴールドほど劇的ではないが、明るい光の下ではより“麦わら色”のような色合いであり、少しバラ色に近い色合いだ。エングレービングのないTYPE 1D-2は638万円で、2024年~2025年に5本程度が生産される予定で、一方エングレービングのあるTYPE 1D-3は880万円(ともに税込)で、これまでのブランドのなかで最も高価なモデルとなっている。
ナオヤ ヒダ&コー NH TYPE 1D-2とNH TYPE 1D-3。ともに直径37mm、厚さ9.8mmの18KYGケース、50m防水。文字盤は銀摩擦メッキ仕上げを施したジャーマンシルバー、針は18Kゴールド。手巻きのCal.3019SS搭載、時・分・9時位置にスモールセコンド、2万8800振動/時、パワーリザーブ約48時間。TYPE 1D-2(エングレービングなし)は2024年~2025年に5本程度を生産予定で、価格は638万円。TYPE 1D-3(エングレービングあり)は2024年~2025年に3本程度を生産予定で、価格は880万円(ともに税込)
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ナオヤ ヒダ&コーの時計についての詳細、および抽選への応募は、ブランド公式ウェブサイトをご覧ください。