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スイス時計協会(FH)によれば、5月のスイス時計輸出は「2ヵ月目の準麻痺状態」を経験した。
時計のグローバル輸出額は、世界的なコロナウイルス危機が続いているため、2019年5月と比較して、金額では68%減の6億5560万スイスフラン(約741億8500万円)、出荷本数では71%減の52万7000本となった。この急激な下落は、4月の81%の下落に続くものだ。
このデータは、スイスの工場から世界中の代理店への出荷額である「セルイン」を測定したものであり、エンドユーザーへの「セルアウト」は反映されていない。とはいえ、4月の統計と同様に、COVID-19によって行き詰まった産業の姿を印象的に映し出している。
5月の対米輸出は79%減となり、スイスのトップ30市場では2番目に悪い結果となった。
スイスの輸出市場は、30ヵ国中28ヵ国で39%から89%まで減少。30市場のうち28市場が39%から89%の間で下落しており、どの価格帯でも同じような影響を受けている。高級時計(3000スイスフラン以上)と安価な時計(200スイスフラン以下)は共に数量で73%、金額で67%の減少となった。
昨年8月から今年3月までスイス時計のトップ市場であった米国への輸出は、5月に79%減少し、2番目に悪い結果となった。これにより、米国は4位に転落した。最も大きな落ち込みはサウジアラビアで、89%減となりランキングでは25位となった。
COVID-19のロックダウン後、主要市場で最初に開放された中国が首位を維持。しかし、FHは中国が「急激な減少(55%)を記録した」と指摘している。「この市場の回復はまだ確実ではないようだ」とFHは述べた。
『コロナの影響は続く』スイスの時計市場TOP15、2020年5月。単位: 百万スイスフラン。情報: スイス時計協会
香港(69%減)は2位にとどまっている。上位に入った多くの市場は、米国のように70%以上下落している(日本、フランス、シンガポール、英国)。ドイツは53%の下落にも関わらず、ランキング3位に浮上。(奇妙に聞こえるかもしれないが、5月に50%程度の下落であったことは比較的良いパフォーマンスといえるのだ)。
出荷本数で見ると、スイスは5月に52万6744本の時計を出荷した。これは、2019年5月に出荷した本数より130万本少ない。これは、スイスが今年、第二次世界大戦後のどの時期よりも少ない時計の輸出量に到達するペースであることを示している。FHのデータによれば、スイス時計とムーブメントの総輸出量が2000万個を下回ったのは、1945年に記録した1880万個が最後だ。今年に入ってからの5ヵ月間の輸出は、わずか567万個にとどまっている。うち完成品の時計は465万個で、2019年1月から5月の期間から44%減少。金額では、それらの輸出は35%減の57.4億スイスフラン(約6497億円)となっている。
先月の記事「コロナウイルスによってスイス時計業界が体験する、歴史的不況を俯瞰する」でご報告したように、今年の第2四半期は、高級品セクターにとって厳しいものになると予想されていた。チューリッヒのヴォントベル銀行のルネ・ウェーバー氏による最も悲観的な予測では、スイス時計の輸出額は4-6月期に40%減少するとしている。今期も残り1ヵ月となったが、これまでのダメージはそれよりもはるかに大きいものだ。
中国の回復はまだまだ先のようである。
– スイス時計協会中国では状況が回復しているとの報告があるにも関わらず、ブランド幹部や財務アナリストの間では、今年の残りの月についての予測は依然として控えめなものとなっている。シャネルのフィリップ・ブロンディオー最高財務責任者(CFO)は先週、ロイターに対し、「COVID-19が2020年に大幅な減収減益をもたらすと予想しており、今後18~24ヵ月間は[ラグジュアリー]セクターにとって困難な状況になるだろう」と語った。
5月、コンサルト会社ベイン&カンパニーは、短期的にも長期的にも高級品の販売が減少するとの悲観的な予測を発表した。ベイン社は、今年の高級品の売上高は20%から35%の範囲で減少すると見ている。時計はこの上位に位置するだろうと予測する。2020年の第1四半期には、全ての高級品の中で、"時計の販売が最も減少した理由は、物理的なチャネルのシャットダウンを相殺するための、オンライン販売プラットフォームが不足しているためである "と彼らは指摘している。
ベイン社は「"高級"市場が回復するには時間がかかるだろう」とし、「2019年レベルへの回復は、2022年か2023年まではかかるだろう」と述べている。