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"Nevadian Collector"(ネバダ州のコレクター)と銘打たれたこのセールは、腕時計と懐中時計の合計40点(2点を除いてすべてパテック フィリップ)で構成されており、その歴史的意義の高さは驚くべきものだ。出品される時計はすべて、アメリカ出身の名もなき謎の人物が過去30年のあいだに入手したものである。この包括的かつコンパクトなコレクションは、ゲイ・フレアー社の刻印入りのパテック フィリップ ブレスレット3本(そう、時計なし)から、“ピンク オン ピンク”の永久カレンダー・クロノグラフ Ref. 1518の最初の個体まで、非常に多様なパテック フィリップの重要なタイムピースで構成されている。Ref. 1518は、昨年12月にサザビーズ・ニューヨークで957万900ドル(約12億2800万円)という記録的な価格で販売されて以来、初めて市場に登場した例だ。その他にも、2499、2526、そしてその他多くの逸品が並んでいる。530、1463、3448など、めったにお目にかかれないようなものばかりだ。
HODINKEE.jpの仲間は、先日行われた“Nevadian Collector”のオークションプレビューに参加し、いくつかのハイライトを撮影することができたので、以下にご紹介していく。それでは、さっそくごいってみよう。
第2世代2499の素晴らしい2本
伝説の時計、パテック フィリップ 永久カレンダー・クロノグラフ Ref. 2499がひとつのオークションで4つも出品されることはそうそうないことだが、“Nevadian Collector”はまさにそんなオークションなのだ。第4世代の個体、第3世代の個体、そして特に注目すべき第2世代のふたつの時計はすべて月曜日になればあなたのものにできるのだ。ここで注目したいのは、後者のふたつだ。
第二世代のRef.2499は、ポンプ式の丸型クロノグラフプッシャー(ファーストシリーズでは角型)、アプライドバトンインデックスまたはアラビア数字のオプション、そしてタキメータースケールの一貫した存在が特徴的なモデル。第二世代のRef. 2499の最も一般的なモデルはイエローゴールドだが、後述するように、ピンク/ローズゴールドのモデルも稀少で、非常に魅力的なモデルだ(4つの世代の違いについて詳細を知りたい方は、ベンが2014年に執筆したリファレンス・ポイント「パテック フィリップ パーペチュアルカレンダー・クロノグラフの歴代モデルを理解する」記事をご参照)。
まず、ロット2018を見てみよう。1957年のゴッビ・ミラノの小売店サインが入ったピンクゴールドの例は、2007年5月にクリスティーズ・ジュネーブで273万6000スイスフラン(約3.6億円)で落札されて以来、オークションにおける最も高価な2499の世界記録を保持していた。現存する第二世代のピンクゴールド全9本のうち、オリジナルの販売店名のダブルネームモデルは、この時計だけだ(ゴッビとのダブルネームの2499は他にもあり、2015年5月にサザビーズ・ジュネーブで落札されたこの第3世代のリファレンスがあるが、ピンクゴールドの第二世代の例はない)。第二世代かつピンクゴールドは、目を潤ませるには十分すぎるほどだが(ジャン-クロード・ビバーの話を聞こう)、ゴッビ・ミラノのサインは? このダブルネームは、あなたをワクワクさせるに十分なものだ。
サザビーズのロット2018の現在の推定落札価格は、2400万~4800万香港ドル、日本円で約3.9億〜7.8億円に設定されている。
次にご紹介するのは、ロット2021、イエローゴールド製の第2世代の2499だが、当然のことながら、このモデルもただものではない。そう、このモデルは、夜光を備えた唯一の第二世代の2499なのだ。この時計は22年前の2000年10月にサザビーズ・ニューヨークで販売されたのを最後に、オリジナルオーナーの家族から委託を受け、ネバダ州のコレクターに売却され、以来、彼はこの時計を所有している。月曜日にこの時計を手にする人は、これまでで3人目の所有者となるのだ。
2499の夜光つきモデルで特に興味深いのは、その数の少なさだ。1951年から1985年まで30年以上にわたって生産され、4つの世代で349本が知られているが、夜光つきのモデルは、第一世代が1本、第二世代(今回取り上げるネヴァディアン)が1本、第三世代が2本、そして移行期の1本の合計5本のみしか確認されていない。考えてみれば、これは異常なことだ。
ロット2021のエスティメート(予想価格)は、640万〜1250万香港ドル、日本円で約1億400万〜2億400万円だ。
もうひとつのクレイジーな“ピンク オン ピンク”のRef. 1518
サザビーズで別の“ピンク オン ピンク”の1518が出品されたというニュースをお届けしたのは、それほど前のことではない。半年も前の2021年12月、サザビーズ・ニューヨークは、コレクターのエリック・クー氏が「史上最高のパテック フィリップ」と言い、パテックの専門家ジョン・リアドン氏が「定義に値する聖杯」と評した時計を競売にかけたのである。その1518は結局、957万900ドル(約12億2950万円)という驚異的な価格で落札され、オークション史上5番目に高額な時計、2021年のオークションでの最高落札価格の時計、サザビーズで落札された腕時計の世界オークション記録、オークションに出品されたヴィンテージウォッチとしてはポール・ニューマンのロレックス「ポール・ニューマン」デイトナ、有名なステンレススティール製のRef.1815に続く史上3位の価格となったのだ。
さて、この例はどうだろう? 月曜日に販売されるロット2008は、ピンクゴールドのケースにピンクの文字盤を組み合わせた“ピンク オン ピンク”のRef.1518として確認されている14本のうちの1本だ。1518は、2499の歴史的な前身であり、世界初の連続生産された永久カレンダー・クロノグラフ腕時計だった。このモデルは10年余り生産されたが、281本しか確認されておらず、そのほとんどがイエローゴールドのケースだ。ピンクゴールド製は58本のみで、通常のシルバーの文字盤ではなくピンクの文字盤を備えていたのは、14本のみと言われている。
皮肉なことに、このモデルは2008年にクリスティーズ・ジュネーブで公開され、84万3000スイスフランで落札されている。14年後の現在、この時計のエスティメートは、は800万~1600万香港ドル、日本円で約1.3億~2.6億円だ。
エスモンド・ブラッドリー・マーティンが所有したティファニー・ダブルネームの懐中時計
“Nevadian Collector”に出品される数多くの懐中時計のなかで、個人的なハイライトは間違いなくこれだ。今回ご紹介するパテックフィリップのRef.655/1は、1957年頃にティファニーで販売されたムーンフェイズ表示付きイエローゴールド製ミニッツリピーター・パーペチュアルカレンダー懐中時計である。元々は、アンドリュー・カーネギーのパートナーであったカーネギースチールのヘンリー・フィップスの孫であるニューヨークの銀行家、エスモンド・ブラッドリー・マーティンの著名なコレクションの一部だったものだ(2002年のニューヨークタイムズ紙の訃報記事によると、彼は "アトランティックサーモンのフライフィッシング世界記録保持者 "でもあったそうだ)。注:アメリカの自然保護活動家エスモンド・ブラッドリー・マーティンはまったくの別人である。
このロット2011のカタログノートによると、マーティンは、「ブレゲ、パテック フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、そしてチャールズ・フロッドシャム、J.W.ベンソン、S.スミス&サンズといったイギリスの高級メーカーによる時計を含む、19~20世紀のフランスとスイスの最高級メーカーによる複雑時計」という幅広いコレクションを持っていたそうだ。マーティンが亡くなったあと、彼のコレクションは2002年にサザビーズ・ニューヨークでオークションにかけられ、ここで紹介されているRef.655/1は26万5000ドルでネバダ州のコレクターに落札された。
このRef.655/1は、アメリカ配列のインライン永久カレンダー表示(月/日付/曜日)に加え、スライドではなく12時位置のリューズにあるプッシャーで作動する珍しい2列式トリップミニッツリピーター機構を備えている。同様のモデルが昨年12月にフィリップス・ニューヨークで50万ドル以上で落札された。ロット2011のエスティメートは200万〜280万香港ドル、日本円で約3200万〜−4500万円だ。
ピンクゴールドのRef.530、15本のうちの1本
2016年にベンがずっと強調していたように、パテック フィリップのRef.530は、スイスの同ブランドの全歴史のなかで「最も希少なクロノグラフの生産リファレンス」と考えられている。これは、オリジナルのRef.130のサイズアップバージョンで、より大きなクロノグラフを望むパテックのVIPコレクターにのみ提供されたと理解されている。
今回のロット2035のカタログノートには、1937年から1962年のあいだに、「イエローゴールド、ピンクゴールド、ステンレススティール製で100本強が製造された」と記されている。月曜日にサザビーズで販売される時計は1951年製のもので、現存する15本のピンクゴールド製Ref. 530のうちの1本だ。
この時計は、1999年5月にサザビーズ香港でオリジナルオーナーの家族からネバダ州のコレクターに初めて売却され、彼はこの時計を所有したあとにパテックフィリップで文字盤を修復してもらっていた。6年前にベンが取り上げたステンレススティール製でAstrua Torinoのサイン入りの個体ほど希少ではないものの、月曜日に販売されるピンクゴールドのRef.530は、160万~240万香港ドル(約2620万〜3930万円)のエスティメートとなっている。
最高の状態のRef.1463のひとつ
パテック フィリップ Ref.1463は、パテック初の防水クロノグラフだ。正直なところ、パテックが初めてスポーツ用途を想定した腕時計と呼んでも差し支えないと思う。35mm×14mmというインパクトのあるサイズに、従来のスナップバック式ではなく、ねじ込み式のケースバックを採用。1940年代初頭に発表されたこのクロノグラフは、1965年頃まで同社のカタログに掲載されていたが、Ref. 1463の総生産本数は、わずか750本ほどだった(1998年に5070が発表されるまで、パテックは1463を別の防水クロノグラフに置き換えることはなかったというから、なおさら信じがたい話だ)。
また、1463は長年にわたって多くのファンを魅了してきたといってもいい。キャロル・シェルビーも所有していた。ブリッグス・カニンガムもそうだし、エリック・クラプトンという名の紳士もそうだった。ジェイソン・シンガーは2015年、記事“Talking Watches”のなかで彼が所有する1463を取り上げたほど。サザビーズが香港で落札した個体は、1962年に製造されたイエローゴールド製で、アプライドマーカーを備えた夜光なしダイヤルだ。イエローゴールドの1463は、それ自体、とんでもなく珍しいというわけではなく、少なくとも準定常的にオークションに出品されている。ご自身の目で一度確かめてみて欲しい。
エスティメートは、200万〜280万香港ドル、日本円で約2500万〜4500万円。
豪華なカラトラバたち
“Nevadian Collector”セールの全ラインナップにおける40本の時計のうち、4本は極めて豪華なカラトラバだ。クラシックなRef.2526(ベンの2016年の詳細レポート「今、なぜパテック フィリップ Ref.2526なのか?」をお見逃しなく)3本とイエローゴールドケースにエナメルダイヤルを備えたRef.3428だ。
象徴的なRef.2526の後継として登場したRef.3428は、1960年に発売され、Ref.2526と同じケース形状でありながら、新しく改良された自動巻きCal.27-460を搭載。しかし、それ以外のカラトラバ Ref.3428に関する学術情報はあまりなく、製造期間や製造番号など、多くの重要そうなディテールが謎のままになっている。サザビーズが月曜日のロット2018のカタログノートで確認したところ、イエローゴールドのRef.3428は、過去に20本しか市場に出回ったことがないと確認されている。この美しくもどこか謎めいたカラトラバは1962年のもので、エスティメートは32万~48万香港ドル、日本円にして約520万〜780万円となっている。
パテックフィリップのRef.2526は、端的に言えば、あなたがよく知る古典的なカラトラバだ。“Nevadian Collector”セールのロット2025は、1958年に作られ、前世代のムーブメントを搭載していることを除けば、イエローゴールドケースとエナメルダイヤルで、先ほど紹介したRef.3428と驚くほどよく似た外観をしている。
そしてロット2010もカラトラバ Ref.2526だ。こちらは1957年製のピンクゴールドケースで、南米ベネズエラの老舗宝飾店“SERPICO Y LAINO”(セルピコ イ レイノ)のサインが入っているのが特徴だ。そのため、40万~55万香港ドル(日本円で約650万〜897万円)のエスティメートが提示されている。
“Nevadian Collector”セールの最後の2526は、先ほどご紹介したみっつのカラトラバのアイボリーエナメル文字盤とは異なり、ブラックエナメル文字盤にイエローゴールドケースを備え、美しいコントラストをなしている。また、ロット2007は2526の初回生産年である1953年製だ。ダイヤルの2度焼きエナメル加工や、アプライドとファセットが施されたたゴールドのアワーインデックスをダイヤルにセットするためのピンが使用されている点など、第一世代と認めるのにふさわしい意匠が揃っている。
カラトラバ2526の第一世代は、標準的なアイボリートーンではないブラックエナメルダイヤル採用モデルが非常に少ないことが知られている(サザビーズはロットノートで10例を挙げている)。さらに、この2526のダイヤルは長年にわたってきれいな状態を保っており、目に見えるひび割れはゼロだ。ロット2007のエスティメートは、80万~160万香港ドル、日本円で約1300万〜2600万円となっている。
見どころ満載のラグ!
私は、この最後の数ロットに注目せずにはいられなかった。面白いケースデザインに目がないのだが、この3本のヴィンテージパテック フィリップは、特にラグの部分で、魅力を十二分に発揮している。
上の1947年製のピンクゴールドのパテック フィリップ Ref.1491の“渦巻き装飾”が施されたラグを見て! インダイレクト・センターセコンドムーブメントを内蔵し、技術的な付加価値まで付いてくるのだ。これはロット2015で、エスティメートは8万〜12万香港ドル、日本円で約130万〜196万円だ。数千万円〜数億クラスの時計をここまでに2000文字以上でご紹介してきた今見ると、
または約$ 1万0198 - 1万5297 USD、2000以上の単語で6桁と7桁の値札を入力したあとに絶対的な盗品のように感じている。かなりお買い得に感じるのではないだろうか。
このロット2022は、1947年製でイエローゴールドのレクタンギュラーケースを備えたRef.2415。上記のRef.1491と同じエスティメートとなっている。この時計は、アール・デコ建築の大きな世界から着想を得た美しい彫刻のようなラグが特徴だ。
最後にご紹介するロット2012は、珍しいピンクゴールドケースのRef.2441だ。1949年に誕生し、パリの象徴であるエッフェル塔の台座に似ていることから、「エッフェル塔」の愛称で知られている。このリファレンスは1948年から50年代後半までの約10年間生産されたが、サザビーズによると、ピンクゴールド製の個体は50本以下と考えられており、確認されているのはこのネバダ州のコレクターの個体を含む21本だけだという。なお、文字盤は1990年代後半にパテック フィリップの時計職人によって修復されている。
エッフェル塔は、24万〜40万香港ドル、日本円で約390万〜655万円だ。
クレジット表記がない写真はすべてHODINKEE.jpの和田 将治が撮影。
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