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中東市場が、近年の時計市場の成長において重要な役割を果たしてきたことはもはや周知の事実である。それも当然のことだろう。中東は時計との長い歴史を持ち、この地域にルーツを持つヴィンテージウォッチは、トップブランドのなかでも特に高い評価を受けている。その影響力は、同じ時期のアート市場における中東の投資にも及んでいる。しかし、これまでサウジアラビアでは一度も大規模な国際オークションが開催されたことがなかったという事実には、驚かされるかもしれない。しかしその流れは、2月8日にディルイーヤで開催されるサザビーズのOriginsオークションによって大きく変わることになる。
サザビーズのOriginsオークションは時計だけが注目されるイベントではないが、時計の出品は10点あり、そのなかに注目すべきモデルがいくつか含まれている。そのひとつがロット116 のロレックス Ref.6264、“ポール・ニューマン マスケティア”デイトナだ。この個体はオリジナルオーナーが購入した際の書類が付属している点も魅力だが、特に注目すべきはインダイヤルのデザインである。通常のデイトナでは、インダイヤル全体に円形のテクスチャーが施されているが、“マスケティア”ダイヤルは異なる。円形デザインがダイヤルの約3分の2の範囲 までしか施されておらず、残りの部分は滑らかで傾斜がついているのだ。これはRef.6262および6264において最も希少なトリカラーダイヤルのひとつとされており、オークションでの推定落札価格は 16万〜32万ドル(日本円で約2470万~4950万円) に設定されている。
もっと資金に余裕があるなら、今回のオークションで最高額の推定落札価格を誇るのが、リシャール・ミル RM 038 “ヨハン・ブレーク”プロトタイプだ。その金額は100万〜150万ドル(日本円で約1億5500万~2億3200万円) に設定されている。この時計はジャマイカの短距離走者ヨハン・ブレーク(Yohan Blake)氏が、2012年のオリンピックで実際に着用したモデルである。オリンピックで使用されたトゥールビヨンウォッチはきわめて珍しいが、そのなかでもこのプロトタイプは別格の存在だ。ケースにはマグネシウム合金が採用されており、その重量はわずか44g。まさに次世代のスポーツウォッチと言えるだろう。
中東市場ではモダンウォッチが主流であり、今回のカタログもその傾向を反映しているが、ヴィンテージスタイルの時計もラインナップされている。その一例が2007年製のユニークピース、カルティエ クラッシュであり、推定落札価格は13万〜26万ドル(日本円で約2010万~4020万円)だ。さらに、中東にゆかりのある時計を求めるコレクターにとって魅力的なモデルも用意されている。その1例がプラチナ製ロレックス デイデイトIIである。このモデルの裏蓋にはオマーン国章のエングレービングが施され、王宮への納品が確認された証明書が付属する。オークションでの推定落札価格は6万〜9万ドル(日本円で約930万~1390万円)だ。
確かに、時計の出品は10本と決して多くはないが、これはサウジアラビアが国際的な大規模オークションを開催する市場としてどのように機能するかを試す貴重な機会となるだろう。個人的には特にデイトナとクラッシュに注目している。これらのモデルは、サウジ市場の嗜好を測るうえで最も大きな試金石になると考えているからだ。しかし今日の大規模オークションは、開催国だけに限られたものではなくなっている。もし動向を詳しく追いたいなら、電話やオンラインを通じて世界中からどれほどの入札があるかその頻度に注目すると、市場の動きがより明確に見えてくるだろう。