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Introducing ブレゲ マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887

最も精巧なブレゲ・ウォッチのひとつが、新たなケースと文字盤で登場した。

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 2017年にブレゲが、初めてマリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887を世に送り出した際、採用されたのはプラチナケースだった。トゥールビヨンと独特な複雑機構を搭載しているこの時計は、イクエーション・オブ・タイムの表示方法が従来とは異なり、イクエーション オブ・タイム・マルシャント(エクアシオン マルシャント)だ。

 マリーン シリーズのデザインは、2018年に大幅に一新されたが、この時計は2017年の発売当時と同じデザインに基づくところが大きい。5887は、2017年モデルのデザイン言語を維持しつつも、より親しみが感じられる(ただしもちろん高級感も漂わせつつ)新しいローズゴールドのケース、スレートグレー(濃灰色)の文字盤、そしてローズゴールドのマーカーと針で、かなり違う雰囲気を纏っている。

 私は最初のPT版が発売されたとき、見た目(ほとんどの時計が売りにするのがこの点なのは仕方がない)には、その機械的な構造ほどの興味を感じなかった。非常に目新しくありながらも同時に古風な時計だ。この時計は、ペリフェラルローター システムを採用し、イクエーション・オブ・タイム用のサファイアクリスタルのカムも搭載している。その一方で、複雑機構自体と同じくらい古風な、トゥールビヨンとイクエーション・オブ・タイムに対応している。

自動巻きのペリフェラル ローター。

 イクエーション・オブ・タイムという複雑機構を理解するのは難しい。ひとつには、普段時間と接するうえで、私たちの多くがこうしたものに遭遇しないからだ。正午とは何かを考えてみるといいかもしれない。感覚的には、正午は太陽が頂点、すなわち空で最高点にある時だ。これは精度にかなりの重点を置いた、天文観測と捉えることができる。太陽が正確にいつ頂点、つまり地球上のある地点から観測した瞬間の天頂、あるいは空の最高点に達するかは、観測場所の緯度と経度によって異なる。

 ある都市にいるときの正午、少なくとも太陽の位置に基づく正午は、20マイル東あるいは西に離れた場所の正午とは異なる。もし庭の日時計から正午を割り出しているとしたら、それは別の場所にいる人にとっての正午とは異なる。国有鉄道といったものが登場しない限り、それで問題ない。もし鉄道の運行時間をそろえるなら、その地域の全駅に共通する時間的な基準が必要だ。そうなると、ロンドンであれリバプールであれ、全ての駅に標準的つまり平均的な時間を設定する必要がある。

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 そこで登場するのがイクエーション・オブ・タイム(Equation Of Time、以下EOT)だ。EOTは基本的に、現地の太陽時と平均時の違いを教えてくれる。例えば、ある日のEOTがプラス5.5秒だと分かっている場合、1日を24時間とする時計の時刻を、現地の正確な平均時に設定できる。現地の正確な平均時つまり標準時が分かれば、さらに現地のタイムゾーンの常用時に調整できる。

イクエーション・オブ・タイムのカムを搭載したサファイアディスク。

 EOTは、時計工、時計師、腕時計職人にとっては意味があるかもしれないが、これ以上に日々の生活とは無縁な複雑機構は他にないかもしれない。現地の真太陽時と平均太陽時の差だというだけでも複雑なのに、ここにローカルの平均時とそのタイムゾーン全体の常用時の差が加わると、ほとんどの人はお手上げだ。それでも、あるタイムゾーンの常用時のいささか恣意的で人工的なイメージと、実際に我々が空で目にする太陽を見せつけているところに、この複雑機構の美しさを感じる。

 時計でEOTを表示する最も簡単な方法は、文字盤に窓を設け、そこにプラスまたはマイナスで常用時と現地の真太陽時の差を表示させることだ。しかしより洗練されたソリューションとして、文字盤に別途、分針と同軸の針を設ける方法もある。この針は文字盤上を分針と一緒に動き、その日のEOTがどれだけ前あるいは後ろにあるかがひと目で分かる。これがいわゆる、イクエーション・オブ・タイム・マルシャントだ。

 18KRGの5887は、オリジナルのPT版が持つ技術的長所を全て搭載していながら、私個人はより親しみを感じる。2017年のPTモデルは、少しやり過ぎ感があった。やや冷たい感じがし、少し高級感を誇示し過ぎているように感じた。18KRGの方があからさまに派手だという人もいるかもしれないが、ハイコンプリケーションとしてはこの色の方が伝統的である。それに私自身は、時計が受け入れてくれる感じがするし、着けているとついつい見たくなってしまう。
 そしてもちろん、イクエーション・オブ・タイム用のソラマメ形のカムが1年かけて厳かに一回転するのを見るのは、両モデルに共通する知的な喜びだ。近頃の高級時計づくりではめったにないことだが、私がこれまでに見てきた中でも最も非実用的な時計のひとつで、しかも信じられないほど高い。しかし、この時計にはそれだけの美しさがあり、実世界の天文現象と産業文明の抽象物の差を符号化するカムが、1年かけて一回転だけするのを見飽きることはないだろう。

マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887;ケース、43.9mm x 11.75mm、100m防水性能。自動巻き、スレートグレーonとゴールドの文字盤。ムーブメント、ブレゲ Cal. 581DPE、レトログラード デイトの永久カレンダー対応トゥールビヨンおよびイクエーション・オブ・タイム・マルシャント、ペリフェラルローター ワインディング システム;径16¾リーニュ、57石、4Hz(2万8800振動/時);6姿勢調整済。パワーリザーブ表示は8時位置。
 値段および入荷予定は未定。

詳細についてはブレゲ公式サイトへ。