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90年代ウィークへようこそ。この特集では直近10年間で最も魅力的な(そして最も過小評価されている)時計と、20世紀末を特徴付けたトレンドとイノベーションを再考していく。ダイヤルアップ接続を行い、クリスタルペプシ(無色透明のコーラ)を手に取って欲しい。
我々の生活にテクノロジーがスムーズに溶け込んでいる昨今、「テクノロジー」というもの自体が消費者の趣味であった時代を思い出すのは難しい。Apple Watchは、手首にコンピュータを装着するという驚くべき概念を常識に変えた。もちろん、このアイデアはディック・トレイシー(Dick Tracy)の手首装着型の通信機が漫画のページを飾って以来存在していたが、現在では手首の上から生活を管理するということが、非常に.....普通になっているようだ。
しかし、1994年当時、「スマート」な「時計」という発想は決して普通のものではなかった。そこにタイメックスのデータリンクが現れた。これは当時としては想像を絶する性能を備えていたのである。コンピュータと連動して「アプリケーション」を読み込むことができ、自分宛にメモを書くとそれが時計のスクリーンに表示される。それは特別なことだった。魔法のようでさえあった。
タイメックス データリンクの仕組みを理解するため、私は、Meta社のプロダクトマネージャーであり、元Googleの従業員でソフトウェアエンジニアのニルダル・カザニー氏(Nirdhar Khazanie)に話を聞いた。彼は大の時計好き、テクノロジー好きであると同時に、Watches For Goodの創設者でもある。
カザニー氏は、元Google従業員らしく簡潔にこう説明した。「タイメックス データリンクは、ブラウン管(CRT)の画面から送信されたデータを受信する機能を備えた90年代初のスマートウォッチであり、無線データ転送の世界へと導く画期的な第一歩でした。Windows
3.1〜Windows 98用のフロッピーディスクからソフトウェアをインストールすることができ、タイムデータリンクというアプリケーションを使って、予定や記念日、電話番号、アラーム、リストなどを入力することができました。また光学センサーを備えており、ブラウン管画面の点滅を読み取って、その情報を時計に記憶させていました。2022年になると、スマートウォッチはWi-FiやLTEに接続できるのが当たり前になっていますが、私たちが手首に装着しているのは、90年代のNASAのエンジニアも垂涎の処理能力を持ったスーパーコンピューター機器なのです」
カザニー氏がNASAに言及したのは興味深い。この時計はスピードマスターに匹敵する強力な宇宙開発との結びつきを有しているからだ。スピードマスター同様、この時計もNASAによって宇宙旅行用にテストを受け、認定されている。ブログサイト“Passage of Time”(時間の通り道という意味)にはこの時計をつけて宇宙へ行った宇宙飛行士らに関する素晴らしい記事がある。念のため、宇宙探索で使用された時計(Watches Used In Space Exploration)のデータベースで最新の情報を確認したところ、5人の宇宙飛行士が宇宙でデータリンクを使用したようだ。
もちろん、ほとんどの人はこの時計を地上で用いていた。下のCMを見て欲しい。時計の用途という点において、単に時間を知らせるためであった時代から我々がどれだけ進歩したかがわかる。データリンクはタイメックスのモデルラインナップから消えて久しいが、当時は非常に優れたものであった。忘れられがちな時計だが、Apple Watchを見ている人を見かけるたびに、初めてスマートウォッチを世に送り出したのはタイメックスとマイクロソフトだったということを思い出してくれ。
私は、90年代にこれを実際に身につけるには少し若すぎた。使ったことのある方がいれば、ぜひコメント欄でご意見を寄せていただきたい。